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2014年07月11日

神戸大学教職員組合、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」参議院委員会の傍聴行動への参加報告

神戸大学教職員組合
 ∟●月刊しょききょく7月号(2014.07.07)

6/17「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」参議院委員会の傍聴行動への参加報告

藤田裕嗣 前副委員長(文学部支部)

 全大教・日本私大教連の主催による 6 月 13 日の「学校教育法・国立大学法人法の『改正』に反対する緊急院内集会・議員要請行動」に続き、17 日の参議院文教科学委員会の傍聴行動にも参加したので、ご報告します。
 「大学自治を否定する学校教育法・国立大学法人法の改正法案」は、6 月 10 日の衆議院本会議で採決され、参議院に送付されています。参議院文教科学委員会での質問等は、6 月 17 日(火)と 19 日(木)に予定されており、「学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会」のアピールへの賛同が広がっている情勢を受けた行動でした。
 具体的には 13 時前に参議院面会所に集合し、チェックを受けた後、午後からの文教科学委員会での質問と答弁の有様を傍聴しました。6 会派からそれぞれ 1 名の委員が質疑を行い、政府側は下村博文文部科学大臣、西川京子文部科学副大臣、吉田大輔高等教育局長が答弁を行いました。その他、衆議院における修正法案の提案者として、笠浩史衆議院議員も冒頭で説明を求められました。
 学長一人で何もかも判断できる筈もなく、「委譲」が問題になり、19 日に持ち越しとなりました。大臣と局長による答弁を肉声で聞くと、大学ランキングに日本の大学があまり入っていないことを何度も強調していました。昨今の事情に鑑み、大学改革の必要性は判りますが、「学長のガバナンス」を高める一方で、教授会の権限は蔑ろにしようと画策しています。日本の大学は、せいぜい百年を超える程度の歴史を有するに過ぎないにしても、明治以来、培ってきた学問の自由、学部自治の伝統があります。それを蔑ろにして、学長中心の改革で、世界に冠たる大学に本当になれるのでしょうか?論理が逆転しており、大いに疑問に思われます。
 前回 13 日の議員要請行動で報告者が担当した2議員も質問に立ち、若手研究者が教員になれても、ポストは任期付きゆえ不安定で、四苦八苦している現状を救うには、教授会によるチェックが必要、と訴えるなど、少しは役立ったかも、と感じられました。 前回、衆議院における委員会審議の傍聴では参加者が多く、報道席にまではみ出した由でしたが、それに比べれば少なかった訳で、報道陣も、一人気付いた程度でした。マスコミを賑わしている「集団的自衛権」の閣議決定を巡る議論と抱き合わせにしているのは、内閣の思惑以外の何物でもないでしょう。
 次の委員会は 19 日午前中から、本会議は午後にも予想され、目指す継続審議、廃案にするには、ギリギリの情勢であること、ご報告します。
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6/19「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」参議院委員会の傍聴行動への参加報告(続)

庄司浩一 前副委員長(農学研究科支部)

 本稿は,本学藤田副委員長による標記 6/17 参議院文教科学委員会傍聴を受けての 6/19 同傍聴報告です。傍聴席には 30 余名,記者席には 4 名と比較的多く参集しました。10 時に 6 会派 7 名の委員による質疑が始まり,昼食をはさんで 14 時 30 分少し前に採決,18 対 1 で可決となりました。質疑が終わったあとの討議および採決で反対したのは共産党田村委員だけの状況でした。続いて自民・公明・維新・結い・みんなから提案があった 9 項目からなる附帯決議が可決されました。同席した全大教の長山書記長からは厳しい総括がありましたが,我々大学人の立場がほとんど通らなかった現実を直視せざるを得ません。

 以上が状況報告ですが,本日の委員会では 10 時 45 分より約 20 分にわたって,民主党大島委員による環境副大臣らへの質疑が挟まれました。内容は,6/16 の石原環境大臣の発言に関する追及で,なぜここにと思われましたが,原子力行政は文部科学省管轄でもあるためのようです。専門の委員会とはいえ党略マター(大義名分ではそのつもりはないはず)が入ってしまうのは,議員集団ゆえの現実かとしばらく聞き流していました。法案に唯一反対を表明した共産党田村委員からは,先日の産経新聞で報道された広島大学での講義と文部科学省の対応を引き合いにし,学問の自由に対して改めて問いかけが行われました。しかし現実には他の委員からは私語をはじめとする弛緩したオーラが伝わってきて,早く審議を終わらせたい意向がありありでした。
 また最後の附帯決議には,衆参の委員会を通じて懸案事項として取り上げられた,法案を施行するにあたって考慮すべき項目,たとえば学長が暴走しないように監視する方策を考える,高等教育のための予算を対 GDP 比で 0.5%の現状から OECD 諸国並みの 1%に引き上げるべきなどの努力目標が盛り込まれました。しかし所詮これらはガス抜きであることは明白で,傍聴参加者の中からは,平成 15 年の独立行政法人化法案の時も同じような附帯決議がなされたが,まったくもって無視された状態だとのつぶやきが聞こえてきました。傍聴会場から出るときには,「良識の府」といわれる参議院でこの程度の審議かとのつぶやきもありました。

 おそらく全大教の方々は誰も書かないとは思いますが,今回の傍聴で無視できないな,と感じた点は,維新の会・結いの党およびみんなの党からの質疑です。彼らの言い分は,学長のリーダーシップ強化のための法案とはいえ,民間企業の社長に比べたらまだまだ甘い,つまり現改正案よりももっと権限を付与せよ,いわんや教育界だけの大学の自治とは理解に苦しむとの意見です。民間出身者など大学の事情を知らない方々から出た意見と言い切ってしまえばそれまでですが,逆に世間一般の方からみた厳しいほうの意見として伺っておくものかと思います。一方で今回の改正で蔑ろにされるといわれる教授会といっても,自身の研究優先で教授会構成員そのものがまじめに参加していない現況もあるではないかとの厳しい指摘もありました。まったくもって反論のしようがなく,学問の自由は憲法で保障されているとか,明治以来の長年の経験に立って教授会が役割を果たしている,といった伝統の上であぐらをかいてメンテナンスを怠っていた大学人らに,不意打ちをかけるような形で今回の法改正がやってきたとはいえないでしょうか。皮肉なことに,これら最も厳しいと思われる意見と法案廃止の意見との中間に,今回の政府による改正案が位置づけられてしまったことにより,委員会での圧倒的な賛成多数がもたらされたようです。最後の解散直前に長山書記長の「これからは我々自身で学問の自由を守る必要がある」とのコメントに,ようやく目を覚まさせられたのは私だけではなかったと思います。

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