2014年07月23日
TPP著作権保護 期間延長で反対声明 経済的損失が上回る ウィキペディアなど35団体
インターネット上の百科事典を運営するウィキペディア財団や米国、カナダの大学・研究機関の図書館でつくる「北米研究図書館協会」など35団体は、環太平洋連携協定(TPP)で著作権保護期間の延長に反対する国際共同声明を発表した。日本からもインターネットユーザー協会や本の未来基金など知的財産関連の4団体が参加。保護期間が終わった著作物が公共の利益に役立てられるのを妨げる一方、著作権を抱え込む少数の多国籍企業に利益をもたらすだけだとして、保護期間を延長しないよう要請している。声明によると、著作権保護期間が満了した著作物は「社会の全ての活動分野に社会的・経済的利益をもたらす」と明言。著作権の保護期間を現行以上に延長することで、作品を扱う産業への投資が増えるなどの効果が予想されるものの、むしろ多くの人々が作品を利用しにくくなる経済的損失の方が大きく上回るとした。
また著作権の保護期間の延長が、作品を利用する図書館や学生、作家、アーティストらに大きな負担になるなどと指摘。「著作権保護期間の延長は費用が掛かり不必要」と主張する。
インターネットユーザー協会など知的財産関連の3団体で構成する「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」は声明を翻訳しインターネットを通じて、声明に賛同するよう呼び掛けている。
TPPでは知的財産も交渉分野の一つで、著作権期間の保護延長が検討されている。日本やカナダなどは現在、著作者の死後50年を保護期間としているが、米国やオーストラリアなどは死後70年としている。
インターネットユーザー協会によると、3~12日までTPP首席交渉官による会合が行われていたカナダ・オタワで同国の非政府組織(NGO)が声明内容を交渉官に対し説明したという。
同協会の香月啓佑事務局長は、「世界的に知名度の高い主要な国際団体が声明に賛同しておりインパクトは大きい。TPPは経済成長と言われているが、著作権分野だけでも実際、成長につながらないというのが参加団体の共通認識だ」とみる。