研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2015年08月13日

大阪府立大学教員有志、安保法制関連法案に反対する声明

安保法制関連法案に反対する大阪府立大学教員有志の声明

安保法制関連法案に反対する大阪府立大学教員有志の声明

夢に見た 美しいくに
夢に見た 勇ましいくに
夢にまで見た 誇らかなくに
目覚めれば 廃墟。

2014 年7月に第2次安倍内閣は、憲法上違憲の疑念が強く、なおかつ歴代内閣が否定しつづけてきた集団的自衛権の行使を、憲法改正という手続きをへずに閣議決定のみで容認しました。たとえ個別的自衛権であっても、国権の発動を厳しく制限してきたのが日本国憲法であり、戦後日本の枢要な国家原則でした。

国家の基本原則は、憲法によって一政権を拘束こそすれ、一政権が自らの解釈だけで自在に運用できるものではありません。当然それは、総選挙の結果によってでさえ変更できないものです。主権者の意思に直接問う、つまり憲法を改正することが最低限不可欠の要件になります。しかも政府は、今まさにそれを法案化しようとしています。その意味でこの法案は、主権者である国民の意思を無視するものです。主権在民は人類が長い歴史的な闘争を積み上げて獲得した「人類普遍の原理」であり、そのことは日本国憲法の精神を表現した前文にも明記されているとおりです。

振り返れば人類は長きにわたって、大いなる逡巡を抱きながらも国家の存在意義を認めつつ、他方で国家権力をいかに制限するか、そのパラドキシカルな工夫を重ねる努力を続けてきました。人類の知恵として誇りうるものがあるとすれば、他ならぬ人類自身が自らの必要上作りあげた国家の権力を制限し濫用させないようにするため、「法の支配」に磨きをかけてきたことではないでしょうか。これこそが文明の証なのです。

その努力の足跡は800 年にもわたって人類史に刻まれており、その蓄積のうえに地球上に憲法が制定されてきました。日本も例外ではありません。19 世紀末にできた最初の日本の憲法は、君主による統治権を前提にしたものであるにせよ、西欧モデルに準じた立憲主義的原理を含んだものですし、20 世紀中葉にできた憲法は日本だけでも約310 万人もの犠牲者を出して作られた、主権在民を前提とする近代立憲主義的原理を包含したものです。いずれも歴史に根ざし、また世界に準拠した憲法でした。

その憲法に反してこの法案が成立すれば、日本国は地球の裏側においてでさえ「自衛権」の行使を可能とする国家原則を新たに持つことになります。これが日本の国家原則と憲法に対する重大な違反にあたるのは言うまでもありません。そして何よりも、そのような法案を政府が合憲だと解釈してしまうのですから、もはやこの国では憲法の存在は意味を持たないと言っても過言ではないでしょう。これは憲法の存立根拠を大きく揺るがす行為であり、近代立憲主義を破壊しかねない行為であることは明白です。

安保法制を正当化するために、政府は憲法13 条の幸福追求権を根拠にしていますが、憲法13 条はあくまで「すべて国民は、個人として尊重される」というのが基本です。個人としての「国民」の幸福追求を口実に国家が同盟国のために武力を発動させることは、「個人の尊重」と「国家の尊重」を暴力的に同一化させる所為であり、国家を民主的に運営する主体でありながら、それでもなお国家から自由であることを保障されるはずの個人としての国民の権利を侵害するものです。これは、主権在民下での民主主義の根幹を空洞化させるものです。

以上のとおり、わたしたち大阪府立大学教員有志は、人類とともに日本が歴史のなかで獲得してきた主権在民・立憲主義・民主主義に背馳する安保法制関連法案に反対し、その法案の廃案を強く求めます。

2015 年8月6日

安保法制関連法案に反対する大阪府立大学教員有志

|