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2015年08月05日

安保法案に反対する高知の大学人声明

安保法案に反対する高知の大学人声明

安保法案に反対する高知の大学人声明

「自由は土佐の山間より出づ」という言葉通り、高知は自由民権運動発祥の地です。この地の先人たちは、近代日本において個人の自由を保障し、民主的な政府を設立することを目指して行動しました。しかしながら、今国会における安保法案の審議は、憲法と民意を無視し、開かれた自由な議論をないがしろにするものであり、先人たちが目指した政府の姿を真っ向から否定するものです。私たちは、次の理由から安保法案に反対します。

1、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更は、立憲主義を壊します

 昨年7月、安倍政権は憲法解釈を変更し、憲法9条の下で個別的自衛権だけでなく集団的自衛権も行使できる、と宣言しました。これにより、日本自身が攻撃されていない場合でも、他国間の戦争に参加することが可能になります。しかし、このような憲法の解釈は条文から大きく逸脱しています。
 民主的に選ばれた国家権力も、ときには政治を誤ることがあります。だからこそ、国家権力を憲法によって縛って暴走を防ぐ立憲主義という仕組みが必要なのです。したがって、国家権力が自分で勝手に憲法を緩めてはならず、今回のように限界を越えて憲法解釈を変更することは、立憲主義を壊します。

2、説明と議論が尽くされないまま法案を強行することは、民主主義に反します

 今回の安保法案は、日本の平和に関する重要な内容を含んでいますし、量も膨大です。国会では、審議を重ねるほどに法案の問題点が浮かび上がってきています。それに対し、政府はまともな回答をほとんど示せていません。市民の不安は解消できず、世論調査でも「議論が尽くされていない」「今国会で成立させるべきではない」という回答が多数を占めています。
 選挙で選ばれた国会だからといって、何を決めてもよいわけではありません。とりわけ、市民の理解が得られないまま平和の根幹にかかわる法案を押し通すことは、民主主義に反します。

「自由は取る可(べ)きものなり、貰(もら)う可き品に非ず」(中江兆民)。先人たちは、互いの意見の違いを尊重し、自由闊達な議論を大切にしました。わたしたち高知の大学の教職員、学生、卒業生には、先人たちの理想を学び、現実社会を見つめ、知を探求することを通じて社会に貢献する責務があるのではないでしょうか。だからこそ、この事態を目の前にして、もはや沈黙することはできません。
 わたしたちは、安保法案をすみやかに廃案にすることを求めます。

2015年8月3日 声明呼びかけ人一同

声明呼びかけ人(五十音順)

岩佐和幸(高知大学人文学部教授)、岩田裕(高知大学名誉教授)、内田純一(高知大学地域協働学部教授)、岡田健一郎(高知大学人文学部准教授)、岡本博公(同志社大学名誉教授、高知工科大学マネジメント学部教授)、小幡尚(高知大学人文学部教授)、加藤誠之(高知大学教育学部准教授)、霜田博史(高知大学人文学部准教授)、鈴木堯士(高知大学名誉教授)、田中きよむ(高知県立大学社会福祉学部教授)、種田耕二(高知大学名誉教授)、中道一心(高知大学人文学部准教授)、中村哲也(高知大学地域協働学部准教授)、根小田渡(高知大学名誉教授)、原崎道彦(高知大学教育学部教授)、福田善乙(高知短期大学名誉教授)、牧田寛(高知工科大学大学院工学研究科助教)、松尾亘孝(高知大学名誉教授、高知学園短期大学名誉教授)、松永健二(高知大学名誉教授)、峯一朗(高知大学理学部准教授)、村瀬儀祐(高知大学名誉教授、高知工科大学名誉教授)、森明香(高知大学地域連携推進センター助教)、吉尾寛(高知大学人文学部教授)


「安保法案に反対」 高知の大学教授らが声明

高知新聞(2015年08月04日)

 参院で審議されている安全保障関連法案に対し、高知県内の大学教授らが8月3日、「市民の理解が得られないまま平和の根幹に関わる法案を押し通すことは民主主義に反する」などとして、「法案に反対する高知の大学人声明」を出した。

 声明は、高知大学や高知工科大学など県内五つの大学、短期大学の教授ら23人が呼び掛けた。

 「安保法案の審議は憲法と民意を無視し、開かれた自由な議論をないがしろにするものだ」と指摘。その上で、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更は立憲主義を壊す▽説明と議論が尽くされないまま法案を強行することは民主主義に反する―とし、「この事態を目の前にして沈黙することはできない」と訴えている。

 この日、呼び掛け人のうち14人が高知市曙町2丁目の高知大学教職員組合室で記者会見し、高知大学の小幡尚教授(日本近代史)は「安倍政権の説明は、賛成反対以前に何を言っているか分からない。憲法どころか言葉すら尊重していない」と訴えた。高知大学の岡田健一郎准教授(憲法)は「高知は自由民権運動発祥の地で、自由な議論を大事にしてきた。県民が法案をよく理解してもらえるきっかけになれば」と語った。

 今後、インターネットを通して賛同者を募るという。

 安保法案をめぐっては、東京大学や京都大学など全国の各大学でも、教職員らが反対声明を出す動きが広がっている。


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