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2015年06月20日

大学評価学会、声明「『安全保障関連法案』の撤回を求めます」

大学評価学会
 ∟●声明「『安全保障関連法案』の撤回を求めます」

大学評価学会の代表理事等有志は「安全保障関連法案」の撤回を求めます

2015年6月19日

 大学評価学会(以下、学会)は2004年3月に発足して以降、日本の大学(高等教育)の発展を願うとともに、学生(若者)と大学教職員の発達保障を願って、大学評価に関する学術的な営みを続けてきました(大学評価学会設立大会「大学評価京都宣言=もう一つの『大学評価』宣言」http://www.unive.jp/)。国会では現在、「安全保障関連法案」に関する審議が行われていますが、わたしたちの学会の立脚点からしてこの法案の内容および審議は大きな問題を有していると考えます。そこで、以下のような見解を表明し、日本の社会の民主的な発展と日本の大学(高等教育)の社会的な責任の発揮に向けた営みを続けていく決意を表明します。

 安全保障は軍事的なパワーに依るべきではなく、市民社会の合意にもとづいて平和的な手段によって実現されるべきものです。しかるに現在、政府によってめざされている安全保障は軍事力に依拠するものであり、国際的に緊張感をいっそう高めるものです。第2次世界大戦の反省にたって、日本国憲法は、その前文で「・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言し、また第9条は「・・・武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と明記しました。日本国憲法は、戦後の国際社会において先駆的な役割を果たしてきました。それは、ノーベル平和賞の候補にあがるほど画期的な意味を有しているものです。

 基本的な人権の一つである学習権(教育権)は、平和な社会でこそ可能になるものです。第2次世界大戦後の日本がさまざまな課題を抱えつつも発展をとげてきた原動力の一つは、教育の力に他ならないと考えます。これからの日本社会の発展にとっても、教育は引き続き大きな力を発揮すると考えます。その際に、日本国憲法の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」非戦・平和の精神は、重要な指針を与えてくれるものと確信します。

 ところが、政府が提案する「安全保障関連法案」が立脚するのは、以上のようなこととは全く異なります。学問の自由や教育の自由は大きく制約され、軍事(戦争)のための学問に資することを求められかねません。この動きは、特定秘密保護法制定以来すでに軍産学共同(協同)による研究・教育への圧迫として顕在化しています。さらには、多様な国籍をもち、思想信条や信仰の異なる人々が「学問の自由」の下に集う(国立)大学に対して、式典等での国旗掲揚・国歌斉唱を強く要請する事態にまで至っています。わたしたちの研究や教育は、真理の探究、平和で民主的な社会、国際理解の実現をめざしたものであり、政府が提案する「安全保障関連法案」が目ざすものとは根本的に異なります。

 わたしたちは高等教育機関において教育や研究に携わっています。70年以前の日本の社会は、未来ある若者たちを戦場に送り、戦死者として迎えたことを想起しなければなりません。「安全保障関連法制」が実現されれば、わたしたちの身近にいる学生たち、若者たちが戦場に銃をとって向かい、戦死者として弔われることとなる恐れさえあるのです。

 以上のようなことから、わたしたち代表理事等有志は学問の自由・教育の自由、そして未来ある若者の発達保障、さらには21世紀の平和で持続可能な国際社会の発展に向けて、政府が提案する「安全保障関連法案」に反対するとともに、会期延長は行わず法案を速やかに撤回し廃案とすることを強く求めるものです。

【植田健男(代表理事)/重本直利(代表理事)/井上千一(副代表理事)/岡山茂(副 代表理事)/日永龍彦(副代表理事)/渡部昭男(事務局長)/細川孝(事務局次長)】

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