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2014年06月11日

城西大学教職員組合、大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

2014年6月6日
城西大学教職員組合執行委員会

 4月25日、「学校教育法および国立大学法人の一部を改正する法律案」が閣議決定され、現在開催中の第186回国会で審議されています。この法案は、93条を改悪し、教授会を事実上、単なる諮問機関とし、学長の専断的体制を確立させる内容です。学問の自由・発展を支えている大学の自治を根本から突き崩すものです。私たちは、これを絶対に容認することができません。反対する根拠は3点にまとめられます。

1.現在の学校教育法第93条は、「大学の自治」の保障のために、国公私立の別なく「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定しています。改正法案は、この学校教育法第 93条を全面的に書きかえています。すなわち、教授会は、「重要な事項審議をする」のではなく、学生の入学・卒業及び課程の修了、学位授与について意見を述べることができ、上記以外の教育課程の編成や教員人事などの重要事項は、原則意見を述べることできるだけの諮問機関となっています。ある大学では、教授会で承認された学生の復学を、学長が認めないということがすでにおきています。
 歴史的に、大学は学問の中心として、時の様々な権力から独立して、学問研究と高等教育を行うための自治権を保障されてきました。これは、大学の自治の欠如が、学問の発展につながらず、結局のところ、国民全体が学問の自由と高等教育を受ける権利を享受できなくなってしまうからです。日本国憲法が保障する学問の自由、またこれを担保する大学の自治を法律上確認してこそ、学問の発展を制度的に支え、期待できるのです。このような大学の自治は国際的にも大学制度の基礎として認められてきました。
 ところが今回の改正法案は、歴史的に積み上げられてきた教授会の自治を踏みにじり、学問の自由を保障する大学自治の原則、戦後わが国の大学が営々と築き上げてきた成果や経験を否定し、大学を権力の支配下に置こうとしています。このことが学問・研究・教育の発展を促進するどころか、逆に妨害・衰退につながるのは明らかです。

2.今回の改正法案は、教授会を諮問機関とすることで、学長権限を強化し、「学長のリーダーシップ」で大学改革が進むことを期待しています。しかし、学長のリーダーシップは本来、外在的に付与されるものではなく、大学構成員の教育・研究を基盤とし、かつ大学構成員からの自発的同意に支持されて成り立ち、その場合にだけ有効に作用するものです。大学の目的と組織原理は、利潤最大化を目的とする企業の組織原理とは決定的に異なります。この理解を欠いた「学長のリーダーシップ」は、まさに学長専権体制でしかありません。
このことは、とりわけ私立大学にとっては死活的に重大な問題を引き起こします。わが国の私立大学は、国公立大学に比して極めて乏しい国庫補助のもとで、学生・保護者の切実な高等教育要求に応えて、学校数の 80%、学生数の 75%を占めるほどに発展を遂げてきました。しかし、理事長による教授会を無視した専断的な運営が行われている大学では、多くの重大な不祥事がおきています。補助金が削減されたり、解散命令のだされた大学もあります。このような私立大学では学長の権限強化は理事長の権限強化につながり、大学の存続を危険にさらしています。

3.大学は「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」(教育基本法第7条)すること、「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第 83 条)することを通じて、社会全体の発展、人類の福祉に寄与するという社会的使命をはたすことが求められています。こうした役割を十分に発揮するために、教育基本法第 7条2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めています。私たちは、この規程を尊重し、学校教育法改正法案は廃案にすべきと考えます。


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