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2015年08月23日

室蘭工業大学教職員有志、安全保障関連法案の即時廃案を強く求める声明

安全保障関連法案の即時廃案を強く求める室蘭工業大学教職員有志による声明

安全保障関連法案の即時廃案を強く求める室蘭工業大学教職員有志による声明

 2014年7月1日。私たちはこの日をけっして忘れることはないでしょう。
 なぜなら、日本の立憲主義と日本国憲法における平和主義が大きな音を立てて崩壊し始め、その後の暗黒の未来を予告する日であったからです。この日以来、日本国憲法は事実上、停止し、現在にいたっています。
 この日になされた閣議決定(「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備」)は、従来の政府見解を大幅に変え、現行の憲法下で集団的自衛権の行使を認めるとするものでした。戦争や武力行使の放棄を謳う日本国憲法9条1項に鑑みると、同自衛権の行使は、最大限の拡大解釈を以てしても、合憲であるとは言えない、と私たちは考えます。なぜなら、日本の自衛隊が米軍のみならず、他の外国軍とともに、世界各地で武力を行使する道をあからさまに開くものであるからです。同閣議決定は、憲法上の平和的生存権(前文等)や国民の生命・自由・幸福追求への権利(13条)を守るため、と主張することで、その行使を正当化しています。しかし、武力行使への道を開く行為はこれらの権利を守るどころか、むしろ、私たちや他国に住む民衆の生命を脅かすものになる、と私たちは考えます。このような政府見解は、日本国憲法の最高法規性(98条1項)の観点からも、違憲無効であると言わざるを得ません。
 2015年5月15日。私たちはこの日をけっして忘れることはないでしょう。
 なぜなら、違憲無効である上記の閣議決定に沿って、2つの安全保障関連法案が国会に上程された日であるからです。既存の10法の改定と新法の制定を目指すこれらの法案は、集団的自衛権の行使のみならず、米軍その他の外国軍への後方支援という名の軍事協力を拡大し、また外国軍への防御活動等を可能にするものであると理解しています。その内容は、上記の閣議決定同様、憲法の平和主義の理念を否定するものであり、違憲無効です。 
 
 2015年7月15日・16日。私たちはこれらの日をけっして忘れることはないでしょう。
 なぜなら、この両日は、安全保障関連法案が衆議院特別委員会で強行採決され、同本会議で可決された日であるからです。安倍政権が、盛り上がる世論の反対の声に耳を傾けることなく、違憲法案を数の論理で押し通したという点に、私たちは強い怒りを感じています。十分な審議時間が費やされたかどうかは問題ではありません。根本的に違憲無効である法案は、どれほどの審議時間を経ても、違憲であることに変わりはありません。
 1945年7月15日、軍事産業を有する港町であった室蘭は、米艦による艦砲射撃を受け、1時間あまりで500人以上の死傷者を出しました。それから70年後のまさにこの日、人の生命の犠牲を前提とする法案の強行採決により、軍国化に向けての法的整備の道がさらに進んだということを、私たちは強い衝撃をもって受け止めています。
 21世紀以降の国際社会では、戦争や武力行使における民営化が格段に進んできました。そのような状況下で、安全保障関連法案が成立し、施行されると、技術者は大いに徴用対象とされていくことになるでしょう。工業系の高等教育機関の教職員である私たちは、工学を学ぶ学生が将来、技術者として徴用され、生命の危険にさらされる戦場に送られることになるのではないかと懸念しています。室蘭工業大学は、教育理念として「学生一人ひとりの多様な才能を伸ばし、幅広い教養と国際性、深い専門知識と創造性を養う教育」を行うこと、また「総合的な理工学に基づく教育を展開し、未来をひらく創造的な科学技術者を育成」することを謳っています。創造力をもって、平和な社会を築こうとするモラルある技術者を作ること。これが、教え子を二度と戦場に送らないという戦後教育の原点に立った私たちの使命です。私たちは、国家政策の一環としてなされる戦争や武力行使の現場へ人材を送り出すために、教育をしているわけではありません。
 以上の理由から、私たちは今、強く求めます。日本や他国の民衆の生命を脅かす安全保障関連法案の即時廃案を。

2015年8月21日

室蘭工業大学教職員有志一同
賛同者リスト(2015年8月21日正午第一次締切):42名(順不同)
若菜 博(教授、教育学)、清末愛砂(准教授、憲法学・家族法)、沓澤幸成(技術職員)、高木 稔(技術職員)、佐々木 眞(教授、機能材料学)、鈴木幸司(教授、知能情報学)、庭山聡美(教授、化学)、戎 修二(教授、物理学)、松本ますみ(教授、社会思想・マイノリティ論)、クラウゼ小野 マルギット(教授、ドイツ語 文化間コミュニケーション)、髙野英明(教授、磁性物理学)、松名  隆(准教授、基層文化論)、沖野典夫(講師、環境放射線)、三村竜之(准教授、言語学)、宮尾正大(名誉教授、電子工学)、二宮公太郎(名誉教授、哲学)、坂口  威(名誉教授、電気工学)、亀田正人(准教授、環境経済学)、今野博信(非常勤講師、教育心理学)、橋本忠雄(名誉教授)、永野宏治、塩崎 修 、菊地 しずか(事務補佐員)、中道正栄(事務補佐員)、山田 淳(非常勤職員)、湯口 実(技術職員)、早坂成人(教員、情報教育)、鈴木好夫(元教授)、宮本政明(技術職員)、佐野香織(非常勤職員)、刀川 眞(教員、社会情報システム)、松本浩明(技術職員)、浅野克彦(技術職員)、ほか匿名9名


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