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2014年06月02日

日本科学者会議、声明「学校教育法等の「改正」に反対し、科学・技術の健全な発展と、大学の自治を保障する政策への転換を求める」

日本科学者会議
 ∟●学校教育法等の「改正」に反対し、科学・技術の健全な発展と、大学の自治を保障する政策への転換を求める

学校教育法等の「改正」に反対し、科学・技術の健全な発展と、
大学の自治を保障する政策への転換を求める


 日本の大学や研究機関は、1990 年代後半から政府・文部科学省が進めてきた高等教育政策・科学技術政策による資金の選択的重点投下によって、大きな格差とゆがみが生まれている。国立大学と国立研究機関は法人化によって、財政基盤はますます窮乏化している。私立大学においても、私立学校振興費の削減により教育・研究のみならず経営の継続が大きな困難に直面している。公立大学も、設置自治体における政争の具にされるなど、その教育研究基盤が危機にさらされている。

 設置形態を問わず、教員・研究者は過度の競争的環境に追い込まれ、外部資金や科研費等の競争的資金の獲得、外部および内部の評価、評価に対応した組織改編などの業務に忙殺され、教育・研究に必要な時間を確保できず、学生の教育や次代を担う若手研究者の養成に支障をきたしている。

 大学は、直ちに成果につながり、企業の要求に合致するような研究と人材供給に重点が置かれるようになってしまった。本来大学とは、すぐに成果につながらないような基礎的研究や、長期観測等を伴う研究をも継続できる機関である。そのために分野によって著しく異なる教育・研究の方法を十分把握して、実態に合わせた評価と組織運営が必要である。にもかかわらず、短期的成果だけを重視した画一的評価・運営が行われている。

 特に過酷な状況にあるのが若手研究者である。任期付きの不安定な雇用条件のもとで、多くは使い捨ての状態に置かれており、生活にも困難をきたし、長期的展望を持った研究や、独創的な研究を行うことが不可能な状況に追い込まれている。学部学生にとっても、受益者負担主義による世界最高水準の学費と給付奨学金制度の不在が、就学の重い負担となっている。

 研究の世界に過度の競争を持ち込み、研究者および研究機関を異常な業績主義に追い込んでいる現状は科学・技術の健全な発達とは相容れない状況であり、研究の世界に不正を持ち込む原因を作り出している。

 開会中の第 186 通常国会に提出された学校教育法及び国立大学法人法の「改正」法案は、教授会を諮問機関化し、教授会から人事権を剥奪し、学長の選任についても大学構成員の意見を排除しようとするものである。日本国憲法が定める「学問の自由」を保障するための「大学の自治」の根幹にかかわる重大な改悪である。政治権力による大学自治・大学運営への重大な介入で、決して許すことのできないものである。

 このような事態は、学術の総合的発展に大きな障害を招き、これまで培ってきた我が国の学術と教育の体制が根こそぎ破壊される恐れがある。大学・研究機関の外からのトップダウン的な「改革」の強行は、高等教育および学術研究体制を、壊滅的な状況に追いやることになろう。

 現在のような学術研究体制の悲惨な状況から抜け出すためには、基盤的経費の増額による財政的基盤の大幅な強化、人員制限の柔軟化などによる研究環境の向上、学術研究の本質を生かす方向への評価システムの改善、教育・研究における過度の競争の是正など、科学・技策を大きく転換する必要がある。日本科学者会議は、その実現を強く求めて行動する。

2014年5月25日
日本科学者会議第45回定期大会

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