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2015年07月08日

専修大学北海道短大不当解雇事件、8教員の訴訟 札幌高裁の判決について

■「不当解雇された専修大学北海道短大教員をさえる会」
 ∟●支える会ニュース第15号

8教員の訴訟 札幌高裁の判決について

弁護士 池田賢太

はじめに

 振り返ってみると、8教員訴訟は平成24年4月13日に札幌地裁に提訴、平成25年12月2日に判決言渡し。約1年半の審理を経て、48ページの判決文でした。
 不当判決を受け、平成25年12月13日に札幌高裁へ控訴、平成27年4月24日に判決言渡し。財政論や解雇回避努力について更なる主張立証を積み重ね、やっぱり約1年半の審理を経て、何ページの判決だつたと思いますか?わずかに6ページです。そのうち、札幌高裁の判断部分は2ページしかありませんでした。
 札幌高裁の判断は、次のように始まります。
 「当裁判所も、控訴人らの請求をいずれも棄却するのが相当であると判断するが、その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決書『事実及び理由』 の欄の『第3 当裁判所の判断』に記載のとおりであるから、これを引用する。」
 つまり、不当な地裁判決をそのまま鵜呑みにしてしまったのです。

2 財政論に踏み込まない

 私たちは、高裁での審理に当たり、雇用契約の当事者である学校法人専修大学の極めて健全な財政状態について、会計学の専門家に鑑定を依頼し、明らかにしてきました。私立学校法、学校法人会計基準等に照らし、しかも過去10年にわたつて、学校法人専修大学が盤石の財政状態を保ち続けている事を明らかにしました。しかし、札幌高裁はこの専門家の鑑定意見書を見向きもしませんでした。
 札幌高裁は、次のように述べて、意見書を無視したのです。
 「意見書は、北海道短大は被控訴人の一事業部門であるにすぎないとして、学校法人としての被控訴人の財政を分析の対象とし、資金ショートが生じない限り整理解雇が認められないとの前提に立って作成され、このような前提のもとに被控訴人の支払能力を重視しないとしているが、そもそも、上記の資金ショートが生じない限り整理解雇が認められないとの前提に立つことはできない (から) …その意見を採用することはできない。」
 つまり、札幌高裁は、 「鑑定意見書が偏頗な考え方に立つものであり、そんな偏頗な考え方で作られた鑑定書に書かれている意見など採用できません」と言ってのけているのです。確かに、鑑定意見書には、鑑定人の意見が記載されています。しかし、そこに記載された意見と採用されている分析手法との間に何の関係もありません。現に、判決は、分析手法の妥当性に一言も触れることができていません。鑑定人の分析手法は、極めて合理的で、学校法人会計基準に (しかも改正後の基準にも) 適合した分析手法だからです。札幌高裁判決は、まさに証拠に対する評価を誤り、事実を正確にみることができなかったということを露呈しています。高裁判決もまた、極めて不当な判決だつたということができるでしょう。

3 8人全員上告!最高裁へ!

 原告団・弁護団は、この不当判決を受けて、議論を重ねました。そして、この不当な判決を許すことはできず、また、今後の大学教員の雇用問題に悪しき前例を作ることはできないと、上告を決意しました。皆さまのこれまで以上の物心両面でのご支援を、重ねてお願いいたします。

(原告団代理人弁護士)

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