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2014年07月24日

早大博士論文 杜撰な審査がまかり通るのか

読売新聞(2014年07月23日)

 博士論文がお粗末なうえに、大学内の審査も杜ず撰さんだった。

 理化学研究所の小保方晴子氏が早稲田大学に提出した万能細胞に関する博士論文について、早大の調査委員会は、盗用などの不正を認定し、「内容の信ぴょう性は著しく低い」と結論づけた。

 早大側の対応についても、論文の作成指導や審査体制に重大な不備があったと批判している。

 ところが、調査委は「博士号の取り消しには該当しない」と判断した。実験結果を偽った不正ではないという理由からだ。

 解せない結論である。

 小保方氏は、3年半前に下書き段階の「草稿」を誤って大学に出してしまったと弁明し、今年5月になって、「完成版」を調査委に改めて提出した。

 草稿を出したこと自体、研究者を目指す者として、うっかりでは済まされない行為ではないか。

 論文の完成版でさえ、研究の意義をアピールする序章の大半で、米国の研究機関の文章を丸写ししていた。論文の独創性が疑問視されても仕方がない。

 他の著作物の画像流用についても、小保方氏は「何の問題意識も持っていなかった」と調査委に語ったという。本人の未熟さは言うに及ばず、研究倫理や論文作成の基本をきちんと教えなかった指導教員の責任は重い。

 指導教員は審査の責任者でありながら、博士論文を精査しなかった。論文の合否判定を担う学内の審査会に草稿が出ていることすら気づかなかったのは問題だ。

 審査の形骸化も看過できない。審査会の委員が個々の論文を閲覧する時間は数分程度にすぎなかった。これでは、論文の中身をチェックするのは不可能だろう。

 博士号を授与するかどうかの最終的な決定権は大学総長にある。調査委の報告を受け、鎌田薫・早大総長は「内容を吟味して、学内での検討に入る」と述べた。

 早大が厳正な対処を怠れば、日本の博士号に対する国際的信用も揺るがしかねない。

 小保方氏の所属した研究科では、他の学生の博士論文にも疑義が指摘されている。早大には徹底した実態解明が求められる。

 政府は、科学技術の向上を目指し、博士を大幅に増やす政策を進めてきた。博士号の取得者は1990年代初めに比べて、1・5倍に増えた。

 だが、質は伴っているのだろうか。他の大学も、学位授与の審査体制を点検すべきだ。

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