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2014年07月15日

沖縄密約文書、「3年かけこの程度か」西山さん落胆隠せず

毎日新聞(2014年07月14日)

 2011年の上告から約3年を経て示された司法の最終判断は敗訴だった。沖縄返還を巡る密約文書の開示請求訴訟で14日、文書の不開示が確定した。「司法のチェックが機能しなかった」「3年かけてこの程度の判断か」。30秒程度の読み上げに終わった最高裁判決に、原告は落胆の色を隠せなかった。

 14日夕、東京・霞が関の司法記者クラブ。記者会見した原告団は「実にひどい内容だ」などと次々に判決を非難した。

 元毎日新聞記者の西山太吉さん(82)も「(廃棄されたとみられる)文書がないことを正当化する判決だ」と批判。「情報公開の精神にのっとって(密約を)国民に伝達するのが本当の民主主義」と指摘し、「判決は、外交文書は相手が傷つくから捨ててしまうこともあると言っているが、密約文書は国民共有の財産。永久保存しなきゃいけない」と声を荒らげた。一方で「政府の隠し事をさらし出した意義はあった」とも振り返った。

 提訴は09年。民主党政権時代に訴訟と同時並行で開かれた外務省の有識者委員会は10年に「広義の密約」があったと認めた。12年には岡田克也副総理が参院予算委員会で「歴代の首相や外相が1990年ごろまで外務省から(密約が)あると報告を受けながら、存在を否定してきたことは許し難い」と発言し、西山さんに謝罪した。

 最高裁判決も密約文書については、その存在を認めた2審・東京高裁判決(11年)を支持。西山さんは会見で「政府が徹底的に否定した密約を司法が完璧に認定したことは大勝利だ」と強調した。その上で年内にも施行される特定秘密保護法について「政府に都合のいい情報だけが我々のところに届くようになると本当に危険な状態になる。情報公開は民主主義の要だと言いたい」と警鐘を鳴らした。【山本将克】

 外務省の話 国の主張を認めた高裁判決が是認された。政府としては、国民が重要な歴史事実を検証できるよう、適切な行政文書の保存・管理に努める。

 右崎正博・独協大法科大学院教授(情報法)の話 高裁判決は、行政が過去に持っていた文書は特段の事情がない限り情報公開を請求した時点でも「あった」と推認されるとしていたのに、最高裁は個別具体的に判断すべきだとした。特に外交文書について、他国との交渉が絡む場合には通常と異なる保管体制を取ってよいとまで認めた。情報を原則公開とする法の趣旨を踏み外すものだ。これでは情報公開法が形骸化してしまう。


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