2014年10月29日
札幌大学不当労働行為事件、10月28日道労委命令 労組側の全面的勝利
■北海道労働委員会
∟●札幌大学事件(平成25年道委不第3号)命令書(概要)
∟●札幌大学事件(平成25年道委不第3号)命令書(全文)
平成25年道委不第3号 札幌大学事件 命令書(概要)1 当事者
(1) 申立人 札幌大学教職員組合(以下「組合」という。)
(2) 被申立人 学校法人札幌大学(以下「法人」という。)2 事案の概要
本件は、法人が、組合に対し、平成24年9月4日(以下、平成の元号は省略する。) 提示の給与規程の改正(以下「本件給与規程改正」という。)について、改正理由を資 料を示して説明することなく団体交渉継続中に上記改正を一方的に施行するなどしたこ と、また、教員の定年後の勤務延長任用に関して、教員勤務延長任用規程の改正(以下
「本件延長規程改正」という。)の協議を組合に申し入れずに一方的に実施するなどし たことが労働組合法(以下「法」という。)第7条第2号及び第3号の不当労働行為に 当たるとして、北海道労働委員会に救済申立てがあった事案である。3 主文要旨
(1)法人は、法人の給与規程の改正及び教員の勤務延長任用規程の改正に係る団体交渉 につき、平成23年3月に申入れをしていた労働条件の不利益変更の内容を更に不利 益なものに変更する理由のみならず変更内容が適正なものであることを説明するとと もに、必要に応じて資料を提供するなどして誠実に対応しなければならない。
(2)法人は、前記(1)に係る団体交渉において不誠実な対応をすることにより組合の運 営に支配介入してはならない。
(3)法人は、前記(1)及び(2)の内容の文書を、縦1メートル、横1.5メートルの白紙
にかい書で明瞭に記載し、法人の中央棟の正面玄関の見やすい場所に、本命令書写し 交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
(4) 組合のその余の申立てを棄却する。4 判断要旨
(1) 不誠実団体交渉について
法人は、23年9月以降、全教職員を対象とする説明会を実施するなどして、大幅な定員割れと人件費の高水準、それによる高い人件費率により財政が厳しい状況にあること、そして、財政の健全化のため人件費の削減が必要であると説明し、24年5 月以降も、財政状況が更に悪化している旨説明をしていることが認められる。
しかしながら、24年5月以降に行われた説明は、24年度の財政状況が更に悪化し、本件給与規程改正及び本件延長規程改正による労働条件の更なる不利益変更が必 要であることを説明するものであるが、上記規程改正によって労働者の被る労働条件 の不利益が適正なものであることを十分説明を尽くしたものとはいえない。
すなわち、法人は、上記規程改正につき、財政状況の健全化のため人件費の削減が 必要であることを説明するだけではなく、上記規程改正が財政状況の健全化にどの程 度寄与し、今後どの様に財政状況を健全化していくのか、財政状況の見通しや中長期 的な経営方針などを明らかにするなどして、上記規程改正によって労働者の被る不利 益の程度が必要以上に過大なものではなく、また、特定の労働者だけが不利益を被る ものではないなど、経過措置や代替措置などの他の施策も含めて上記規程改正が財政 状況を健全化する施策として適正なものであることを説明しなければならない。
しかし、組合が上記規程改正に係る団体交渉で財政状況の見通しを示すよう再三求 めたことが認められるところ、法人は、上記規程改正の内容を折り込んだ資料などを 提示しておらず、23年3月申入れを超える労働条件の更なる不利益変更をするに至 った理由を説明するための上記規程改正に関する財政状況の見通しを示したとはいえ ない。また、法人は、第四次基本計画の進捗状況が当初の想定とは乖離していること を認識していながら、その代替となるような計画の策定や新たな中長期的な経営方針 を明らかにしていない。
さらに、法人は、上記規程改正によって労働者の被る不利益、特に勤務延長任用教 員に対する年俸額の削減につき、これまで申入れをしていた段階的な削減から一律に 年俸額を480万円に削減すること、さらには校務の負担及び休職の廃止などの不利 益につき、組合の要求や主張に対し、単に財政難である旨を繰り返すのではなく、段 階的な削減から一律に削減することにした理由や必要性の論拠、さらには激変緩和措 置の有無などに関する情報を提供したり、校務の理解に対する溝を埋めるような提案 や説得をしておらず、十分な説明をしたとはいえない。
したがって、法人は、専ら事業団資料によって財政状況の健全化のため人件費の削 減が必要であることを説明するにとどまり、労働条件の更なる不利益変更につき、改 正の具体的な実施・施行日を決定した旨通知していることも併せて考えれば、本件給 与規程改正及び本件延長規程改正を早急に実施することが必要であり、かつ適正なも のであることを十分説明するなどして組合の理解を得るように努めたとはいえない。
よって、法人は、上記規程改正に係る団体交渉において、労働条件の更なる不利益変更につき、誠実に対応したと認めることはできない。 以上のとおりであるから、本件給与規程改正及び本件延長規程改正に係る団体交渉における法人の対応は、法第7条第2号の不当労働行為に該当する。(2)支配介入について
法人は、前記(1)のとおり本件給与規程改正及び本件延長規程改正に係る団体交渉につき不誠実な対応をした上、上記規程改正を実施したものであるから、このような法人の対応は組合の運営に介入したものと認めるのが相当である。 よって、上記団体交渉における法人の対応は、法第7条第3号の不当労働行為に該当する。5 審査の経過(調査8回、審問2回)
(1) 申立年月日 25年2月21日
(2) 公益委員会議の合議年月日 26年9月12日、同年9月26日、同年10月10日
(3) 命令書(写)交付年月日 26年10月28日