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2014年05月24日

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案、衆議院本会議の審議状況

衆議院TVインターネット審議中継

<下村文科大臣 法律案の趣旨説明[18:34]>

・学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案の趣旨について

 大学は国力の源泉であり、各大学が人材育成、イノベーションの拠点として、教育研究機能を最大限に発揮していくには、学長のリーダーシップのもとで戦略的に大学を運営できるガバナンス体制の構築が不可欠であり、学長を補佐する体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選考の透明化等の改革を行っていくことが重要であります。この法律案は、このような観点から大学の組織および運営体制を整備するため、副学長の職務内容を改めるとともに、教授会の役割を明確化するほか、国立大学法人の学長の選考にかかる規定の整備を行うなどの必要な措置を講ずるものであります。

・法律案の概要の説明

<民主党・細野豪志議員[21:45]>

・安倍政権の基本的性格についての発言
 総理に賛同する人をあつめて押し通す傾向、安保法制懇、NHKなど、
 与野党の協議を経たうえで法案を通すべき

・法案の質問について[25:04]
1.国立大学法人法の付帯決議(衆議院10項目、参議院23項目)の各項目についてついて政府はどのような措置を講じてきたのか、今回の改正案は、この附帯決議をどのように踏まえているのか。

2.今回改正案を提出するにいたった立法事実について明らかにしていただきたい。現在、大学でどのような問題が起こっており、なぜ今改正が必要なのか。例をあげて具体的にお答えいただきたい。

3.学長の権限について。改正案が成立すると学長の権限が大幅に強化されます。仮に学長が暴走したときに歯止めをかける仕組みをどのように規定しているのでしょうか。

4.学長の権限が強化されることを考えると、その人選は極めて重要です。安倍総理のおともだちの学長が増えるのではないか、文科省の甘くだりの官僚が増えるのではないかとの指摘があります。文科大臣から否定していただきたい。

5.教授会の在り方について。改正案では、教授会が意見を述べることができるのは、学生の入学・卒業および課程の修了、学位の授与役割について限定されました。それ以外の教育研究に関する重要な事項は、学長が求めた場合のみ、意見を述べることができるとされているため、学長の運営方針によっては、教授会の形骸化が懸念されます。大学の自治、自主的・自律的な運営の観点からすれば、大学によって教授会の在り方は多様にあって良いと考えます。教授会で多様な意見が出た場合には、時間をかけて合意を形成する努力ことも重要です。必要なのは現場で運用しやすいしくみづくりだと考えます。文科大臣の見解をお伺いします。

6.…安倍政権は教育に関する国の関与を強めています。…省略…今回の学校教育法改正においては、大学に関する国の関与が強まり、大学の自治が脅かされるのではとの懸念の声も上がっています。憲法で保障されている学問の自由を守るため、大学は自治を確立してきました。改正案においては、大学の自治はどのように守られるのでしょうか。

7.奨学金制度の充実について。…省略…児童養護施設だけでなく、生活困窮者家庭や1人親家庭への支援を充実させる必要があると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

質問終[32:20]

<下村文科大臣 答弁[32:55]>

1.これまでも附帯決議の趣旨を十分に踏まえているとおもう。国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、自主的・自律的な運営を確保すること、国立大学法人運営費交付金について、各大学が発展しうるよう必要額を毎年度措置することに努めている。
 今回の法律案については、学長選考会議、経営協議会および教育研究評議会といった国立大学の教育研究を特性を踏まえた制度は維持しつつ、それぞれの機関が役割をより一層適切に発揮できるよう必要な改正事項を盛り込んだものであります。
 さらに教授会についても専門的な観点から、重要な役割を果たすことが求められていることを鑑み、その役割の明確化を図ることとしたものであります。

2.急速な少子化、グローバル化の進展による国際的な大学間の競争に各大学が適切に対応していくためには、予算や定員の再配分や学部再編、組織の見直し等を学長のリーダーシップのもとで進めることが求められます。大学のガバナンスについては、キャンパス移転や、予算の配分等の経営に関する事項まで教授会が関与するなど、権限と責任の在り方が明確でない。教育課程や組織の見直しを行う際に意思決定に時間を要し、迅速な決定ができない。学内の都合が先行し、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないといった課題が指摘されています。このため、今回の法律改正により、学長補佐体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選挙の透明化等の改革を行うことにより学長がリーダーシップを発揮しやすい環境の整備を目指すものであります。

3.今回の法律改正は、教授会をはじめとした学内の組織の役割を明確化するものであり、学長に新たに権限を付与するものではないことから、学長の暴走を助長させるものではありません。学長には優れた人物が求められる一方、そのチェックのしくみとして、監事による監査や自己点検評価、認証評価等の評価、理事会や学長選考会議等の学長選考組織による業務執行状況の評価等が、可能となっています。このような仕組みを通じて大学が自主的・民主的な運営を確保することが、可能であると考えております。

4.学長の選考については、法律上、国立大学法人や公立大学法人では、学長選考会議が、私立大学の場合は、学校法人の最高意思決定機関である理事会が、それぞれの権限と責任に基づき責任者を選ぶしくみになっております。今回の改正は、教授会の役割の明確化や国立大学法人の学長選考会議による主体的な選考の促進など、学長がリーダーシップを発揮できるしくみ大学のガバナンス体制の整備を行うものであり、国によって恣意的な学長選任が行われるようになるとのご指摘は当たらないものと考えます。

5.今回の改正案では、教授会が教育研究に関する事項について審議する機関であるということ、決定権者である学長に意見を述べる関係にあること、法律上明確に規定したものであります。学内で合意形成を図り、自主的・自律的な大学運営を行っていくためには、専門的な観点からの教授会からの意見を聴取することは、重要であり、教授会の在り方については、法律の趣旨を踏まえて、学長の判断において、各大学の事情に適した仕組みを採用していただきたいと考えております。

6.大学における学問の自由は、大学における教授その他の研究者の研究と教授の授業を内容とするものであり、この学問の自由を保障するため、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行として大学の自治を尊重していく必要があります。今回の改正は、学長や教授会等の学内の組織について、適切な役割分担の下で責任ある運営を行っていく体制を整備するものであり、大学に対する国の関与を強化するものではなく、また大学の自治が脅かされることもないと考えております。

7.経済的理由により学生が進学を断念することがないよう経済的支援を充実することは重要な課題と認識しております。このため平成26年度予算においては、授業料減免の充実や無利子奨学金の貸与人員の増員を行う等、授業料だけでなく、家賃や生活費についても支援し、安心して大学等に進学できるよう整備をしております。また将来の収入に応じて、所得連動型返還奨学金をはじめ、より効果的な経済的支援の在り方について検討しているところであります。児童養護出身者であれ、生活困窮者であれ、1人親家庭の学生等であれ、経済的に困難な学生が進学を断念することがないよう今後とも学生の経済的支援の一層の充実に努めてまいります。

<維新・鈴木望議員[41:05]>

 大学の実態はどうか。若者のレジャーランドといわれている。勉強をしたい若者は大学に籍を置く傍ら、専門学校や資格の勉強をしている。大学院段階では、欧米に後れをとっている。

1.現在の日本の大学が世界の大学の中でおかれている位置に関連して、大臣の認識をおたずねします。大学において改革が進まない原因は、既得権を享受している人々、具体的には、教授会が決定権限を握っているから。

2.今までの大学のガバナンスの実態はどうであったか。改正で大学のガバナンスはどう変わるのか。学長と教授会の関係は、学長は教授会の中から選ばれ、教授会という意思決定機関の議長のような役割だと認識しておりますが、今回の改正で、どうかわるのでしょうか。

3.学長が執行機関となれば、1人で大学経営全般を自らすることは無理ですから、誰かに権限を委譲しなければならない。その意味で今後は、副学長の役割が飛躍的に重要になると思いますが、副学長は具体的にどうかわるのか。

4.副学長も大学の構成員である教授会や各教授の助けを借りなければいけないと思いますが、その意味で、副学長と教授会や各教授との関係はどうかわるのかお尋ねします。

5.そもそも教授会の役割とはなにか。…省略…大学の役割は、教育と研究です。教授会の自治が歴史的に大きな役割を果たしてきたことも事実です。良き伝統は守らなければならない。一方で、現在の教授会は、…省略…既得権のかたまり。教授会の本来の役割とは何か。今回の改正でどのようにしているのか。教授会は大学の意思決定機関ではないのか。

6.学長の在り方について。学長は民間の会社で言えば社長に相当し、自ら大学を運営していかなければなりません。現在のように大学が増えた状況では、…省略…大学の果たすべき、これから生きていく道筋も千差万別です。割はさまざま。学長には、自分の大学の特徴を認識してもらうため、従来よりも学長の質が問われます。学長はどのように選考されるのか。学長選考会議では、学長選考の基準を定めるとしているが、具体的にどのような基準が定められるのかお尋ねします。

7.経営協議会について。経営協議会を設置することとした当初の目的がどのような理由で達成できなかったのか。そして、なにゆえに今回の改正が必要になったのかをお尋ねします。

8.大学の自治、教授会の自治について。自主的に守ることで学術が進歩してきたことは評価すべき。その上で、懸念事項について質問いたします。 
 ・学長のリーダーシップ、学長の暴走をとめる手立てはあるのか。
 ・若手研究者の身分の不安定、若手や女性研究の活用についてどう考えるか。(森大臣への質問)
 ・教授職を欧米と同じように任期制にしてどんどん入れ替えるべき。そうすることによって教授会は活性化し、結果として大学改革もすすむと考えますが、どうお考えでしょうか。

9.附則第2条の検討規定では何を想定し、何を検討しようとしているのか。

質問終[54:25]

<下村文科大臣 答弁[55:00]>

1.日本の大学の認識について
 鈴木議員と全く同じ認識→教育研究の質を高め、国際競争力を強化していくことができるよう迅速な意思決定を可能にするガバナンス改革に取り組むため本法案を提出した。

2.大学のガバナンスの実態と改革でどうかわるのかについて
 大学のガバナンスについては、権限と責任の在り方が明確でない、意思決定に時間を要し、迅速な意思決定ができていない、学内の都合が優先し、地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないといった課題が指摘されています。今回の改正によって、学長と教授会の関係について、学長が決定権を有し、教授会は意見を述べる立場にある、副学長の権限が拡充され学長の補佐体制が強化される、学長選考の基準等の公表が義務付けられることにより、その手続きがより明確になる等により、学長のリーダーシップによりまして、社会の多様なニーズを踏まえた適切な大学運営が行われることが期待されます。

3.副学長の役割について
 現行法第92条第4項では、副学長は学長の職務を助けるのみの規定とされており、権限は学長を補佐することにとどまっている。今回の改正によって、学長の命を受けて公務を処理することが可能となり、また副学長と教授会や各教授との関係においても学長の指示のもとで、学長に代わって教授会に意見を聴くことができるようになります。

4、教授会の本来の役割について
 教授会は本来教育研究に関する事項について検討行うことが想定されており、また法律上は、決定権を有しない審議機関として位置づけられています。学校教育法第93条では、教授会は重要な事項を審議するとのみの規定であり、その内容は必ずしも明確ではありません。そのため、教授会において予算の配分など経営に関する事項まで広範に審議されている場合や、本来審議機関であるにもかかわらず、自主的に決定機関として運用されている場合があるなど、学長のリーダーシップを阻害しているとの指摘もされています。今回の改正では、教授会の本来果たす役割を明らかにするため、教授会が教育研究に関する事項について審議する機関であること、教授会が決定権者である学長に対して意見を述べる立場にあること等、教授会の役割を法律上、明確に規定したところであります。

5.学長の選考基準について
 各大学がミッションを見通したうえで、主体的に判断しつつ、決定するものでありますが、学長に求められる資質能力、また学長選考の具体的手続き方法等が盛り込まれることを想定しています。

6.経営協議会についての現状と今回の改正の必要性について
 国立大学を取り巻く学外委員を過半数とする自発的な取り組みも進んでいますが、すべての国立大学が社会のニーズを反映する必要性をこれまで以上に認識し、こうした変化に積極的に対応できるよう経営協議会の役割をより一層発揮する観点から、学外委員を過半数とすることが必要だと考えております。

7.学長の暴走をとめる手立てについて
 今回の改正は、学内の組織の役割を明確化するものであり、学長に新たな権限を付与するものではないことから、学長の暴走を助長するものではありません。学長をチェックするしくみとして監事による監査や自己点検評価、認証評価等の評価、理事会や学長選考会議等の学長選考組織による業務執行状況の評価等が可能となっております。大学が自主的、自律的に適切な運営を行うことが可能であると考えます。

8.教授の入れかえ、若手研究者の活躍促進について
 文部科学省においては、大学教員の任期制の導入や公募制の推進を通じて、教員の流動性を高めるとともに、若手研究者の活躍を促進するための取り組みを進めてきたところであります。またとくに国立大学については、年俸制の導入を促進するなど、人事給与システムの一層の弾力化を支援することとしています。

9.附則の検討規定の具体的内容について
 今回の法改正により大学のガバナンスは相当程度改善するものと認識をしております。しかし国立大学については、時代の変化の中で改正で組織運営について制度改革が強く求められてきた経緯があります。今後の社会経済情勢の変化をさらなる考慮、今回のガバナンス改革が一段落するものではなく、制度改正の実施状況も踏まえ、今後一層の検討が必要だと考えております。今後制度改正の実施状況を検討し、国立大学法人の組織および運営の在り方にかかる幅広い検討を行っていくものと考えます。

<共産党・宮本岳志[01:05:50]>

・大学自治破壊法案である。
1.教授会の審議できる事項を入学、卒業、課程の修了と学位の授与に限定して、その他は学長が意見を求める場合に限るなど、教授会の審議権を大きく制約している。学問の自由を脅かすものではないでしょうか。

2.教育研究費の配分、教員の業績評価、教員採用等の人事、学部長の選任、カリキュラムの編成、学部・学科の設置廃止等、教育研究の重要な事項を教員の意見も聞かずに学長が独断で決めることになるのではないでしょうか。

3.私立大学では理事長の暴走が問題となってきました。文科省から解散命令を受けた堀越学園は、教授会による内部チェックが働かず、理事長の放漫によって経営破たんを引き起こしました。このようなワンマン経営をむしろ助長することになるのではないでしょうか。

4.わが国には学長は教職員の選挙で選ぶという民主主義的な制度が根付いてきました。国立大学では、選挙の結果学長を選んでいます。法案は、大学のミッションに沿った学長像など基準を定めて選考するとしています。……ミッションとは文科省の方針にそったということで、文科省の方針に沿った人しか学長にさせないということではありませんか。

5.大学に企業の論理を導入することについて

6.教育研究予算の拡充

質問終[01:11:02]

<下村大臣 答弁[01:11:20]>

1.教授会の審議権について
 現行の第93条第1項は、教授会は重要な事項を審議するとされているが、その内容があいまいなため、本来その審議事項として想定されていない経営に関する事項まで審議されいる場合もあるとの指摘もあります。改正案の93条第3項では、教授会が本来審議すべき内容を教育研究に関する事項と明確化したことろであり、大学の自治や学問の自由を脅かすというご指摘はあたらないものです。

2.学長が重要な事項を独断で決めてしまう懸念について
 今回の改正では、学長が決定を行うにあたって教授会が意見を述べるべき事項として、教育研究に関する専門的観点から教授会が果たすべき役割を例示したものであります。これ以外の事項についても専門性を必要とする事項について、教員組織の意見を適切に聞いていくことは必要と考えております。法律上、学長はすべての公務に関する最終的な意思決定権を有しておりますが、大学全体として、教授会等の協力を得ながら、運営することが望ましいと考えております。

3.理事長の暴走を助長するものではないか
 今回の改正は、学校法人の理事長に新たな権限を付与するものではないことから、ワンマン経営を助長するとのご指摘はあたりません。学校法人の理事長の職務執行については、理事会による監督がなされるとともに、監事による監査が行われることとなっております。また仮に学校法人において法令に違反するような事態が生じており、自主的に改善が望めない場合は、先般の私立学校法の改正規定も含め、関係規定に基づき所轄庁において必要な措置をすることができることとされています。

4.学長の選考について
 …国立大学においては、ミッションは各大学が主体的に定めるもので、文部科学省が定めるものではありません。教職員へのビジョンの提示やコミュニケーションを図るなど、教職員の意欲と能力を図ることが重要と考えます。

5.企業経営の論理を大学に導入することについて
 大学が産業界を含めた様々なステークホルダーの意見を踏まえつつ、多様なニーズに応えていくためには、主体性をもって教育研究に取り組むことが肝要だと思います。また大学のガバナンスは営利目的を追求する企業経営とは本質的に異なることもありますが、権限と責任の明確化などコーポレートガバナンスの考え方が参考となる点もあると考えております。

6.国立大学の授業料について
 教育の機会均等の観点から、適切な水準を確保することが必要であり、文部科学省としては、ひきつづき学生の経済的負担の軽減を図るとともに、必要な大学への予算措置や奨学金の充実を図っていきたいと考えております。

7.大学予算の充実
 教育研究への投資は社会の発展の礎となる未来への投資。大学予算の充実に力を注いでまいります。

< 散 会 >


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