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2014年06月09日

東海圏大学非常勤講師組合、学校教育法改正案に断固として反対します

東海圏大学非常勤講師組合

衆議院文教科学委員 各位

2014年5月17日
東海圏大学非常勤講師組合
執行委員会

学校教育法改正案に断固として反対します

 文部科学委員の皆さま。日頃より私たち国民のためにご尽力いただき、誠にありがとうございます。
 4月25日に「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定され国会に提出されたことをうかがいました。しかしながらこの改正には大きな疑問があります。それは、現行学校教育法93条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という規定を破棄し、教授会を「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関に変質させるということです。
 教授会は、憲法第23条が定める「学問の自由」から導き出される「大学の自治」を担う機関として、これまで教育・研究に関する重要な事項についての審議・決定権を有してきました。しかし法案は、教授会を実質的な諮問機関とし、学長によるトップダウンの大学運営を確立しようとしています。また経営協議会の学外委員を「2分の1以上」から「過半数」とし、学内の意向を軽視した大学運営を行おうとしています。
 かつて教授会は、教員ばかりでなく職員、一部では学生の代表も参加し意思決定を行っていました。しかし今日では教員は非常勤講師や任期教員・技術員等に分断され、実質的な教員の多くが教授会から疎外され、学問の自由や大学の自治からは遠い存在となりました。大学職員も近年はこの傾向が強まり、教員・職員・学生ら大学関係者の多くが大学の運営から排除され、この傾向は急速に拡大しました。その悪しき集大成が今回の学校教育法改正案と推測されます。この法案が成立すれば、大学の教育・研究に関する意思決定から、ほぼすべての実質的大学関係者が締め出されるという、異常な状況が国家によって強制されるのです。これは、見逃すことのできない憂慮すべき事態です。
 1997年、第29回ユネスコ総会において「高等教育教員の地位に関する勧告」が採択されましたが、そのⅢ基本原則の8において「高等教育教員を代表する組織は、教育の発展に大いに貢献することができる力並びに第三者及び他の利害関係を有する者と共に高等教育政策の決定に関与すべき力としてみなされ及び認められるべきである」と明記されています。しかし日本では、ほとんどの利害関係者がこの改正によって学内行政から実質的に排除されるのです。日本国憲法98条2項では、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とありますが、それに違反しても構わないというのでしょうか。
 私たちは、この法案の撤回を断固要求します。ユネスコの勧告はいわば確立された国際法規であり、それが主張するように、高等教育教員を代表する組織は、高等教育政策の決定に関与すべき力として認められなければなりません。
 教授会決定の実態の是非はともかく、話し合いと同意に基づく運営こそが民主主義の基本であり高等教育の理念です。憲法23条が内包する大学の自治がそれを意味することは、ユネスコの勧告が示す通りです。教授会の制限は民主主義の否定であり、強く反対し抗議します。多数の大学関係者による大学の自治・学問の自由を国家の干渉により一方的に制限し、特定の権力者の道具として利用するための法改正は、民主主義のいかなる手続き・正当性にも反するため、絶対に認めることはできません。

以上

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