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2015年05月11日

日本私大教連、声明「政府による国立大学への国旗・国歌「要請」方針に抗議する」

日本私大教連

(声明)政府による国立大学への国旗・国歌「要請」方針に抗議する

2015年5月8日
日本私立大学教職員連合中央執行委員会

 安倍総理大臣は2015年4月9日の参議院予算委員会で、国立大学における国旗・国歌の取り扱いについて、「税金によって賄われているということに鑑みれば新教育基本法の方針に則って正しく実施されるべき」との見解を示し、これを受けて下村博文文部科学大臣は「各大学で適切な対応が取られるよう要請していきたい」と答弁しました。下村大臣は翌日の記者会見でも「国立大学の学長が参加する会議等において要請することを検討している」と述べています。

 言うまでもなく国旗・国歌に対しどのような態度はとるかは個人の思想・良心の自由に関わる問題です。こと戦前戦中に「日章旗」「君が代」が国民統制と侵略戦争遂行に利用されたことにより、国の内外を問わずこれに抵抗を感じる市民が少なからず存在することは厳然たる事実です。そのため、国旗国歌法案の審議過程や、義務教育の現場への強制をめぐる国旗・国歌訴訟などにおいてさまざまな論争が行われ、それは今日においても本質的決着をみていません。

 今回の安倍総理の答弁は、教育基本法(2006年改正)の第2条第5項「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」を前提にしたものと思われますが、それを根拠に大学の入学式等で国旗掲揚・国歌斉唱を実施すべきとする主張はあまりに短絡的です。さらに、教育基本法の第7条第2項「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」という規定を全く無視し、税金を投入しているのだから政権方針に従うことが当然だと言わんばかりの答弁はきわめて乱暴です。とうてい容認することはできません。

 下村大臣は「要請」にすぎないから問題はないと弁明していますが、「税金投入」を盾にした「要請」が実質的圧力となることは明らかです。そしてその圧力はいずれ私立大学にも及ぶでしょう。大学という自由聞達に教育・研究を行うことを使命とする機関に対し、政府権力を行使して「国旗掲揚・国歌斉唱」を強要することは、「学問の自由」「思想信条の自由」並びに「大学の自治」の息の根を止めようとする暴挙です。 日本私大教連は、「学問の自由」「大学の自治」を担う教職員組合として、国立大学に対する国旗・国歌「要請」方針に対し断固抗議し、その撤回を強く求めます。


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