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2015年08月06日

滋賀大学人有志の会、「安全保障関連法案の撤回・廃案を求める声明」

安全保障関連法案に反対する滋賀大学人有志の会

安全保障関連法案の撤回・廃案を求める声明


安全保障関連法案に反対する滋賀大学人有志の会


私たち滋賀大学人有志の会は、学問の自由と良識の名のもとに、戦争放棄を定めた日本国憲法第9条に違反し、立憲主義を否定する安全保障関連法案およびそれを支える稚拙な法解釈、そして民主主義を否定する数の力による強行採決を認めず、この法案の速やかな撤回と廃案を要求します。

滋賀大学彦根キャンパスにはかつて、「軍事教練」を行うために「武器庫」が設けられていました。アジア・太平洋戦争においては、このキャンパスで学んだ学生が、武器を持って戦場に赴き、彼らのなかに生きて郷里に帰れなかった者がいたことを、いま本学にあって私たちは痛恨と慚愧の念とともに、再び学舎と武力、学徒と武器とをかかわらせない決意をあらたにします。
2014年7月1日、安倍政権は憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行いました。そして2015年5月14日には安全保障関連法案を閣議決定し、7月15日に衆議院特別委員会で強行採決、翌16日にも再度の強行採決によって衆議院本会議を通過させるに至りました。現在、法案の審議は参議院へと移されています。
この法案は、ほとんどの憲法学者が違憲であると主張している通り、戦争の放棄を定めた日本国憲法第9条に明白に違反するものです。安倍政権は民意を問うことをせずに、解釈改憲といった姑息な手段によるすり抜けを図りながら、違憲である法制を強権的に成立させようとしています。これは明白な立憲主義の否定です。
各種メディアで報じられているように、大多数の国民が「政府の説明は不十分」と感じ、首相自らも「理解が進んでいない」としつつも、数の力で押し切り強行採決したことは、民主主義の否定にほかなりません。
また、この法案はアメリカ合衆国に追随して自衛隊が戦争に参加する道を大きく開くものであり、自衛隊員の生命をこれまでにない危機にさらすものです。政府は「後方支援であり、安全である」と繰り返し説明しますが、戦争にあっては兵站が真っ先に攻撃目標になるのは歴史的に見て明らかであり、戦場に安全地帯など存在しません。自衛隊員以外の人びとにとっても、報復やテロ行為の標的となる危険性を飛躍的に高めます。
そして、この法案が成立するならば、国際社会における平和国家としての日本国の信頼は完全に失墜することにもなります。とくに東アジア諸国との緊張は、極度に高まることとなるでしょう。東アジアにおける「抑止力」を口実として、法案への支持を訴えようとする論調に対しては、国際紛争は平和的手段で解決することが国連加盟国の義務であり、現代国際法の原則であることが想起されるべきです。軍事力の増強と軍事同盟の強化による「恫喝」に依存する姿勢は、対話の契機を失わせるばかりであり、結局は戦争の危険性を高めることにしかなりません。
私たちは、立憲主義、民主主義、平和主義を踏みにじり、戦争によって他国の人々を殺し、私たち自身が殺されることに意を払わない安倍政権に断固として抗議します。とくに私たちは大学人として、戦争が起こる際に、最も被害を蒙る恐れがある若い人たちの未来を守るために、いま声を上げる必要があると考えます。

2015年8月4日
安全保障関連法案に反対する滋賀大学人有志の会


賛同者
青柳周一、阿知羅隆雄、阿部安成、市川智史、宇佐美英機、菊地利奈、黒田吉孝
柴田淳郎、白石恵理子、須永知彦、武永淳、中野桂、坂野鉄也、藤岡俊博、渡邊暁彦

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