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2015年06月08日

専修大職員、「労災受給者、安心して療養できなくなる」 解雇訴訟差し戻しで原告、最高裁を批判

産経(2015.6.8)

「労災受給者、安心して療養できなくなる」 解雇訴訟差し戻しで原告、最高裁を批判

 労災保険を受給している労働者を、使用者側が打ち切り補償すれば解雇可能とした8日の最高裁判決。専修大元職員の男性(40)は判決後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「金さえ払えば労災で療養中の労働者を解雇できるという判決。安心して労災申請や療養専念ができなくなる」と判決への疑問を訴えた。

 男性は今でも、首や肩などを長時間動かすことが難しく、電話での長時間通話やパソコン使用が困難という。男性は「完治していない状態で、再雇用先があるとは考えられない」と述べ、解雇有効とされた場合の不安をのぞかせる。

 男性の代理人の小部正治弁護士は、心の問題なども含め、労災は簡単に治癒しないと指摘。「『金を支払うから辞めてくれ』という企業が増えることを危惧している」と判決による悪影響を指摘する。

 ただ、最高裁は今回の解雇が正当だったのかについては、判断を示していない。小部弁護士は「大学はリハビリしながらの復帰を認めなかった。そうした大学の姿勢が認められるとは考えられない」と差し戻された高裁の判断に期待を込めた。

 専修大は「主張が認められたと理解している。引き続き適切に対応していく」とコメントを発表した。

労災保険受給の労働者「打ち切り補償払えば解雇可能」の初判断 最高裁が高裁に破棄差し戻し

産経(2015.6.8)

 労災認定を受け、国から労災保険の給付を受けている労働者について、使用者が一定の補償金を支払って解雇できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は8日、「労働者が労災保険を受給していれば、使用者が療養補償をしていない場合でも雇用打ち切りの補償金を支払って解雇できる」との初判断を示した。

 その上で、解雇無効とした2審東京高裁判決を破棄、「正当な解雇か審理を尽くす必要がある」と高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。

 労働基準法では、業務上の傷病で療養中の労働者を原則、解雇できないと規定。一方で使用者側が療養補償を行い、療養開始後3年を経過しても治らなければ、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払い解雇できるとしている。労災保険と療養補償を同質と見ることができるかが争点。

 訴えているのは専修大元職員の男性(40)。男性は肩などの難病「頸肩腕(けいけんわん)症候群」を発症して長期欠勤、平成19年に労災認定を受け労災保険を受給している。大学側は療養補償していないが約1630万円の打ち切り補償を支払い23年10月に解雇した。

 同小法廷は、「労災保険の給付は使用者側の療養補償に代わるものとして実質的に給付されている」と指摘。労災保険と療養補償が同質視できるとして、解雇は可能と結論づけた。

 ただ、こうしたケースでも、労働者の復帰可能性などを無視した解雇の場合、解雇権乱用にあたる可能性がある。


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