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2015年05月07日

京都大学職員組合、声明「京都大学未払い賃金請求訴訟第一審判決について」

京都大学職員組合
 ∟●京都大学未払い賃金請求訴訟第一審判決について

2015 年5 月7 日

声明

京都大学未払い賃金請求訴訟第一審判決について

京都大学職員組合・原告団

 本日、京都地方裁判所第6 民事部は、京都大学職員組合の組合員ら115 名が組合の支援を受けて国立大学法人京都大学を提訴した未払い賃金請求事件において、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

 本件訴訟は、2012 年2 月29 日の国家公務員給与臨時特例法による同年4 月から2 年間の国家公務員の給与減額に乗じ、国が全国の国立大学法人に対して賃下げを要請したことを受け、被告法人において減額された賃金の支払いを原告が請求したものである。

 今般の不当判決は、あらゆる面において、私たち労働者の権利だけでなく国家としての日本の国際的信頼をも著しく傷つけるものである。

 そもそも、今回の賃下げは復興財源の確保を口実としたが、会計検査院が2013 年10 月31 日に公表した報告書「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」は、被災地と直接関係のない事業に振り向けられていた予算額が、復興特別会計のうち約3000 億円、また復興予算で造成された「全国向け事業に係る基金」のうち1 兆円以上に上ったとしている。

 被告法人においてはこの口実に従って国からの運営費交付金が削減されたが、資金面の余裕があり、賃下げを強行する必要性は皆無であった。

 国立大学法人法上、国立大学教職員は公務員ではなく、民間労働法制の適用を受ける。労働契約法9 条は、労使の合意のない労働条件の不利益変更を禁じており、10 条はその例外の要件として「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」ことを定める。法律上、この要件を充足したことの挙証責任は被告にある。ところが、被告は挙証責任を果たそうとすらしなかった。すなわち、被告における賃下げ率が、運営費交付金の減額が大きいほど賃金削減幅が小さくなるという、理解困難な計算方法によって決められていたことを認めた。準備書面等においては定期預金が210 億円あったとし、証人尋問では財務について供述できる者を証人とすることを拒否して、証人に「財務のことはわかりません」と証言させている。

 本判決は、被告に財源のあったことを認め、賃下げ率の算定方法が不合理であったことを認めながら、国の要請という国家権力からの介入があれば従わざるをえないことを実質的な請求棄却の理由としており、これでは、学問の自由や大学の自治という憲法上の権利は全くないがしろにされてしまう。

 また、法律上、国立大学法人教職員は公務員としての地位を奪われ、民間の労働者と同様に扱われるものとされているにもかかわらず、本判決によれば、民間の労働者であれば適用されるべき労働法による保護すらも受けられないこととなり、劣悪な地位に置かれたことになる。私たちは本日の不当判決に対して直ちに控訴するとともに、法治主義に反し基本的人権を侵害するこの事態について、広く国内外に問題提起する所存である。


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