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2015年06月16日

国立大交付金 地域貢献や世界水準研究で重点配分

NHK(6月15日)

国立大学に配分する運営費交付金について文部科学省の有識者会議は、地域に貢献する大学や世界トップ水準の研究を目指す大学など、国立大学を3つの枠組みに分類し、取り組みや実績が高く評価された大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
国立大学は平成16年度に法人化されて以降、6年ごとに中期目標を定め、その達成状況の評価などに応じて国から運営費交付金が配分されています。来年度から6年間の配分方法を検討してきた文部科学省の有識者会議は、15日、改革や機能強化に積極的に取り組む大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
具体的には、国立大学を人材育成や研究を通して地域に貢献する大学、特定の分野で優れた教育や研究の拠点となる大学、それに世界トップ水準の教育や研究を目指す大学の3つの枠組みに分類し、大学はいずれか1つを選んで取り組むとしています。そのうえで、取り組みの状況や実績を有識者の会議が評価し、翌年度の交付金の配分に反映させるということです。中期目標の策定にあたっては文部科学省が8日、国立大学に通知を出し、教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院については廃止やほかの分野への転換に努めることなど、組織や業務全般を見直すよう求めています。各大学はこうした方針を踏まえて、今月中に中期目標の素案を提出することになっています。

国立大学で進む学部再編

全国に86ある国立大学は法人化されて以降、特色ある大学作りや組織や業務の改革が常に求められてきました。グローバル化や地域の課題解決に取り組もうと学部を再編する動きが広がっていて、平成24年度から今年度までに5つの学部が新設されたほか、来年度だけで8学部の新設が申請されています。文部科学省によりますと、法人化されて以降、短期間にこれほど新たな学部が設置されることはないということです。
このうち、徳島大学は地域の農林水産業を支援する人材を育成しようと、来年度、「生物資源産業学部」を新設します。経営学の基礎なども学ぶことができ、いわゆる6次産業化にも対応したいとしています。また、宇都宮大学が人口減少など地域の課題に取り組む専門知識を学ぶ「地域デザイン科学部」を、福井大学がグローバル化や地域の活性化に貢献する人材を育成しようと「国際地域学部」を、それぞれ来年度から新たに設置する予定です。
学部の新設ではありませんが、弘前大学は理工学や農学系の人材育成を強化するとして、来年度、大規模な組織改編を実施する方針です。理工学部に新たな学科を設けるなど、2つの理系学部で定員を90人増やす一方、文系の2つの学部では150人削減します。人文学部の3つの課程を2つに集約するほか、教育学部で教員免許の取得を義務づけない課程を廃止するとしています。

「教育のすそ野を広げ長期的な視点で」

今回の運営費交付金の配分方法を検討した会議の委員の1人で、東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授は「大学が社会のニーズに十分対応していないという意見が一部に強くあり、交付金の配分で改革を促そうという議論が行われてきた。大学間の競争が強まることになるが、東京と地方とでは条件が一定ではなく、格差が広がりすぎないよう配慮が必要だ」と話しています。
また、中期目標の策定にあたって、文部科学省が教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院の見直しを求めたことについては、「教員養成や人文社会科学系は人件費が高く高コスト構造となっており、効率化したいというねらいがあると思うが、教養教育は大学の大事な役割のひとつで、理系の学生にとっても人文社会系の知識やものの考え方は重要だ。グローバル化が進むなか、世界の最先端で争える学生を養成していかなければいけないのは事実だが、時代が変わると最先端が最先端でなくなっていく可能性もあるわけで、大学教育のすそ野を広げ長期的な視点で考える必要がある」と指摘しています。


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