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2014年06月04日

九州私大教連、教授会自治を否定する学校教育法改悪に反対します

■九州私大教連

教授会自治を否定する学校教育法改悪に反対します

2014年5月27日
九州私大教連執行委員会

1.政府・文部省は、産業競争力強化のために「大学のガバナンス改革を推進する」として、「大学の自治」の中心的な担い手である教授会機能を制限する学校教育法改正案を国会提出しました。しかし以下に見るように、この学校教育法改正法案は、日本国憲法が保障する「学問の自由」とこれを担保する「大学の自治」を根底から突き崩すものであるため、私たちは、これを絶対に容認することができません。

2.現在の学校教育法第93条は、「大学の自治」の保障のために、国公私立の別なく「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定しています。改正法案は、この学校教育法第 93条を全面的に書き換えています。すなわち、教授会は、「重要な事項審議する」のではなく、学生の入学・卒業及び課程の修了、学位授与について意見を述べることができ、上記以外の教育課程の編成や教員人事などの重要事項は、原則意見を述べることできるだけの諮問機関となっています。
 歴史的に、大学は学問の中心として、時の様々な権力から独立して、学問研究と高等教育を行うための自治権を保障されてきました。これは、大学の自治の欠如が、学問の発展に決してつながらず、結局のところ、国民全体が学問の自由と高等教育を受ける権利を享受できなくなってしまうからにほかなりません。このことは、わが国の歴史的経験に照らして明らかです。学校教育法が大学に重要な事項を審議するために教授会を置くと定めているのは、日本国憲法が保障する学問の自由、またこれを担保する大学の自治を法律上確認し、このことを通じて学問の発展を制度的に支え、期待するものだといえます。また、このような大学の自治は国際的にも大学制度の基礎として認められてきました。
 ところが今回の改正法案は、歴史的に積み上げられてきた教授会の自治を踏みにじり、学問の自由を保障する大学自治の原則、戦後わが国の大学が営々と築き上げてきた成果や経験を否定し、大学を権力の支配下に置こうとしています。このことが学問・研究・教育の発展を促進するどころか、逆に衰退につながるのは明らかです。

3.今回の改正法案は、教授会権限を制限することで、学長権限を相対的に強化すし、「学長のリーダーシップ」で大学改革が進むこと期待しています。しかし、学長のリーダーシップは本来、外在的に付与されるものではなく、大学構成員の教育・研究を基盤とし、かつ大学構成員からの自発的同意に支持されて成り立ち、その場合にだけ有効に作用するものです。大学の目的と組織原理は、利潤最大化を目的とする企業の組織原理とは決定的に異なります。この理解を欠いた「学長のリーダーシップ」は大学にとっては学長専権体制の別名でしかありません。
このことは、とりわけ私立大学にとっては死活的に重大な問題を生起させることになります。わが国の私立大学は、国公立大学に比して極めて乏しい国庫補助のもとで、学生・保護者の切実な高等教育要求に応えて、学校数の 80%、学生数の 75%を占めるほどに発展を遂げてきました。しかしながら、一部の私立大学では、理事会による教授会を無視した専断的な運営が行われ、そのことに起因する不祥事が後を絶ちません。このような私立大学では学長の権限強化は理事長・理事会の権限強化につながらざるをえません。2013年 3月に文部科学大臣の解散命令を受けた群馬県の学校法人では、理事長・学長に権限を集中させて教授会を無視した専断的な大学運営・学校法人運営を続けてきたことにより、社会的信頼を失墜させ経営破たんに至ったことが明らかになっています。
私立大学における教育・研究の質を向上させるためには、教授会自治を尊重した民主的な大学運営の確立が不可欠です。教授会の権限を縮小させる学校教育法改正法案は、私立大学の専断的運営にいっそう拍車をかけ、私立大学の教育・研究の発展を阻害するものにほかなりません。

4.大学は「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」(教育基本法第7条)すること、「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第 83 条)することを通じて、社会全体の発展、人類の福祉に寄与するという社会的使命を果たすことが求められています。こうした役割を十分に発揮するために、教育基本法第 7条2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めています。私たちは、この規程を尊重し、学校教育法改正法案は廃案すべきと考えます。


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