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2014年09月08日

奨学金、借りすぎご注意

読売新聞(2014年09月01日)

滞納957億円・「借金」認識を

 学費の負担増などで奨学金を借りる学生が増える一方で、卒業後に返済が滞るケースが問題化している。

 奨学金は多くが貸し付け型で、有利子のものもあるなど、あくまで「借金」だ。返済のリスクを把握し、必要以上の借り入れは避けたい。

■多くは貸し付け型

 高校、短大、大学などに進学したくても、親の収入や貯蓄だけでは学費を賄えない場合、多くは国や大学の奨学金、民間の教育ローンなどに頼ることになる。奨学金では、各大学が支給する返済不要の「給付型」もあるが、多くの学生は貸し付け型を利用している。

 公的な奨学金は、高校生には各都道府県が、短大生や大学生などには国の奨学金貸与事業を行う日本学生支援機構(旧日本育英会)が貸与している。無担保で借りられ、民間ローンに比べ利息も低めだ。このため、「経済的に厳しい家庭にとって借りやすい面がある」(同機構の谷江徹司奨学総務課長)という。

 同機構の奨学金には、無利子の「第1種」と、有利子の「第2種」がある。それぞれ選考があり、第1種の方が成績面や親の年収に関する基準が厳しい。貸与月額は第1種(私立大学の場合)で3万円、5万4000円、6万4000円。第2種(公立と私立とも)で3万、5万、8万、10万、12万円となっており、この中から選ぶ。このほか、入学時の一時金として貸す「入学時特別増額貸与奨学金」(最大50万円、有利子)もある。

 返済の際に上乗せされる利子は卒業月(貸与終了月)に決まり、今年3月卒業の場合、金利は年0・82%(固定方式の場合)だ。

■大学生2.6人に1人

 学費が上昇傾向にある一方、世帯収入は長期的に低迷していることなどから、奨学金を借りる学生の数は右肩上がりだ。2013年度の同機構の利用者(大学、短大、大学院、高等専門学校などの合計)は第1種で約43万人、第2種で約91万人。大学生に限ると、2・6人に1人が借りている計算だ。

 一方、卒業しても就職先が見つからないなどの理由で、返済を滞納する人が後を絶たない。今年3月末時点の滞納者は約1割にあたる約33万人、滞納額は957億円に上っている。

 仮に第2種奨学金を月5万円、4年間借りると総額は240万円。本人は卒業と同時に、これを負債として抱えることになる。年利を0・82%とし、平均的な15年返済で試算すると、毎月約1万4200円を180回払っていかねばならない。決して軽くない負担だ。

 奨学金アドバイザーの久米忠史さんは「他の借り入れに比べ金利などの条件が良いだけで、奨学金も借金に変わりはない。返済に十分留意して借りる必要がある」と話す。

 もし返済が滞ればどうなるか。3か月以上滞納が続いた場合、個人信用情報機関に登録され、クレジットカードの利用が制限されたり、住宅ローンが組めなくなったりする恐れもある。同機構の谷江さんは「借りる前に本当に必要な額かどうか、将来設計も見据えながらきちんと考えて」と話す。

■減額・猶予も

 同機構で奨学金を借り、今春に大学などを卒業(貸与終了)した人の多くは、10月から返済が始まる。「定職に就けなかった」「低収入で生活が苦しい」といった人には、返済の減額・猶予の制度がある。基準年収が目安(給与所得者で300万円)を下回るなど一定の条件を満たすことが必要だ。

 減額は、例えば月1万円の返済が難しくても5000円なら払えるという場合、月の返済額を半分にして期間を延長する。猶予は、返済期限を最長で通算10年先延ばしする。ただし、いずれも返済総額は変わらない。(武田泰介)

大学独自の制度も 早慶、首都圏以外の学生向け

 多くの大学は、独自の奨学金制度を持っている。

 例えば、早稲田大学は学内奨学金が約100種類ある。その中の一つ、2009年に新設した「めざせ!都の西北奨学金」は、首都圏以外の高校出身者が入学前に申し込む「給付型」の奨学金だ。年40万円、4年で総額160万円を支給し、卒業後も返済不要だ。高校の成績や父母の収入などを基に選考し、来春入学者は約1200人の枠を予定。10~11月と1月の2回にわたって申請を受け付ける。

 早大同様、各大学は返済不要の給付型をはじめ、様々な奨学金を用意している。学生支援機構のサイトでは、こうした大学独自の奨学金をまとめて紹介するページを設けている。全国の国公私立大・短大合わせて約650校の制度が一覧表になっており、それぞれ貸与額や条件、募集人数などが確認できる。

 ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「あまり知られていないが、受験生や父母にとっては貴重な情報。活用しない手はない」と話す。志望する大学に経済面のサポートがどれだけあるか、受験前に調べておくのに役立ちそうだ。


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