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2014年05月31日

大学人ユニオン「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

労働組合法人大学人ユニオン,「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

2014年5月30日 労働組合法人全国大学人ユニオン執行委員会

 現在、衆議院で「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の審議が行われている。法律案は、「大学運営における学長のリーダーシップの確立等のガバナンス改革を促進するため、副学長・教授会等の職や組織の規定を見直すとともに、国立大学法人の学長選考の透明化等を図るための措置を講ずる」ことを趣旨としている。

 しかし、「副学長・教授会等の職や組織の規定」の見直しや「国立大学法人の学長選考の透明化」を通じた「ガバナンス改革」は、危機に瀕した日本の大学を死に至らしめる「劇薬」の作用をもつものである。大学は国公私立の設置形態を問わず高い公共性を有しており、そこで働く教職員は国民の教育権(学習権)に対して直接的な責任を負っている。

 したがって、大学には私企業の原理とは全く異なった経営の原理が貫かれなければならない。学生を含め全構成員による「自治」が大学を大学たらしめているのであり、その中核的な役割を果たすのが教授会に他ならない。しかるに、「法律案」は、教授会の審議権をはく奪し、ごく限られた事項に限って学長に対して「意見を述べる」だけの機関にしようとしている。また国立大学の学長を学内構成員(教職員)の意思によって、民主的な手続きを通じて選考することができなくしようとしている。

 ユネスコの「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」では、「自治とは学問の自由が制度という形をとったものであり、高等教育の教育職員及び機関に委ねられた機能の適切な遂行を保障する前提条件である」「加盟国は、いかなる筋による自治への脅威からも、高等教育機関を保護する義務を負う」と規定されている。このような点で、法律案は学問の自由、大学の自治に対する重大な侵害である。

 また、日本国憲法は第23条において「学問の自由は、これを保障する」と規定する。 国公私立の設置形態を問わず適用される学校教育法第93条の規定は、この「学問の自由」を大学という機関において保障するために設けられたものである。日本の大学がさまざまな問題点を抱えていることは事実であるが、その改革は、市民社会とともに大学人自身が主体的に取り組むべきものであり、国家によって強制されるべき筋合いのものではない。

 安倍内閣は「世界で最も企業が活躍しやすい国」をめざすとし、その一環として産業界に奉仕する大学づくりを狙っている。また、東アジアと世界の平和に逆行する「積極的平和主義」を主張するとともに、立憲主義を否定する暴走を進めようとしている。「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」は、そのような新自由主義・新保守主義の動きのなかに位置づけられていることも想起しなければならない。

 以上のようなことから、労働組合法人全国大学人ユニオン執行委員会は、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求め声明する。あわせて、大学関係者ならびに市民社会と連携し、「法律案」の廃案を求めて取り組む決意を表明する。


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