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2015年07月12日

大学自治への政治介入「多様な価値観 尊重を」

河北新報(2015年07月11日)

◎国立大学協会長 里見進・東北大総長に聞く

 国立大学運営交付金の増減をちらつかせて安倍政権が、大学自治への政治介入を強めようとしている。この事態を最高学府のトップに立つ里見進国立大学協会長(東北大総長)はどう受け止めているのか、聞いた。(聞き手は報道部・野内貴史)
 -政府内で議論されている運営交付金の重点配分などの国立大改革を、どう受け止めますか。

予算減に疑問

 「大学は今、少子化の進展、教育にかける国家予算の減少という問題に直面している。国立大の数や規模は現状のままでいいのかどうか、厳しく問われる時代だ」
 「だが、財政難を理由に教育予算を減らせば国の力は弱くなる。高等教育にかかる予算を減らしていいのだろうか」
 -成果主義に傾く文部科学省は、人材育成につながらない人文社会系の学部廃止や転換を求める通知を出しました。

人が育つ要素

 「人文社会系の素養がなければ国際的なリーダーにはなれない。非常に大事な学問だ。ただ、古い学問体系を縦割りで教えてきた手法の見直しを求めるというメッセージなら十分納得できる」
 -先日の国立大学長会議で下村博文文部科学相が入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱を要請し、波紋が広がっています。
 「それは各大学が決めること。多様な価値観を持った人たちがたくさんいるというところに人の育つ要素がある。ときには権威に対して批判的なことを言うのも大学の役割だ。各大学の判断を尊重してほしい」
 「東北大では国旗の掲揚はしているが、国歌の斉唱はない。そのまま続けようと思っている」
 -本土復帰前の沖縄から国費留学生として東北大に入学した自身の思いは?

方法いろいろ

 「父が事業に失敗し、大学進学など望めなかった私にとって、国費留学制度は本当にうれしかった。国にすごく感謝しているし、国を愛している。ただ、それは国歌や国旗に向ける姿勢で象徴されるものではない。国を愛する気持ちを表明する仕方はいろいろあっていい」
 「私も留学生だった。お金の心配なく日本で学ばせてもらったという留学生をたくさんつくりたい。親日国を世界中につくる安上がりの戦略と言えるのではないか」

<さとみ・すすむ>東北大医学部卒。95年医学部教授。04年東北大病院長。12年から東北大総長。14年11月国立大学協会長に就き、ことし6月に再任。67歳。那覇市出身。


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