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2014年06月18日

東北大学文科系教員有志87名、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」についての見解

東北大学文科系教員有志87名、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」についての見解

2014年6月16日

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」についての見解

東北大学文科系教員有志87名

 現在、国会で「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の審議が行われている。この法案には看過することのできない問題が含まれており、廃案を強く求めるものである。

 現行の学校教育法93条は、「大学には、重要な事項を審議するために、教授会を置かなければならない」と定めている。ところが、法案は、教授会の役割を学長に対して単に「意見を述べる」ことに限定している。しかも、「意見を述べる」事項として明記されているのは、「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」のみである。6月6日の衆議院文部科学委員会において、学長が教授会の意見を聴くことができる事項に教育課程の編成、教員の教育研究業績の審査等が含まれると修正されたが、これも法体系上、最も低位の「施行通知」に記載されたに過ぎない。
そもそも現行の93条に教授会が審議すべき「重要な事項」が詳細に規定されていないのは、それが各大学の裁量に委ねるべきものとされたからである。教授会の役割を明確化するという名目の下、審議すべき事項に制限を加えるのは、本末転倒といわざるをえない。

 このように今回の法案は、教授会の権限を縮減する一方で、学長・副学長の権限を強化し、さらに学長選考会議・経営協議会に梃子入れすることで大学運営に対する外部からの容喙を従来よりも一層強く行いうるようにしている。
 我々は、構成員が多様な意見をもって、自由闊達な活動を展開しているところに大学の知的活力を生み出す源泉があると考える。したがって、多様な意見をくみ上げ、まとめ上げることによってではなく、外部の力も借りたトップダウンによって大学運営を行うことは、結局、活力の枯渇と発信力の低下を結果するのではないかと危惧する。また、組織の健全な発展には、様々なレベルでチェック機能が働くことが不可欠である。そうした仕組みを失えば、大学という組織も荒廃を免れないのではなかろうか。

もとより我々もより良い大学を創生するための改革を否定したり、拒否したりするものではない。しかし、今回の「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」は、以上のようにあまりにも問題が多い。法案はすでに衆議院を通過し、審議の場を参議院に移したということである。参議院においては、国立大学法人法の国会付帯決議(2003年7月)、「国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営の確保に努めること」を踏まえ、「良識の府」にふさわしく、本法案を廃案とされるよう、強く求めるものである。

呼びかけ人(五十音順)
明日香壽川(東北アジア研究センター教授)
小田中直樹(経済学研究科教授)
川端 望 (経済学研究科教授)
木村敏明 (文学研究科教授)
黒瀬一弘 (経済学研究科准教授)
小林 隆 (文学研究科教授)
座小田豊 (文学研究科教授)
佐竹保子 (文学研究科教授)
佐藤勢紀子(高度教養教育・学生支援機構教授)
嶋崎 啓 (文学研究科教授)
鈴木岩弓 (文学研究科教授)
高橋 満 (教育学研究科教授)
永井 彰 (文学研究科教授)
長岡龍作 (文学研究科教授)
名嶋義直 (文学研究科教授)
長谷川公一(文学研究科教授)
柳原敏昭 (文学研究科教授)
柳田賢二 (東北アジア研究センター准教授)

*注:有志90名には、呼びかけ人を含む。また、訴えに賛同された理系教員若干名を含む。

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