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2015年09月12日

国立大・文系廃止通知:下村文科相「見直し求めた」と釈明

毎日新聞 2015年09月11日

 ◇「誤解を与える表現だった」とも

 国立大学に文系学部の改組や廃止を求めた文部科学省の通知で、下村博文文科相は11日、閣議後の記者会見で、人文社会科学系については廃止ではなく見直しを求めたものだったとして「誤解を与える表現だった」と釈明した。通知に対し学術界から「文系軽視か」と批判が出るなど波紋が広がる中、文科省は火消しに躍起だが、通知の見直しや撤回は予定していない。

 通知は文科相名で6月に出された。各大学が作成する2016年度から6年間の業務運営計画の基になるもので「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については(中略)組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」ことを求めた。

 これに対し、日本学術会議は7月、「人文・社会科学の軽視は大学教育全体を底の浅いものにしかねない」と批判する声明を出した。大学改革が政府の成長戦略に位置づけられたこともあり、有識者らから「実学重視」の流れを警戒する声が強まると、経団連は今月9日、文科省の通知について「即戦力を求める産業界の意向を受けたものであるとの見方があるが、産業界の求める人材像はその対極にある」との文書を出した。

 下村文科相は11日の会見で「人文社会科学系は廃止ではなく、見直しが必要ではないかというのが通知の本来の趣旨だった」と述べ、「廃止」対象は教員養成系だと説明。特に教員免許取得を卒業条件としない「新課程」(いわゆるゼロ免課程)について、少子化に伴い教員数が減っているため「廃止は当然のこと」と強調した。

 通知の文章について下村文科相は「一字一句私が全部チェックしているわけではない」と弁明した。【三木陽介】


富山大 文系定員100人規模削減も

2015年09月11日

 富山大は、文系学部の定員を100人規模で削減する方向で検討に入った。文系学部で削減した定員を、新設する理系学部に充てることで、地域創生を担える人材の育成を目指す狙いがある。文部科学省は今年6月、文系学部の廃止・転換を求める通知を出しており、同大幹部は「文系の定員削減規模がさらに拡大する可能性もある」と話している。


 同大などによると、定員の削減が検討されているのは、富山市の五福キャンパスにある人文、人間発達科学、経済の3学部と、高岡市の高岡キャンパスにある芸術文化の計4学部。定員の削減数は、人文が15人、人間発達科学が10人、経済が昼間と夜間で計60~70人、芸術文化が5人。現在、最多の定員(405)を抱える経済学部の削減数が特に多くなっている。

 同大は、文系学部で削減した定員を、2017年度の新設を目指している理工系の「システムデザイン学部(仮称)」(定員150)に充てる方針だ。当初は16年度に理工系学部を再編して新設する計画だったが、文科省との調整が難航したため、文系学部の定員削減と連動する形で、新学部の17年度開設を目指す。

 現在、同大の理系学部は、理(定員230)、医(同185)、薬(同105)、工(同405)の4学部。現状でも、理系4学部の定員合計925人は、文系4学部の同875人を上回っているが、文系学部の定員削減が実行されると、その差は最大250人に広がり、より「理系色」が強い大学となる。

 文科省は今年6月、全国の国立大学法人に対し、「人文社会科学系学部については、18歳人口の減少や人材需要などをふまえて、廃止や社会的要請の高い分野への転換に取り組む」ことを求める通知を出した。富山大が文系学部の定員削減を検討しているのも、この方針に沿った動きだ。

 ただ、定員の削減対象とされている文系学部の教員からは「目先のことだけを考えて、文科省が理系を重視するのは拙速だ。文系学部が輩出してきた人材も社会を支えてきたではないか」と憤る声も出ている。

 同大は今夏、文科省に国立大学法人運営費交付金を要求した際、「人材育成や地域課題を解決する取り組みなどを通じて地域に貢献すると同時に、強みや特色のある分野で世界ないし全国的な教育研究を推進する」という枠組みを選択。「富山の知の拠点」として、これまで以上に最先端の研究や地域創生に重点を置く方針を掲げている。


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