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2014年11月25日

首都大学東京労組、声明「誇りをもって働き続けることのできる大学をめざして」

首都大学東京労働組合
 ∟●『手から手へ』第2727号(2014年11月19日)

【声明】誇りをもって働き続けることのできる大学をめざして

2014年11月19日 公立大学法人首都大学東京労働組合中央執行委員会

 2005年4月1日、公立大学法人首都大学東京が発足し、組合は 地方公務員法上の職員団体から、労働組合法上の労働組合となり、「法人発足に当たり、新たな段階に入った運動と組合への結集を訴 える」と題した中央執行委員会声明を発表した。声明では、2003 年に始まった石原都政による大学破壊、教育と民主主義への攻撃に 対して、「私たちは直ちに、一年半にわたる大学破壊の傷跡の修復 と再建に立ち上がらねばなりません。」と表明し、以来 10 年にわ たって、たたかい続けた。
 その間、不合理な就業規則の改正を求めてきた。オープンで公正 な教員評価制度と、平等で将来設計が可能な給与制度の両方を確立 させ、優秀な教員の確保と円滑な世代交代が可能となる制度を要求 してきた。その結果、2015 年 4 月から、教授・准教授は無期雇用 となり、助教については 5 年+5 年の任期制は残されたものの、審 査を経て無期雇用となる制度を確立させた。

全員任期制の破綻
 組合が指摘したとおり、全員任期制によって教員公募の応募者は 激減し、大学教員の採用における他大学との競争力は大きく低下し た。内定者の就任辞退や適任者不在で採用人事をとりやめる事態も 生じた。企業からの応募者は皆無となった。やや遅きに失したとは 言え、2015 年 4 月採用より、教授・准教授についてはプロジェクト 採用などの一部の例外を除いて、無期雇用での採用という決断を下し た法人当局の判断を組合は歓迎する。全員任期制は完全に破綻した。
 組合のたたかいを勝利に導いた要因の一つは、給与差別を受けな がらも非任期を貫いた教員の存在があった。彼らは教育・研究をは じめとする教員としての職務は任期制への切り替えという外的強 制ではなく、自らを律することによって遂行すると決意し、それを 実践しきったのである。ある人は、任期制の押しつけに反対して、 誇り高くたたかい抜いた。またある人は、家族を守るため、雇い止 めの不安を抱える任期制を選択しなかった。いずれの非任期教員も 教育・研究、社会貢献、学内運営のすべてに力を尽くし、同僚の教 員とも協力し、十二分に大学 に貢献してきた。そのことは、業績評価においても、任期制教員と なんら変わることがなかった事実が証明している。こうして、彼ら は「全員任期制」という教員管理手法の誤りを、身をもって示した のである。

残された給与差別
 しかし、公立大学法人首都大学東京当局は、団体交渉を通じても、 新人事制度への切り替えにあたって、不当にもこの間の給与格差解 消を決断しなかった。完全に破綻した全員任期制の痕跡を残そうと いう人たちが、法人・大学内外に存在する証左である。
 ユネスコの高等教育教員の地位に関する勧告( 1997 年 11 月 11 日 第 25 回ユネスコ総会採択 )は、こう述べている。「高等教育教 員の雇用者は、効果的な教授、研究、学問及び地域社会における活 動に大いに役立ち並びに公平な及びいかなる差別もない雇用条件 を設定すべきである。」今回の法人の回答は、公立大学法人首都大 学東京が差別を容認する大学であることを内外に示したものである。
 首都大学東京労働組合は、「賃金差別解消」という組合要求を完全に実現できなかったことは遺憾であり、当局が差別を温存・容認 して恥じないことに懸念し、強い失望を表明する。

有期雇用職員の正規化
 法人固有職員制度についても、組合は大きな成果をあげてきた。
 国内の非正規雇用者は、1992 年から 2012 年の 20 年間で倍増し、 現在 2040 万人を超え、労働者の 38.2%となり、全労働者に占める 年収 300 万円以下の労働者は、40%を超えた。政府は、生涯派遣 を可能とするため労働者派遣法を改悪し、有期雇用労働者をさらに 増やそうとしている。
 こうした状況のなかで、2005 年には、すべて有期雇用であった 法人固有の職員は、組合の要求によって内部登用制度を創設、今年 度末で常勤契約職員制度を廃止させ、正規職員へと移行される。 2009 年 4 月から、内部登用制度によって、無期雇用となった法人固有職員は合計で 89 名となる。組合の要求によって、2008 年に 1 年前倒しで採用を開始した正規職員は、現在内部登用選考合格者を 含めて 177 名まで、増加した。

……以下,略……

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