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2014年06月06日

京滋私大教連、緊急声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する」

京滋私大教連
 ∟●緊急声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する」

<緊急声明>
憲法解釈の変更による集団的自衛権の
行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する

2014 年 5 月 30 日
京滋地区私立大学教職員組合


 5 月 15 日、安倍首相は自らの私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が提出した集団的自衛権の行使を容認する報告書を受けて、憲法解釈の変更を検討する考えを表明しました。
 集団的自衛権とは、自国が直接の武力攻撃を受けていなくても、緊密な関係にある他国が武力攻撃を受けた際、実力をもって阻止する権利のことですが、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認をすることは、「海外での武力行使」を不可能としてきた憲法上の「歯止め」を取り払う極めて重大な問題です。
 現在憲法の第 9 条では、一切の戦力不保持を明確に規定していますが、歴代の政府は「自衛」のための「必要最小限度」の実力(自衛隊)を持つことは、憲法違反ではないとの考え方を取る一方、「集団的自衛権」の行使については、「憲法上、許されない」との立場を一貫して取ってきました。
 それは、これまでの政府見解で「集団的自衛権は権能としては保有しているが、それを行使することは『自衛のための必要最小限の範囲』を超えるものであって、憲法上許されない」(1981 年 5 月 29日政府答弁書)としている通り、「集団的自衛権」の行使は、憲法上認められないとの立場を堅持してきたのです。このような歴史的経緯の中で積み重ねられてきた憲法解釈を、一内閣の判断で性急に変更することなど到底認められるものではありません。
 安倍首相は、憲法 9 条の「改正」が難しいとみると、第 96 条の憲法改正手続きの「改正」を目論んだものの、それも難しいと考える中で今度は憲法解釈の変更という手段を持ち出しました。そして、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に対しても批判が高まる中で、それらの批判をかわすために「集団的自衛権の行使といっても、放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす場合などに限定して行使する」とする「限定容認」論を持ち出しています。しかし、「日本の安全に重大な影響を及ぼす場合」を判断するのは時の政権であって、このようなまやかしの「限定容認」論を持ち出すこと自体、首相としての資質が問われる重大な問題です。
 このような安倍内閣の政治姿勢は、中国、韓国といった近隣諸国との関係を悪化させており、大学にも深刻な影響を及ぼしています。日本政府は、2020 年までに外国人留学生数と日本人の海外留学者数を倍増させる方針を打ち出していますが、日中関係、日韓関係の悪化によって、中国・韓国からの留学生が減少するとともに、日本人の学生も中国・韓国への留学を回避する動きが強まっています。
 そのため、ある大学では毎年実施されていた中国人学生との現地での交流プログラムに日本人学生の希望者が集まらず、プログラムの実施が取り止めになるなど、大学での学びにも重大な支障が生じる事態となっています。今、重要なことは近隣諸国との緊張関係を増幅させる主張や姿勢を強めることではなく、近隣諸国との相互信頼と共存関係の構築、日本国憲法の平和主義にもとづく主張と外交政策を考えていくことです。
 現行憲法の前文では、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と規定されており、大学は、かつて積極的に学生を戦地に送り出していた痛苦の過去を反省し、「二度と学生を戦地に送り出さない。学生は二度とペンを銃に持ちかえない」という反戦・平和の誓いの下、日本社会の平和と民主主義の発展に寄与してきました。
 現行憲法の理念の下で育まれてきた平和と民主主義の礎を覆し、主権者である国民の意向を無視して、自らの判断で戦争行為に踏み出そうとする安倍内閣に強く抗議するとともに、私たちは日本社会の理性と良識を結集し、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を許さない国民的な合意を形成していく取り組みを呼びかけるものです。

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