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2014年10月02日

国民全体の刺益に奉仕する大学-学問の自由・大学自治の意義を聞い直す-

全大教
 ∟●全大教時報 (Vol.38No.4 2014.10)

国民全体の刺益に奉仕する大学
-学問の自由・大学自治の意義を聞い直す-

全国大学高専教職員組合 中央執行委員長
名古屋大学大学院教育發達科学研究科 教授
中嶋 哲彦

はじめに一本稿の課題一

 今年6月、学校教育法と国立大学法人法が改正された。これは政府及び設置者による大学・高等教育に対する支配介入をこれまで以上に強化し、あるいは「学問の自由」と「大学自治」を徹底的に換骨奪胎しようとするものだ。政府がこの法律改正に込めた政治的意図を実現させないことが、これからの課題だ。その意図が実現するようなことになれば、大学・高等教 育の劣化と国策遂行手段化は言うまでもなく、大学・高等教育に従事する者 の労働条件の劣悪化を防ぐことはさらに難しくなるし、教育者・研究者・医療従事者及びこれらの支援者としての良心に反する職務に従事させられかねない。
 政府はこれを「大学のガパナンス改革jの一環と位置づけており、今後は 中期目標・計画、運営費交付金、法人評価などの既存の制度や、「ミッションの再定義」に基づく組織改編の誘導と組み合わせることで、いわば国立大学の国策大学化を推し進めようとしている。その狙いが、(1)「イノベーティブjな産業創出のための研究開発と、(2)グローパル人材・競争力人材育成に、 大学・高等教育を動員することにあることはすでに指摘してきた。しかし、 今日的状況を踏まえれば、(3)「戦争する国」と「軍事技術・武器輸出で稼ぐ 経済」を支える軍事研究の促進を加えなければならず、(4)後期中等教育改革 に連動する大学再編(具体的には、大学の種別化、とりわけ非「研究大学j の職業訓練重点化=非高等教育機関化)も遠くない将来の課題とされていると見るべきだろう。
 このような高等教育をめぐる情勢分析や課題提起に対して、全大教は組合員の労働条件の改善に専念すべきであり、政治的問題を取りあげることは組合員拡大を阻害するものだとの批判もある。しかし、大学職員の労働条件の維持改善やその前提となる職場としての国公立大学の現状は、上記の大学政策と不可分の関係にある。また、民間労働者の労働条件が総体として劣悪化している現状にあって、国公立大学の職員の労働条件が相対的には高水準にあることを踏まえれば、全大教運動は全勤労者の労働条件改善の取り組みと連帯するとともに、それぞれの職場で国民全体に奉仕する研究教育医療の発展に努め、それを阻害する政策にははっきりと反対していかなければならないだろう。そうすることではじめて、単組・全大教の要求に対する国民的支持を獲得し、相対的に高水準な労働条件に対する同意を得ることができるのではないだろうか。
 小論では、学問の自由・大学自治を出発点にして、全大教運動の在り方をやや原理的な視点に立って考察する。

……以下,略……

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