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2015年10月10日

秋田大、不適切な会計処理 赤字15億円を8億円に圧縮

朝日新聞(2015年10月8日)

 秋田大学(澤田賢一学長)は7日、2014年度決算で約7億2千万円の不適切な会計処理をし、赤字額を圧縮していたと発表した。主導した財務担当の理事(59)は「赤字を減らさないと、将来の大学運営に支障をきたすと考えた」と説明しているという。

 秋田大や文部科学省によると、不適切に処理されたのは個人や団体からの寄付金。約7億2千万円分を、すでに購入した付属病院の備品購入費に充てたようにみせかけたという。

 理事らは寄付金を使うと収益に振り替えられる国立大学法人の会計の仕組みを悪用し、帳簿上で赤字の一部を帳消ししたように見せかけた。この不適切処理により、14年度決算では過去最多の15億円超になるはずだった赤字が、約8億円に圧縮されていた。

 ログイン前の続き不適切処理を主導した理事は澤田学長らに対し、「処理しないと今後、職員給与の支払いが滞る可能性がある」などと説明していたという。監査法人による外部監査も不正を見抜けず、文科省も承認した。秋田大は帳簿を修正するという。

 文科省の指摘を受け、秋田大の調査委員会が調べていた。調査委によると、利益を追求しない国立大学法人が損失を圧縮する意味はなく、給与の遅配などが起きる可能性もなかったという。

 澤田学長は「大学の信用を失墜させた」と謝罪。男性理事を学長付理事に異動させる処分をしたほか、自身の役員報酬(10分の1)を3カ月間、返納するとした。

【秋田大不適切会計】財務担当理事が指示

読売新聞(2015年10月08日)

◆計10人を処分

 秋田大学の2014年度決算で、損失額を約7億2243万円圧縮し、実際の半分近い約8億1058万円と計上した不適切な会計処理があり、沢田賢一学長(63)が7日、秋田市手形学園町の同大で記者会見し、「財政基盤への信用を失墜させ、大学に対する期待を裏切ったことをおわびします」と陳謝した。

 同大は会計処理を指示した財務担当理事(59)を学長付理事に更迭し、財務部門の部課長4人を戒告の懲戒処分とするなど計10人を処分。沢田学長ら役員3人が役員報酬の一部を自主返納する。常勤監事が辞意を表明している。

 発表によると、理事は14年度決算の会計処理で、使途が研究開発費などに決まっている医学部への寄付金約7億2243万円を、収益に繰り入れるよう部下に指示。本来、使途の変更には、研究者が寄付者に同意を得る必要があるが、この手続きを踏まず、財務のやり繰りを示す財務諸表に、実際は約15億3301万円だった損失を約8億1058万円に圧縮して記載し、文部科学省に提出した。

 提出後の文科省とのやり取りで寄付金の会計処理に疑問点が見つかり、大学側が調査して不適切な処理が発覚した。大学側の聴取に、理事は「寄付者の同意が必要とは知らなかった」と釈明したという。

 国立大学法人会計基準では、寄付金はいったん債務として扱い、研究開発などの出費に応じて収益に繰り入れて費用を工面する。利潤の追求を目的としない国立大学の会計は「(初めに)出費ありき」で処理されるため、一般企業の会計とは異なる。

 発覚後、秋田大は専門家を交えた調査委員会を設置し、原因を究明。理事は聴取に「赤字(損失)額が大きく、大学運営に支障を来すと思った」と指示した理由を説明したという。14年度決算は医学部付属病院の改修工事費がかさみ、実際の損失は前年度(約3億2936万円)の4・6倍を超える約15億3301万円に膨らんでいた。

 一方で、調査に加わった外部委員は「資本金と資本剰余金だけでも秋田大には約250億円の資産があり、無理する必要はなかった。民間企業なら粉飾とも取られかねないことをなぜしたのか、理解できない」と首をかしげた。


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