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2015年07月08日

文科省、競争的研究費改革議論の中間取りまとめ-間接経費30%を設定、研究基盤強化

日刊工業新聞(2015年07月07日)

 文部科学省は競争的研究費改革の議論の中間取りまとめを行い、「文科省の全ての競争的研究費で30%の間接経費を付ける」と明記した。間接費の増額に伴って研究インフラが充実し、研究が効果的に行われることが見込まれる。また、研究代表者の人件費を直接経費から出す仕組みも打ち出した。2016年度からの第5期科学技術基本計画と併せ、年内に最終結論を出す。(編集委員・山本佳世子)

 「競争的研究費」は公募によって競争的に獲得する事業の研究費を指す。このうち研究そのものや任期付き研究員の雇用といった研究用途に使うのが「直接経費」。一方、光熱費や特許戦略などで研究を支える大学の業務に手当てするのが「間接経費」。今回、直接経費の30%分を手当てすることが固まった。文科省が新規採択する大学の事業について、16年度から実施する見通しだ。
 間接経費は、民主党政権時代の「事業仕分け」で多くが廃止となり、一部事業に限定された。研究型の国立大学は国の補助金である運営費交付金の削減に対応し、競争的資金を増やすことで補ってきた。ただ、直接経費は使途が決まっており、これが増えたとしても研究インフラの充実などに使える分はなく、大学側は「本部の負担が重い」と訴えていた。それだけに大学全体の研究基盤強化につながる間接経費の増加は朗報だ。
 もっとも文科省では科学研究費助成事業、戦略的創造研究推進事業での30%をはじめ、めぼしい事業には間接経費を措置済みだ。「間接経費としてすでに1000億円を拠出しており、『全事業が対象』となって増えるのは100億円ほど」(研究振興局・基礎研究振興課)にすぎない。
 むしろポイントとなるのは、他省庁の研究開発支援事業に浸透できるかどうか。間接経費が民主党政権時代の事業仕分けで300億円から数億円に減額されたままの機関もあるからだ。今回の動きを呼び水に、どれだけ広がるかと大学関係者は注視する。


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