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2015年04月13日

国旗国歌要請、大学の自主性に委ねよ

高知新聞社説(2015年04月12日)

 下村博文文部科学相が、国立大学に対し入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱を「要請する」考えがあることを示した。
 参院予算委員会で安倍晋三首相が、「税金によって(運営が)賄われていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって、正しく実施されるべきではないか」と答弁したことに関連し記者会見で明らかにした。政治が、大学の式典の中身にまで口を挟むのは問題があると言わざるを得ない。
 小中高校では学習指導要領に国旗掲揚、国歌斉唱の規定があるが、大学にはそうしたものがない。下村文科相も認め、会見で「お願いであり、する、しないは各大学の判断」と明言している。当然の考え方である。
 政治権力などの干渉を受けず、全構成員の意思に基づいて教育研究や管理に当たる「大学の自治」は、憲法が保障する「学問の自由」に不可欠な制度とされている。2006年改正の教育基本法でも、それまでなかった大学の条文が設けられ、「自主性、自律性その他の大学における教育?及(およ)び研究の特性が尊重されなければならない」としている。
 現に文科省によると、全国86の国立大学のうち、今春の卒業式で74大学が国旗を掲揚し、14大学が国歌を斉唱した。高知大は掲揚し、斉唱はしていない。いずれも各大学の判断であり、今後も自主性に委ねるべきである。
 国が「お願い」だと主張しても、いまの国立大学は「圧力」と受け止めかねない状況にある。
 04年の法人化以降、国は教育研究の基盤である運営費交付金を年々縮小し、競争原理を導入してきた。国立大学協会の集計によると、運営費交付金(予算額)は11年間で10・4%削減され、競争的資金を含めても4・7%減った。兵糧攻めへの恐怖は大きい。
 影響は国立大学にとどまらないだろう。公立・私立大学もほとんどが、交付税や助成金の形で実質的に国から支援を受けている。「税金によって賄われ」、少子化に伴い経営が厳しい状況に違いはない。圧力として拡大する懸念がある。
 下村文科相は会見で圧力を否定し、「強要ではない」と強調した。しかし、集団的自衛権行使容認をはじめ、安倍政権に見られる強引な政策展開からは不安は募る。注視し続ける必要がある。

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