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2015年11月11日

日本私大教連、文部科学省 2016 年度概算要求・私立大学関係予算に関する声明

■日本私大教連
 ∟●文部科学省 2016 年度概算要求・私立大学関係予算に関する声明

文部科学省 2016 年度概算要求・私立大学関係予算に関する声明

2015 年 10 月 21 日
日本私大教連中央執行委員会

 文部科学省(以下、文科省)は「平成 28 年度概算要求」を 8 月に公表しました。うち、私立大学・短期大学関係予算にみられる主要な問題点を指摘するとともに、今後の予算編成においてその問題点を修正し、最大限の予算を確保するよう求めるものです。

1.私立大学等経常費補助(以下、私大助成)について

(1)文科省は 2016 年度概算要求で、私大助成予算額を、前年度予算比で 122 億円(3.9%)増の3,274 億 5 千万円要求しました。しかし、この要求額には、政府の成長戦略に合致する施策へ予算を重点化する「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、推進枠)での要望額 161 億 5 千万円が含まれており、これを除く実質的な私大助成の計上額は前年度比 39 億 5 千万円(1.3%)減の 3,113 億円となります。

 文科省は昨年度の概算要求でもまったく同様の方法で、私大助成を前年度より 41 億円(1.3%)減額し「推進枠」160 億円を上乗せして要求しました。その結果、2015 年度の政府予算では私大助成は前年度比 31 億円(1.0%)の減額となりました。しかもその内訳は一般補助が 51 億円の減、特別補助が 19 億円の増となっており、すべての私立大学等に共通の基準で配分される基盤的経費である一般補助が大幅に減額されるという重大な結果を招いています。

 そもそも政府は、私立大学等の経常費総額の 50%を補助することを目標として私大助成を開始したにもかかわらず、1980 年に補助率 29.5%に達して以降、30 年以上にわたり予算の抑制・削減を続けたため、今日ではわずか 10%程度にまで落ち込んでいます。この事実を踏まえれば、私大助成の本体部分をさらに削減し、「推進枠」に紐付けた予算で上乗せを図ろうとする文科省の手法は極めて問題です。

(2)加えて重大な問題は、「私立大学等改革総合支援事業」予算を 192 億円(前年度比 48 億円・33.3%増)と大幅に増額する要求をしていることです。この支援事業は文科省が指定した特定の「改革」に取り組む大学を選定し「経常費・設備費・施設費」を一体的に重点支援するというもので、選定大学に一般補助・特別補助を増額配分する枠組みです。前述したとおり一般補助は本来、教員数や学生数等の定量的基準により算定・配分される基盤的経費への補助であり、これに競争的な重点配分を持ち込むことは私立学校振興助成法に明示された私大助成の理念・制度を歪めるものにほかなりません。

 政府は一般補助の減額、重点配分化を即刻中止し、私立大学の教育研究基盤を強化すべく予算の増額を図るべきです。

(3)さらに、特別補助のうち各私立大学が実施している「経済的に就学困難な学生に対する授業料減免事業」への支援予算を、前年度比わずか 1 億円増の 86 億円を要求するにとどまっていることも極めて重大です。国立大学生に対する当該予算要求額が前年度比 13 億円増の 320 億円であることに比べれば、私立大学生が合理性のない不平等な状態に置かれていることは明らかです。私立大学で授業料減免を実施すれば多額の原資が必要となりますが、予算額があまりに少ないために各大学の財政余力によって減免対象者数や減免基準が左右され、大学間の格差が生じています。学生に何ら責任がないのに不公平を被っている事態は一刻も早く解消されなければなりません。

 そのためには、現行の「経済的に修学困難な学生に対する授業料減免事業」を増額するとともに、経常費補助という補助事業とは別枠で私立大学生授業料減免事業予算を計上し、私立大学の学生が国立大学の学生と同等の水準の授業料減免が受けられるようにすべきです。

2.大学等奨学金事業について

(1)文科省が今回の概算要求でも、給付奨学金の創設要求を見送ったことは重大な問題です。OECD加盟 34 カ国のうち大学学部生を対象とした給付奨学金制度がない国は日本とアイスランドのみで、大学授業料が有償でかつ給付奨学金を有しない国は日本ただ一国です。高額な授業料と過重な私費負担によって就学困難となっている若者が、私立、国公立の区別なく等しく受給できる給付奨学金制度を創設することを求めます。

(2)日本学生支援機構の奨学金事業に関しては、「有利子から無利子への流れを加速」するとして、無利子奨学金貸与人員を 49 万 8 千人(3 万 8 千人増)、有利子奨学金貸与人員を 85 万 7 千人(2 万人減)とする方針が打ち出されました。この方針は評価できるものの、給付奨学金制度が存在しない現状にあっては、教育の機会均等を保障する最低限の手段として、無利子奨学金を希望するすべての学生が貸与できるように貸与人員を抜本的に拡充し、貸与基準を緩和すべきです。

 また、無利子奨学金貸与人員が不十分であるために、私立大学は国立大学に比して無利子奨学金採用者数が少なく、残存適格者が多く存在しています。貸与人員の拡大と合わせて、予約採用制度を拡大することを求めます。

(3)所得額に応じて奨学金返済額を決定する「所得連動返還型奨学金制度」の導入を文科省が掲げて 3 年以上が経過するものの、来年度概算要求でも「導入に向けた対応の加速」にとどまっており、制度設計は遅々として進んでいません。日本学生支援機構の奨学金がローンであることにより奨学金申請を躊躇させ教育の機会均等の上で十分な役割を果たせていない現状をいくらかでも改善する上で、速やかに「所得連動返還型奨学金制度」を導入すべく必要な予算措置を行うべきです。


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