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2014年07月11日

首都大学東京労働組合、大学の自治を否定する学校教育法と国立大学法人法の改悪に抗議する決議

首都大学東京労働組合
 ∟●『手から手へ』第2713号(2014年7月8日)

大学の自治を否定する学校教育法と国立大学法人法の改悪に抗議する決議


 2014 年 6月 20日、学問の自由を支えるうえで重要な役割を果たしてきた教授会の権限を大幅に縮小させて、それを学長権限のしたに組み込む学校教育法「改正」案が、参議院において自由民主党、公明党、民主党などの賛成によって成立しました(投票総数 238、賛成票 223、反対票 15)。今回の「改正」により、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」(学校教育法第 93条)と定めている現行法が、「教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする」(改正案第 93 条)と変えられてしまいました。「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」に対して意見を述べることに教授会の役割が限定され、この他については、学長が必要であると判断した事項に対してのみ意見を述べることができるという規定となりました。しかも、この強大な権限を持たされることになる学長の選考について、「学長選考会議が定める基準により、行われなければならない」ことが、国立大学法人法の「改正」案第 12 条に書き加えられました。これらの「改正」によって、法規定上の教授会権限は大幅に縮小され、また学長選考に際して焉A教職員、そして院生と学生の意見を反映させることが難しくなってしまいました。このままでは、不透明な手続きによるトップダウンの大学運営がいままで以上に拡がってしまい、学内からの合意が形成されないまま、形式上の「改革」だけが進行していく危険性が高まってしまいます。

 大学は、国家や権力を持った勢力による統制や干渉から学問の自由を守るために、多くの経験を蓄積させながら大学の自治を確立してきました。大学の自治は、自由な研究と教育、および民主的な社会を維持し発展させていくために不可欠なものです。これを否定する今回の学校教育法と国立大学法人法の「改正」は、大学の歴史とその使命に照らしてとうてい認められるものではありません。このことは、私たち公立大学法人首都大学東京が「失われた 10 年」を通して、すでに経験してきたことです。大学は、研究と教育の自由が生命線であり、いくら法制度をトップダウンで変えても、それによって創造的な研究と教育が生みだされるものでは決してありません。
こうした無謀な高等教育政策を第 2 次安倍内閣が急ピッチですすめようとしている背景には、経済界のグローバル戦略に大学を組み込むねらいがあります。第 2 次安倍内閣になって設置された教育再生実行会議の第 3次提言では、2017 年までの 5年間を「大学改革実行集中期間」と位置づけ、「世界に伍して競う大学の教育環境をつくる」「スーパーグローバル大学(仮称)を重点的に支援する」「日本人留学生を 12万人に倍増し、外国人留学生を 30 万人に増やす」ことなどが提言されました。同時に、こうした「改革」を学長がリーダーシップを発揮してすすめているところに対して重点的に大学運営費交付金を配分していくことが、露骨に提言されています。

 今回の学校教育法と国立大学法人法の「改正」は、大学の自治と、自由で創造的な研究と教育が行われる環境をこわすものでしかありません。私たちは、今回の改悪に強く抗議し、今後とも、研究と教育の自由、大学自治を守り実現するために力を尽くします。
以上、決議します。

2014年6月28日

公立大学法人首都大学東京労働組合
第 9 9 回 定 期 大 会

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