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2015年08月20日

大阪歴史学会、「安全保障関連法案」の採決の強行に抗議し、その廃案を求める委員会声明」

大阪歴史学会

「安全保障関連法案」の採決の強行に抗議し、その廃案を求める委員会声明(2015.7.27)

 去る7月16日、衆議院本会議はいわゆる「安全保障関連法案」を強行採決した。しかし「安全保障関連法案」は、日本国憲法下では認められない集団的自衛権の行使に道を開くものであり、私たちはこのような法案が成立することを許すことができない。

 日本国憲法第九条は、戦争を含む武力による威嚇や行使を行わないことを定めており、日本が集団的自衛権を行使できないことは自明であって、戦後の歴代内閣もそのことを繰り返し表明してきた。ところが2012年12月に成立した安倍晋三内閣は、2014年7月1日、集団的自衛権の行使が容認されるとする閣議決定を行った。現在、審議が進められている「安全保障関連法案」は、すでに多くの憲法学者・法曹関係者が指摘しているように、明らかに憲法解釈の許容範囲を逸脱している。

 あらためて述べるまでもなく、憲法とは「国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(日本国憲法第98条)。集団的自衛権の行使を可能とする「安全保障法案」は、日本国憲法に反するものであり、そのような法案をあくまでも「合憲」と主張する現政権もまた、国務大臣や国会議員に課せられた「憲法を尊重し擁護する義務」(同第99条)を放棄しているといわざるをえない。

 戦後日本の歴史学は、日本のみならずアジア・太平洋地域の多くの民衆に未曽有の惨禍をもたらしたアジア・太平洋戦争と、このような破局を招いた大日本帝国の歴史に対する痛切な反省に立脚し、平和と民主主義の理念を共通の基盤としてきた。しかし「安全保障関連法案」は、戦後70年にわたり守られてきた「不戦」という世界に誇るべき歴史にピリオドを打ち、日本の若者を戦地に送りだすことを可能にしようとするものである。また、憲法に反する「安全保障法案」が成立することは、日本国憲法が憲法である意義を失うことを意味し、民主主義国家の根幹である立憲主義そのものが危機に瀕する。

 以上の理由により、私たちは、歴史学研究の学術団体として、衆議院における「安全保障関連法案」の強行採決に抗議するとともに、その廃案を強く求めるものである。


 2015年7月27日

大阪歴史学会委員会

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