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2015年06月04日

東京私大教連、学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

東京私大教連
 ∟●学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

学生・若者を戦場に駆り出す「戦争法案」の廃案を求める声明

2015年5月29日
東京私大教連中央執行委員会

 安倍内閣は、5月 14 日に「国際平和支援法案」ならびに「平和安全法制整備法案」を閣議決定し、翌 15 日に国会に提出しました。これらは、昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定にもとづいて、アメリカが世界中で行う戦争に対し、自衛隊がいつでもどこでも支援・参加することを可能とする「戦争法案」にほかなりません。憲法9条のもとで戦後の日本が貫いてきた、海外で再び戦争をしないという外交の原則を覆す暴挙であり、私たちは断じて容認できません。

 「国際平和支援法案」は、新たな立法なしに多国籍軍等の戦争を自衛隊が随時支援できるようにするための恒久法です。また、「平和安全法制整備法案」は「存立危機事態」の定義を定め、日本が他国の攻撃を受けていなくても戦争に参加する集団的自衛権行使を可能とする法律です。周辺事態法などによる地理的制約も撤廃され、PKO 活動の際の「駆けつけ警護」も認められ、武器使用要件も緩和されるなど、自衛隊の活動内容は従来とは比較にならないほど大幅に拡大します。安倍首相は閣議決定後の記者会見で、自衛隊の任務拡大に伴う人命リスクについて、「自衛隊発足以来、1800 名が殉職している。災害においても危険な任務が伴う」と論理をすり替え、さらに 5 月 26 日の衆議院本会議では自衛隊員の「リスクは残る」と答弁し、戦後初の「戦死者」が出るリスクを否定しませんでした。

 日本国民は戦後、絶えず「戦争する国」であった戦前国家への痛切な悔悟に立ち、「平和のうちに生存する権利」の確立をめざして、憲法9条のもとで平和国家の道を歩み続けてきました。しかし、5月20 日の党首討論における安倍首相の「ポツダム宣言をつまびらかには読んでいない」という発言からも明らかなように、今回の法案は過去の日本の戦争が間違った侵略戦争であったと認めない歴史認識に淵源しています。このような歴史認識は、極東軍事裁判の受諾を明記したサンフランシスコ講和条約そのものを否定し、日本が国際社会から孤立することにつながります。外務省が発行するパンフレット『日本の安全保障政策―積極的平和主義』は、日本への具体的な「脅威」として北朝鮮と中国を挙げていますが、これらの近隣諸国に対してこそ公式・非公式のパイプを通じたあらゆる外交努力を積み重ねていくべきであり、そのためには、日本政府が歪みのない歴史認識を表明することで、「脅威」を緩和していくことが先決です。戦後 70 年談話について、侵略戦争と植民地支配への反省と謝罪を盛り込まないと表明している安倍政権が強行成立させようとしている「戦争法案」こそ、日本の「平和と「安全」に対する最大の「脅威」にほかなりません。

 新聞各社の世論調査でも、法案の今国会成立に対しては「反対55%・賛成25%」(日経)、「反対54%・賛成32%」(毎日)と、国民の圧倒的多数は反対しています。しかし、こうした国民世論に反して、安倍首相は閣議決定に先立って訪米し、4月29日の米議会演説で「夏までに必ず成立させる」と表明しました。国会審議どころか閣議決定さえ経ていない法案の成立を外国議会に約束するなど、議会制民主主義を愚弄し、日本国民の主権を他国に売り渡す行為として厳しく断罪されなければなりません。私たち私立大学教職員は、日本が再び戦争国家への道を歩み、学生・若者を戦場に送り出すことを容認することはできません。私たちは、今回の「戦争法案」を廃案とするよう強く求めます。また、広範な市民・団体との連帯と共同の上に立ち、平和憲法の理念を徹底して擁護する運動に全力で取り組むことを表明します。

以 上

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