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2015年08月26日

【国旗国歌要請】政府は大学の判断尊重を

高知新聞(2015年08月25日)

 国立大学の苦しい立場がにじみ出ているといえよう。
 下村文部科学相が6月、国立大に入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を求めたことに対し、半数以上の大学が「対応を検討するが未定」としていることが、共同通信のアンケートで分かった。2校は従来方式を変更し、両方を実施すると答えた。
 要請は安倍首相の意向を受けるかたちで行われた。下村文科相は「あくまでお願い」であり、「圧力」を否定したが、国立大の判断に影響を与えているのは明らかだ。
 アンケートは全86校のうち、77校が回答した。今年の入学式で国旗掲揚、国歌斉唱を完全実施したのは7校で、双方とも未実施は11校、国旗掲揚のみが54校、国旗は掲揚し、国歌は伴奏のみが5校だった。
 注目すべきは、双方未実施の11校を含む47校が「対応を検討するが未定」と回答し、変更の可能性に含みを持たせたことだろう。
 大学の自治を侵しかねない状況といえる。大学の自治は、憲法が保障する学問の自由に不可欠な制度である。法的根拠もないまま、政府が大学の式典の中身にまで注文を付けることがあっていいのか。
 ただ、国立大のこうした反応は6月段階から一定予想された。
 各国立大は、独立した法人経営のかたちを取っているものの、自主財源が少なく、運営費は国に大きく依存しているからだ。
 しかも、国からの運営費交付金は年々減少しており、6、7月は来年度予算の概算要求に向けた重要な時期でもある。大学にとっては、「お願い」も強く意識せざるを得ない。
 アンケートからは多くの大学の疑問や戸惑いが見て取れる。「大学の自治を尊重すべきだ」「政権中枢が、とりたてて要請することに違和感を禁じ得ない」などの回答があった。
 一方で、既に完全実施している大学などからは「国費で運営するので当然」などと理解を示す声もあった。
 重要なのは各大学が自主的に判断し、それに基づいて式典を執り行うことだ。政府には各大学の判断の尊重が求められる。
 大学は純粋な学問探求の場である。時の政権の意向を押し付けたり、政治の介入を想像させたりする対応は許されない。

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