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2015年04月18日

日本私大教連、北星学園大学と同大学非常勤講師への脅迫事件に関する声明

日本私大教連

北星学園大学と同大学非常勤講師への脅迫事件に関する声明

2015年4月10日 日本私大教連中央執行委員会

 従軍慰安婦に関する朝日新聞社の「誤報問題」に端を発した、北星学園大学非常勤講師(元朝日新聞記者)への匿名勢力による執拗な攻撃と人権侵害は今も続いています。昨年10月に容疑者が逮捕された後も、今年 2 月には入試で受験生に危害を加えるとの新たな脅迫が行われました。こうした状況のなか、卑劣な脅迫には屈しないという大学関係者の決意と努力により、同大学が無事入試日程を終え、新年度を迎えたことに、私たちはひとまずの安堵を覚えるものです。
 しかし事態は深刻です。昨年、関西の2大学では同様の脅迫行為により、元朝日新聞記者が採用を取り消され、また「自主退職」に追い込まれました。広島大学では従軍慰安婦に関する映像を用いた講義に対し、国会でのバッシングを含め陰に陽に執拗な攻撃が加えられました。これらは一部マスメ ディアも加担した「言論テロ」というべきものであり、到底看過できるものではありません。とりわけ先の侵略戦争に関わる歴史認識や憲法改正、辺野古の新基地建設や原発再稼働などをめぐり政治と市民が鋭く衝突する場面において、意にそぐわない言論・表現への暴力的な攻撃がネット空間から実社会に浸潤し、学問の自由や言論・表現の自由を脅かしつつあります。また、政権政党による報道機関への圧力や、過激テロ集団 ISIL による邦人惨殺事件に際し「非常時に政権批判すべきでない」と の高圧的キャンペーンの影響により、マスメディアに自粛や忖度の「空気」が広がりつつあります。
 こうした社会状況は、現政権の政治姿勢と深く関わって出現しています。安倍政権は発足以来、近隣諸国との緊張緩和の努力を怠たる一方、卑劣な言論攻撃や社会的弱者や外国籍の人々を標的とした ヘイトスピーチを放置し、言論の萎縮を利用して日本の軍事国家化などの政策を推進しています。特定秘密保護法制定の強行(2013年12月)、「武器輸出三原則」の廃棄(2014年4月)、集団的自衛権の行使を認める閣議決定(2014年7月)、「文民統制」を撤廃する防衛省設置法改正案の国会提出(2015年3月)などを矢継ぎ早に強行し、いままさに集団的自衛権行使を具体化する関連法令改正を強行すべく準備を進めています。
 しかし、言論・表現の自由への圧力を跳ねのけようという人々の声も大きく広がりつつあります。北星学園大学への脅迫事件をめぐっては、作家の池澤夏樹さんらが呼びかけ人となった「負けるな北星!の会」の活動等に励まされ、大学は同講師の雇用継続を決定し、脅迫に屈せず大学の自治を守る姿勢を貫きました。このことは、私たち大学関係者が団結と連帯を深め、卑劣な攻撃を跳ね返してい くことの大切さを示しています。
 私たちは、学問と教育の多様性と自由を担う私立大学に働く教職員として、現在の日本社会を覆っ ている憎悪と排除の連鎖と拡大を傍観することはできません。物言えぬ大学では、この国の将来を担う創造的な人間は育ちません。日本私大教連は、私立大学に自治と学問の自由を確立するために、不当な社会的圧力とたたかう決意をここに表明します。


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