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2015年01月13日

北洋銀頭取が学長選に口出し疑惑の道教大

My News Japan(2015.01.13)

 国立大学(独立大学法人)の学長選びに大企業の幹部が介入している――という話を耳にし、遅まきながら驚いたのは昨年暮れ、札幌を訪ねたときのことであった。北海道教育大の学長選挙をめぐる騒動である。
 ことの経緯は、およそ次のとおりである。

 2011年春、当時北海道教育大の学長だった本間謙二氏は、4年の任期をまもなく終えようとしていた。だれもが本間氏の退任を信じて疑わなかったところ、次期学長にも立候補すると言い出し、職員らを驚かせた。

 北海道教育大の規則によれば、4年の任期がすぎた学長の再任は1回限り、任期は2年だ。そして再任の場合は、教職員による意向を確認する投票をしなければならない。むろん、学長の権力乱用を防ぐための仕組みである。

 本間学長は再任を希望して立候補し、対抗馬として神田房行教授も立候補した。やがて意向投票が行われ、開票された。結果は、本間候補208票、神田候補250票。神田氏の圧勝だった。投票結果にしたがって神田教授が新学長になったのであれば、なんら問題はなかった。

 ところが、次に起きた事態に、学内は大騒ぎとなる。投票の結果を無視して「学長選考会議」に事実上一任するとの決断を本間学長がしたのだ。自ら選んだ委員で大方を占める「会議」に誰が次期学長になるべきかを決めさせる、というわけだ。「やらせ」といわれてもおかしくないだろう。

 そもそも学内の規則によれば、再任の場合は意向投票をやらなければならない、とある。それなのに、どうして投票結果を無視して「学長選考会議」に一任できるのか。奇妙な話だが、そのからくりが、2007年の規則変更にあった。

 「学長選考会議は、特に必要と認める場合、教育研究評議会の意見を聴取の上、さらに2年に限り再任させることができる」

 そういう内容の規定が増設されていたのだ。本間氏はこれを使い、次期学長の選考を学長選考会議にさせた。なぜ意向投票を無視する必要があるのか、理由の説明はなかった。

◇ 学長お好みの「学長選考会議」という茶番

 学長選考会議の結論は、火を見るより明らかだった。選挙結果を一顧だにせずに本間氏を学長に選んだ。選考理由も説明しないという密室ぶりだった。

 さらに2年後の2013年、本間学長は3度目の学長選に立候補した。やはり同様に「学長選考会議」の密室で再々任を決めた。現在8年目になる長期政権を手にした本間氏は、現在、意向投票そのものの廃止を画策しているという。

 権力への執着、そして民意を平気で無視するやり方は、まるでいまの安倍政権のミニチュアを見るようである。だが問題の本質は、本間氏個人というよりも、本間氏を支える者たちにあるだろう。

 北海道教育大の学長選考委員は16人。民間人は7人。問題の学長選挙があった2011年当時、この7委員のなかで特に力を持っているとみられるのが、高向厳氏だ。北洋銀行の代表取締役会長である。北洋銀行の大株主は北海道電力で4・47%の株を保有。いうまでもなく、北海道電力は、泊原発を抱える原発企業だ。

 学長選考会議だけではない。その後、北洋銀行は北海道教育大の役員にも食い込んだ。最新の役員名簿をたしかめたところ、中尾進・元常務取締役(現交洋不動産相談役)が同大学の監事になっていた。

 北海道電力を大株主に持つ銀行が北海道教育大の運営を担う。学長選びにも介入する。こんなことでは、原発政策に批判的な研究など、できっこないではないか。そのような危惧を筆者は持った。


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