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2015年09月29日

東大法学教授、安保法制は法学的クーデター!

東大法学教授、安保法制は法学的クーデター!

東大法学教授、安保法制は法学的クーデター!

青山貞一 Teiichi Aoyama

September 19, 2015
独立系メディア E-wave Tokyo

 2015年9月19日午前2時過ぎ、11本に及ぶ安保法案が参議院本会議で可決された。

 何と、それより前、自公議員は、一人当たりの発言時間を制限する動議を出していた。最低でも30分間の意見を述べるべく原稿を用意してきた野党議員は、突如一人当たりわずか10分しか発言できないという言論統制、封鎖により発言を制限されたのである。まさに、これおが立法府の現場で行われていたのである。しかも、NHKはそれすら中継していなかった。

 周知のように安倍政権は、民主党政権が執拗な自民党政権による激しい攻撃に耐えきれず、自滅した後、、全有権者のわずか17から最大でも20%以下の得票で政権を奪取しているに過ぎない。しかも、その間の衆参選挙で、自民党は今回提出し強行採決した安保法案について明確に有権者に示すことはなかった。直近の衆院選挙は、アベノミクスと抄税問題がメインとなっていたことは誰の目、耳にもあきらかである。

 にもかかわらず、安倍政権は「憲法の解釈改憲問題で総選挙」をするでもなく、この間、わずか半年ばかりの国会審議で11本もの安保法案を強行裁決したのである。しかも、この間の国会審議で判明したことは、立法事実がない事例の数々、それを延々と説明、首相と大臣によるちぐはぐな答弁の繰り返し、明らかに存在するであろう資料を不知と繰り返すことなどであった。また官邸の幹部自身が法の安定性なんて関係ないと言う始末である。さらに、安倍首相は春に米国連邦議会で安保法制の制定化を約束、自衛隊最高幹部も同様のことをそれ以前に米国側に伝えていたのである。

 全部で11本に及ぶ安保法案をわずか半年足らず、衆参合計200数十時間しか審議することなく、民主、維新、共産などの国会議員と、国会周辺を中心に全国各地における反対デモを蹴散らかすように、2015年9月19日午前2時過ぎ、安保法案が参議院本会議で可決されたのである。この種の重要な法案は、一本でも一国会一本が通例であるはずである。これはイラク特措法などを見れば明らかである。

 もとより、安倍安保法制は、永年、自民党の総裁、大臣、幹部らが歴代の法制局長官の認識のもと、憲法九条の解釈改憲は違法と認識してきた集団的自衛権、同行使を安倍首相のご都合主義的改憲解釈により可能としたものであり、違憲である。これは高村副総裁が繰り返す詭弁でも明々白々である。

 ところで、9月18日深夜のTBSニュース23のなかで、ある東大教授は安倍首相が行ってきた一連の集団的自衛権議論と安保法制は「法学的クーデターである」と語った。まさに至言である。

 もともと、安倍首相が現行憲法下で集団的自衛権を容認するという解釈改憲は、およそまともな憲法学者、専門家でありうるものではない。安倍氏と考えを同じくする国際政治家、防衛政策論者らによってなされてきただけのことでる。事実、日本の公法学会に集まる1000人近くの憲法、行政法の専門家のうち、現行憲法下で明確に集団的自衛権を容認と考える学者、専門家は数名にすぎない。テレビなどに安倍政権を擁護するために出ている学者、専門家の多くは法律家、憲法学者ではなく、政策(価値判断)分野の学者にすぎない。

 一言で言えば、安倍首相やその周りにいるお仲間は、立法事実や事実認識を無視し、自分たちの勝手で恣意的な価値判断により現行憲法下で明確に集団的自衛権を容認と政策判断しているに過ぎない。いうまでもなく立憲民主主義下にあっては、憲法を最上位とし、憲法の条文のもとでの立法が可能であり、行政はあくまでそのもとで抑制的に存在する。

 にもかかわらず、安倍政権は、日本の名だたる憲法学者、専門家、歴代内閣法制局長官、さらには最高裁長官、判事らの助言を聞くことなく、お仲間で昭和47年」の砂川判決を自分たちに都合の良いように、つまみ食い的に援用し、集団的自衛権の解釈改憲を可能と自画自賛したのである。

 多くの識者が指摘するように、砂川判決のなかにはそのような解釈改憲を可能とする記述はない。しかも、安倍首相は、お仲間の御用学者らで私的懇談会を構成するだけでなく、内閣法制局長官まで更迭し、自分の言いなりとなる正当性も正統性もない役人を内閣法制局長官に据えて国会審議に対応したのである。

 これは日本全国に存在する憲法学者、公法学者にとっては、青天の霹靂、寝耳に水であったに違いない。まさに彼らにとっては「法学的クーデターで」あったに違いない。多くの学者、研究者、弁護士、元判事らが一堂に会し、安保法制に反対したのは当然である。

 このような稀代の「法学的クーデター」がなぜ可能となったのか、については、NHKを中心に大メディアが最低限の事実をまともに国民に伝えなかったことがある。安倍首相は、特定秘密法案の制定につづき、主要メディアの幹部を呼び寄せ,食事に誘い、さらに官邸はことある度にマスメディアに報道内容に介入していたのである。

 NHKは何と、中央公聴会(国会)、地方公聴会(横浜市)すら中継せず、その後の委員会審議、裁決、本会議審議、裁決すらまともに中継しなかった。その間NHKは、チリ地震による津波のニュースを延々と繰り返していたのである。

 かなり前から日本の大メディアには「社会の木鐸」という言葉が妥当しなくなっていたが、ここまで権力の広報機関化、それも憲法違反の独裁政権の広報機関に成り下がったことが「法学的クーデター」の背景にあることは否めない。


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