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2014年11月08日

北海道私大教連、北星学園大学「非常勤講師」脅迫問題をめぐる一連の動きに対して

北海道私大教連

道私大教連発
2014年11月5日(水)

北星学園大学「非常勤講師」脅迫問題をめぐる一連の動きに対して

【 談 話 】

北海道私立大学教職員組合連合
(道私大教連) 執行委員会

 従軍慰安婦の本人証言をいち早く報じた元朝日新聞記者が非常勤講師 を務める北星学園大学(以下、同大学)と元記者本人に対する匿名勢力に よる卑劣な攻撃と人権侵害が社会問題になっています。私たちとしても重 大な関心をもって動向を注視し、11 月 1 日に開かれた定期大会では特別 決議を上げたところですが、それに前後して 10 月 31 日、同大学長が、 学生の安全、財政的・人的負担、入試への考慮等を理由に当該非常勤講師 の次年度採用を取り止める、と表明したことが報じられました。かかる新 たな事態に対して道内の私立大学教職員を組織する労働組合の立場から 懸念を深めており、現在の見解を以下の通り表します。

 この問題に関わっては、同様のケースで元朝日新聞記者が大学教員への 就職を取り消されたり、自主退職に追い込まれるケースが関西の2大学で生じていたこともわかり、日本における「大学の自治」と「学問の自由」 を揺るがす危機として受けとめられています。同大学がその自治と自由、 民主主義を貫くことができるかどうか、国の内外から注目が寄せられてい ます。同大学は 9 月 30 日付で学長名のメッセージを発し、その中では今 年度の当該非常勤講師の授業を最後まで行うこと、そして、来期以降につ いては「全ての非常勤講師の担当授業依頼と同様、本授業においても検討されている」と述べました。その姿勢は、「大学の自治」・「学問の自由」 を貫くものとして一定評価され、草の根で支援運動が生じるなどし、脅迫 電話事案では犯人が逮捕されました。また、当該非常勤講師の授業を扱う 教学組織の担当部局において、次年度も授業を依頼することが決定し、学 内機関としては通常慣行通りの承認を待つばかりとなっていました。しか し、わずか 1 ヶ月後に同じ学長が、入試等への考慮を理由に当該非常勤講 師の次年度採用を取り止める旨会見した、という報道に私たちは驚きを禁じえません。
 多様な思想や学問、言論が交錯する府においては、正々堂々としたそのぶつかり合いが大学としての質を高めていきます。しかし、それはあくま で平和的土台の上に成り立つものであり、匿名の暴力や個人への誹謗中傷 とは無縁です。脅迫にさらされていた同大学の「被害」および関係者の心 労は斟酌するべきですが、大学機関であればこそ学問の自由と相容れない 言論テロを排斥し、正当な大学自治を堅持する姿勢を貫かなければ最早そ の機能と社会的責任は果たしえない、ということも同大学側には問われて います。
 この問題では労働界のみならず言論界、法曹界、議会関係など各界各層 で同大学への支援決議や声明が上げられ、各紙の社説でも取り上げられる などしていますが、同学長は会見で「『北星頑張れ』という気持ちは分か るが、過大な要求だ」(11 月 1 日・朝日)と述べ、拙速に同講師の来年度 の雇い止めを評議会へ諮る、としています。苦しい胸中の吐露と理解する ものの、この発言を事実とすれば「暴力に屈するな、という気持ちはわか るが、過大な要求だ」と述べているに等しいものがあります。大学機関の 長の発言として、資質にかかわる重大な問題性を包含していると言わざる を得ません。
 「大学の自治」・「学問の自由」は社会における重要な価値として、人類 が築いてきたものです。わが国でも幅広く合意され、尊重されてきました。 暴力や言論封じのテロ的行為と相容れない価値です。いま、大学人それぞ れがその普遍性を貫き通すために、大学人としての矜恃をもって行動する ことが求められます。ゆえに私たちは、大学人として同大学当局の動向に 対しても多角的・批判的な検討を厭ってはならない、と考えます。「姿勢」 の毅然とした様が、この問題で社会的合意を見出すための大前提だと考え るからです。
 「大学の自治」・「学問の自由」が侵される流れを、何としても食い止め なければなりません。私たちは、同大学がその「平和宣言」の精神に即し た原則を堅持して目下の困難を乗り越えてより良い大学づくりへと邁進 できるよう、全力で支えなければなりません。そのことを再確認すると同 時に、その思いの共有を同大学へ強く求め、今後もあらゆる労を惜しまな い意向であることを表明するものです。

以 上

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