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2014年07月03日

自由法曹団、安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

自由法曹団
 ∟●安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

1 政府は本日、臨時閣議を開き、日本が集団的自衛権の行使を可能にすることを柱とする日本国憲法第9条の「解釈変更」を、閣議決定により強行した。われわれは、閣議決定が違憲無効であることを宣言するとともに、平和を求める民意を無視して閣議決定を強行した安倍内閣の責任を追及し、この暴挙に断固抗議するものである。

2 日本国憲法第9条は、1項で、個別的自衛権の行使として行われるものを含めてすべての戦争を放棄し、2項では戦争の放棄を実現するために、すべての軍備の保持を禁止し、国の交戦権を否認している。日本国憲法制定のための帝国議会においては、当時の首相であった吉田茂も、「第9条2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、交戦権も放棄したものであります。」と答弁しており、当時の政府が、憲法9条により、個別的自衛権の行使も含めて戦争が放棄されたと解釈していたことは明らかである。

 その後、朝鮮戦争の勃発と東西冷戦構造の進展の中で自衛隊が創設された。自民党政権と内閣法制局は、憲法9 条の解釈の「転換」を図り、自衛隊の存在を認める「専守防衛論」がとられることとなったのである。しかし、この「専守防衛論」の下においても、我が国が行使できる自衛権は自国への急迫不正の侵害があった場合に防衛する個別的自衛権に限定され、集団的自衛権の行使は憲法9 条のもとでは許されないという立場が、戦後、歴代政権により堅持されてきたのである。

3 ところが、本閣議決定は、「個別的自衛権」「集団的自衛権」、そして「集団安全保障」という区分を意図的に放棄して「自衛のための武力の行使」と一括りにした上で、「自衛のための武力の行使」が憲法上許容される場合として、「わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るためにほかに適当な手段がない時」には、「必要最小限度の実力を行使すること」が憲法上許容される、としたのである。

 このような憲法解釈の変更は、憲法第9条の本来的な解釈から認められないことはもちろん、戦後の歴代政権の立場からも違憲であるとされてきた集団的自衛権の行使、そして集団安全保障上の措置としての海外での戦争・武力行使を無条件に解禁することを企むものであるといわざるを得ない。政府は集団的自衛権等の「限定容認」であるとの主張を繰り返すが、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由・・・が根底から覆される明白な危険」があるか、「ほかに適当な手段がない」かどうかの判断は、時の政権にまかされており、限定のための「要件」として意味をなしていないというほかない。すなわち、閣議決定により、集団的自衛権等を名目とした海外での武力行使が無制限に許容され、日本が、世界で戦争をする国に変質しようとしているのである。

4 そして、このような憲法解釈の大転換、そして、国民の権利に重大な影響を与える国の政策の大転換を、閣議決定により行おうとする政権の態度も、強く非難されなければならない。

 安倍政権は、私的会合にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に、集団的自衛権の行使容認等についての検討を委ね、同懇談会の報告を受けたのち、ごく短期間の与党内での密室協議を行ったのみで、閣議決定を行ったのである。国会審議を行わず、広く国民の議論に委ねることも回避しようとする点で、民主主義を否定するものであることはもちろん、憲法に基づく政治を求める立憲主義をも否定するものである。

5 閣議決定においては、集団的自衛権の行使の容認以外にも、いわゆるグレーゾーン事態における自衛隊の活動の迅速化や、「武力の行使との一体化論」の放棄による自衛隊の戦闘地域での活動範囲の拡大等が目論まれている。これらについても、憲法9条に反する活動を拡大するものとして違憲であり、到底許すことができないものである。

6 安倍首相は、閣議決定後の記者会見においても、「外国を守るために戦争に巻き込まれることはない。」「国民を守るための自衛の措置のみがとられる。」などと説明するが、詭弁であるというほかない。過去に、集団的自衛権行使の名の下に、ベトナム戦争へのアメリカ軍の参戦、アフガニスタン・対テロ戦争へのNATO 軍の参戦等が行われたが、これらは大国による覇権を求める戦争であった。このような戦争に今、日本が巻き込まれようとしているのである。

7 自由法曹団は、政権の勝手な解釈によって憲法第9条を破壊し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に強く抗議するとともに、安倍政権によって企まれている、戦争する国づくりのためのあらゆる改憲策動を阻止するために、全力を尽くすことを表明する。

2014年7月1日

自 由 法 曹 団
団 長 篠 原 義 仁

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