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2014年04月28日

学校教育法、国立大学法人法改正案 廃案に向けた早急なる運動を!

[学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案]
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(概要)
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(要綱)
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(案文・理由)
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(新旧対照表)
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(参照条文)

以下,「どうなっている!? 道内大学 大学シンポジウム実行委員会」のメールニュースより転載。

○改正のポイント

①学長→副学長の指揮命令系統の確立
・副学長の役割に、学長の「命を受け、校務をつかさどる」を追加(学教法92条4項)
・学教法92条4項の副学長を国立大学法人教育研究評議会の評議員とすることを法定(法人法21条3項)

②教授会権限の剥奪・縮小
・教授会を「必置」から単に「置く」にとどめる(学教法93条1項)
・教授会の役割を、「重要な事項を審議する」から「学長が」「決定を行うに当たり意見を述べる」に変更(同2項)

【参考】
審議:物事を検討してその可否を論議すること(有斐閣法律用語辞典第4版)
意見:ある問題についての考え、思うところ。行政機関の行為が独善的にならないようにするため、法令によって行政機関が一定の行為をする場合には必ず他の者の意見を聴くべきことを定めている場合が少なくない
(有斐閣法律用語辞典第4版)

・「重要な事項」ではなく「事項」と表現(同2項)
・「決定を意見を述べるものとする」「事項」を以下の三項目に限定(同2項)
一 学生の入学、卒業及び課程の修了
二 学位の授与
三 教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの

【参考】
国立学校設置法(廃止)
第7条の4
4 第1項及び第2項の教授会は、次の各号(第1項第4号及び第5号並びに第2項第2号に掲げる組織に置かれる教授会にあつては、第3号)に掲げる事項について審議し、及び教育公務員特例法の規定によりその権限に属させられた事項を行う。
一 学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項
二 学生の入学、卒業又は課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項
三 その他当該教授会を置く組織(前項の規定により第2項各号に掲げる組織の教授が所属することとされた教授会を置く組織にあつては、当該各号に掲げる組織を含む。)の教育又は研究に関する重要事項

→ 改正法案93条2項一号・二号は、旧設置法の7条の4、4項一号に対応。改正法案93条2項三号は、「教育研究に関する重要な事項」とされており、旧設置法7条の4、4項三号に類似しているものの、審議事項を「当該教授会を置く組織」のものに限定をかけていない。一方、「学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」という限定をかけている

→ 旧設置法にあった「教育課程の編成に関する事項」は明示されていない。教授会が教育課程編成に関する審議を行うことは、2項三号や3項により可能だが、いずれの場合も、その権限は「学長等」に由来するものであることになる
・2項に規定するもの以外にも、教授会が審議権を確保することができる(同3項)
・教授会組織に関する規定は現行法2項と同じ(同4項)

③学長選考会議による学長選考基準設定・公表の義務づけ
・これまでの学長の資格要件に加えて、学長選考会議が選考基準を定めること(法人法12条7項)、および基準の公表義務を規定(同8項)
→ 国立大学法人評価委員会等の圧力により、選考基準を策定・明示する過程において、教職員の投票による意向聴取は削除されていく可能性が高い

④経営協議会における学外者の影響力の拡大
・経営協議会の学外者(法人法19条三号委員)の人数を「1/2以上」から「過半数」に拡大(法人法20条)
→ 現行法でも経営協議会の学外者を過半数とすることはできるが、それを確実にすることがねらい。国立大学法人評価委員会等により、経営協議会に関する規則改正とあわせて、審議事項や開催頻度などの規則・運営の方式も変更を求める圧力を加えることが予想される

○教員の任用・昇任に関する選考、部局長の選考については、学教法が定めるものではないことから、今回の改正法案によって何ら変更はない。国立大学法人評価委員会等が、「国立大学法人は教育公務員特例法の適用除外になったのに、適用されていたときと同じ人事慣行が継続している」という言いがかりをつけることにより、各大学の人事規定を改正するよう追い込んでいくものと思われる

○以上を通じて、
・学長→副学長の指揮命令系統の確立
・教授会の権限の縮小
・学長選考過程における教職員の意思の遮断
・経営協議会における学外者の影響力拡大が達成されていく

○これらにより、
・大学の教育研究組織を、政府および経営協議会を通じた社会勢力の圧力により容易に改廃できるようにすること
・成果目標の明示と評価を通じた大学教育課程の標準化、改革を容易にすることが法改正のねらいであると考えられる

○改正法案の解釈、運動上の留意点
・言うまでもなく、当然、廃案をめざすべき
・学教法改正法案は、教授会の「諮問機関化」と報じられているが、教授会の権限を「諮問」に対する応答のみに限定することはできなかったことの意味が重要。教授会権限を一律に制約することや、教員人事権、教育課程編成権を教授会権限に含めることができることを国会審議を通じて明らかにする必要がある
・中期目標の制定や評価において、「教育研究の特性」への配慮義務(法人法3条)があることを示し、その内容について、法人法制定時の国会附帯決議を引きながら詰めていくことも必要

○改正のスケジュール
・4/25(金)、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」案を閣議決定
・4/28(月)衆議院提出。文部科学委員会に審議付託
・5/14(水)早ければ、地教行法改正法案、衆議院文部科学委員会において採決見込み
※地方教育行政法改正案は、総合教育会議設置、教育委員会による教育長に対する指揮監督権の剥奪、教育長の資格要件の変更(非教育公務員化)により、首長権限の強化と教育委員会の形骸化をはかるもの
・5/16(金)早ければ、学教法改正法案、衆議院文部科学委員会において審議入り見込み


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