研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2014年04月01日

立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める有志、「要請書」

rits-antiracism

要請書

 公開質問状に対する回答期限を3月15日としていましたが、いまだ立命館大学からは何の回答もありません。
 立命館大学内外から多くの賛同、関心が集まっているなかでのこのような対応は大変遺憾です。

 この事件に関して、「東京新聞」(2014年3月3日付朝刊)においても、「右傾化する社会:排外主義によるトラブルは他の大学にも広がる」という形で報道されました。同記事での「クレーム恐れ自己規制の渦」という文言の対象は、今回の立命館大学の対応を指しています。
 また、この間、プロサッカーのJリーグでも差別表現事件が大きな問題になり、対応が行われました。

 現在、ヘイト・スピーチに対しては社会的にも学術的にも対応が求められており、今回の件は、多方面から注目されています。

 私たちは、これらの情況を前提にして、今回の公開質問状を送りました。しかし、現在のところ立命館大学からは何の反応もありません。私たちは、大学が事の重大さに気づいていないのではないか、理事会や教職員は関連する新聞記事や、相次いで出版されている書籍に触れていないのではないかと危惧しています。教育機関である大学が社会に対する関心を失い、学ぶことを止めてしまうのは致命的です。

 私たちは、大学側が回答の意思を持ちながらも、年度末であることで対応が遅れているという可能性にも配慮し、あらためて回答期限をもうけたいと考えます。最終締め切り期日は4月20日とします。

 なお、期日までに回答がない場合には、抗議文を別途作成、公開し、マスメディアへの広報および今回の事件を危惧する大学関係者とも連携して、アクションを起こしていく予定です。

 上記を深慮の上、真摯な応答を求めます。

 最終締切期限 4月20日 必着
 回答方法   書留郵便

以上

「立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める有志」のblogより

立命館大学の2014年1月15日見解に対する公開質問

私たちは、立命館大学が出した2014年1月15日の見解「授業内における学生団体の要請活動への本学嘱託講師の対応について」(以下「見解」とする)に重大な問題があると考える有志です。以下にこの見解に対する私たちの考えを記すとともに、公開質問状として質問を提示し、回答を要請します。

1.立命館大学の2014年1月15日見解について

私たちは、立命館大学の出した「見解」は、教員や学生に対する誹謗中傷やヘイトスピーチの被害を放置する内容であり、早急に撤回ないし修正の必要があると考えます。
2014年1月10日に立命館大学の講義の受講者と思われる人が、12月13日の講義の様子について、twitter上に文章を公開しました。「「東アジアと朝鮮半島」という授業にて出席カードとともにこんなカードを書かせるから立命は糞」という文章です。また、あわせて担当講師の氏名と、メッセージカードの画像表裏も公開されました。その後、この文章と画像はインターネット上で広く転載され、多くの人が「同講義の担当教員が受講学生に朝鮮学校無償化を求める嘆願書への署名を強要した」などと事実を誤認しました。さらにインターネット上には、担当講師や学生団体に対して誹謗中傷やヘイトスピーチが飛び交うことになりました。担当講師の名前から、本人の画像もインターネット上から検索され、事実誤認とヘイトスピーチとともに転載され続けました。
1月15日に立命館大学が公開した「見解」ではつぎのように事実関係が述べられ、大学は同講師が受講生に誤解を与えたことを、謝罪しています。

2013年12月13日、本学嘱託講師が、授業において朝鮮学校無償化に対するアピールをさせて欲しいとの受講生からの要望を受け、当該受講生が所属する学生団体による説明、嘆願書の配布、回収を許可しました。その際、同講師は嘆願書への署名は任意であること、署名と成績とは無関係であること、そして嘆願書は署名の有無に拘わらず学生団体の担当者が回収することを、受講生に対しアナウンスをしました。なお、学生団体の担当者が回収したため、同講師は嘆願書の提出者や記入内容については関知しておりません。
しかしながら、結果として受講生に同講師が嘆願書への署名を求めたかのような誤解を与えてしまいました。このことは、大学として不適切であったと考え、講師に対し、指導を行いました。なお、受講生に対しては、授業内において改めて説明いたします。
 多くの方にご心配とご迷惑をおかけしましたことを心からお詫び申し上げます。また、今後、このようなことが再発しないように徹底してまいります。

これによると、担当講師が嘆願書への署名を求めたという事実も、出席カードと関連させたという事実もありませんでした。講義内での担当講師と学生団体のあり方に問題はありませんでした。ところが、立命館大学は、学生に誤解を与えたことについて講師を「指導」しました。

2.「見解」の問題点

私たちは、このような立命館大学の対応について、大きく二点、重大な問題があると考えています。
第一に、受講者と思われる者が、適切な配慮を行なっていた講師の話を誤解したからといって、なぜ講師が指導され大学が謝罪しなければならないのでしょうか。私たちは、このような場合に「誤解」を与えたことを理由にして、担当講師を指導するべきでも、大学が誤解を与えたことを謝罪するべきでもないと考えます。
第二に、「見解」は、受講者と思われる者がインターネット上に公開した誤情報から生じた騒動(ヘイトスピーチが拡散したことを含む)をいっさい問題にすることなく、逆にそれらの責任を講師に帰しています。講師を「指導」するということは、立命館大学が、誤情報をネット上で公開するという行為、およびその後のヘイトスピーチに非はなく、逆に、誤情報に基づくヘイトスピーチの対象になった側に非があった、と認識していることを意味するからです。
一般に、授業運営方法または内容に関する誤った情報に基づいて、侮蔑発言を含む不適切な攻撃等があった場合、大学としてまず何よりも行うべきことは、授業(教員および受講生)の物理的な安全確保とともに、誤情報の訂正と、誤情報に基づく攻撃に対する抗議であるはずです。
しかし、今回、立命館大学は事実を説明しただけであり、誤情報の拡散を止めるための行動もとらず、また誤情報に基づくヘイトスピーチに対してもいっさい抗議等を行いませんでした。それどころか逆に、誤解に基づいて誹謗中傷等の攻撃を受けた側を「指導」することで、事態の収拾をはかりました。これは、「被害者非難」と呼ばれうる行為です。
2000年代初頭から日本ではヘイトスピーチを拡散する団体が現れ、多くの差別事件を起こしており、ヘイトスピーチに対する対応には社会的な関心が集まっています。誤情報をネット上に公開した受講生を指導しないままに放置し、それに便乗して誹謗中傷をおこなった者を無視するだけでなく、講師や授業の側に問題があったと認定することは、すべての教員と学生に対して、誤情報に基づいて個人情報が拡散され暴言に晒されたとしても、大学は関知せず、逆に被害者を非難し「謝罪」するのだというメッセージを与えたことになります。
このような対応は、無責任で攻撃的なインターネット上の匿名の暴言等から教学環境を守るという役割を大学が放棄したことを意味し、教学環境を著しく損なう効果をもちます。
また私たちは、今回の対応は、立命館大学のみならず、全国の教育機関で同様の事件が起こったときの悪しき前例になりかねず、全国の大学や教育機関に波及しうる大きな問題であると認識しています。

上記の点を踏まえて、私たちは、以下八項目について公開質問をいたします。なお、この質問はインターネット等でも公開し、広く賛同を呼びかけていく予定です。

3.質問

1) 立命館大学は、当該授業に関する調査を講師への聞き取りだけで終わらせ、「見解」を出しました。しかし、当該授業の受講生への聞き取りなど、当日のことをもっと調査してから見解を出すべきだったのではなかったでしょうか。今後、さらに調査はしないのでしょうか。

2) 今回の対応は、学生の誤解に対する責任は教員にある、という認識を一般化しかねないものです。立命館大学は、講義で教員が話した内容を学生が誤解した場合に、教員が指導され謝罪しなければならないと考えているのでしょうか。

3) 質問 2)について、そのように考えていないならば、今回の「指導」が、何を対象にしたものであり、また、いかなる根拠で行われたのかについて、具体的に説明してください。

4) この「見解」は、立命館大学が、授業に関する誤情報によって暴言を含む攻撃が起こった場合には、誤情報を正し攻撃した側を批判するのではなく、攻撃された側(今回は講師)を指導して謝罪する大学であるということを、広く社会に知らしめました。立命館大学は、twitterで講義の様子を不正確に、かつ文脈からみて意図的な悪意をもって公開した受講生と思しき者を特定し、指導するなどの対応をするのでしょうか。

5) 上記にかかわり、立命館大学は、インターネット上で不正確な情報に基づいて教員や学生団体に誹謗中傷がおこなわれたとしても、これを放置する大学であると認識されています。担当講師と学生団体に対しておこなわれた一連の誹謗中傷とヘイトスピーチに対して、大学としての見解を出さないのでしょうか。または、抗議声明などを公表しないのでしょうか。

6) ヘイトスピーチは被害者の日常を破壊します。担当講師や学生団体の学生らの状況を大学は把握し対応をしているのでしょうか。またさらなる被害もありえます。立命館大学は、担当講師や学生団体への2次被害に対して対応しないのでしょうか。たとえば、インターネット上にはまだ担当講師に対するヘイトスピーチが放置されています。大学はサーバー管理者などにその削除を要求するべきではないでしょうか。

7) 今回の事件は、学生から教員に対して行われたハラスメントと考えることができます。ハラスメントは、教員-学生間の権力関係においてのみならず、社会的な権力構造のなかで、何らかのマイノリティの属性を持つ教員に対して、学生が加害者となって引き起こされるものでもあります。立命館大学は、このような学生の教員に対するハラスメントについて今後どのように対応していくのでしょうか。

8) 各種報道の中には明らかに事実に基づいていないものがあります。例として、夕刊フジの1月21日の新聞には、当該講師について「コリア研究センターの女性研究員」とありますが、事実誤認です。コリア研究センターおよび同センターの研究員にも今後さらなる被害がおよぶかもしれません。立命館大学は、これらメディアの「誤報」を把握しているのでしょうか。また、把握した上で、それに対して修正要求を出さないのでしょうか。

4.期日

回答期日は2014年3月15日必着とし、下記の送付先まで、「配達証明郵便」にてご送付をお願い致します。大学からの回答も公開質問状と同じくインターネットその他で公開します。

以上

2014年2月14日
立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める有志

公開質問状共同提起者「立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める有志」(103名)

|