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2015年11月17日

追手門学院大学不当解雇事件、「懲戒解雇に対する声明」

懲戒解雇に対する声明

懲戒解雇に対する声明

 2015 年10 月25 日(日)、私たちに川原俊明理事長名で「懲戒解雇に処す」という通知書が配達証明で郵送されてきました。本学院の現在の「教職員懲戒手続規程」は、懲戒委員会の決定に対して不服申し立ての機会が一切認められていないため、これにより、即日、私たちは懲戒解雇され、以後、許可なく学内に立ち入ることをはじめ、担当授業の遂行、研究室の使用、公費で購入した物品等の使用、図書館や情報システムの利用など、専任教員としてのすべての行動が禁止、もしくは著しく制限されることになりました。

 今回の懲戒は、昨年9 月に川原理事長が懲戒委員会に付議してから1年以上の期間があったにもかかわらず、年度途中において、担当授業が遂行できなくなり、受講学生に多大の迷惑をかけることを承知で遂行されたものであり、まずもってこのことに強い怒りを覚えます。おそらく、来る11 月18 日に予定されている、落合の不当配転取消訴訟の一審判決に備えて、法人側が敗訴しても、落合を解雇することによって心理学部教授に復帰させなくしようという悪質な狙いがあるものと思われます。

 あわせて、懲戒解雇は永年にわたる勤務に伴う退職金の給付や、私学共済の医療費給付などの権利を剥奪するものであり、経済的にも計り知れない損失となります。個人的なことになりますが、現在、田中の妻は、重大疾病で療養中であり、多額の医療費を必要としています。自らの余命に対する不安に加えて、経済的不安を新たに抱えなければならなくなった妻が可哀想であるとともに、言いようのない申し訳なさを感じています。

 そもそも、今回の懲戒解雇の理由は、「学院等を被告とする損害賠償請求訴訟等の提起を教唆し、その遂行に深く関わり、マスコミを通じてその事実を公表すれば学院の評価が低下することを認識しながら、学内を混乱させて理事者に対する責任を追及できると考えてあえて記者会見を画策し、もって学院の名誉及び信用を毀損する行為を行った、また、学院等を被告とする前記訴訟の遂行にあたり、本来の原告の意思を超えて荷担し、職務上知り得た秘密を他に漏らした、または、それに準ずる行為を行った」というもので、これらが「追手門学院大学就業規則」第30条第1項第1号、第3号、第4号、及び第7号(いずれも事案発生当時の就業規則、現在は条数が第34条に変更されている。)に該当するというものです。

 ここで言う「学院等を被告とする損害賠償請求訴訟等」とは、具体的には、本学の卒業生が2010年7月に申し立てたセクハラ事案について、キャンパス・ハラスメント防止委員会(当時)では申し立てのほとんどが事実として認定されたにもかかわらず、処分について当時の懲戒委員会では結論を出すことができず、最終的に大木理事長(当時)の判断により、学院の幹部職員による複数学生に対する極めて重大な出来事であったにもかかわらず、一片の謝罪文の提出を求めたのみで、それ以上の処分を行わなかったことから、これを不服として、卒業生が2011年6月に大阪地裁に提訴し、併せて大阪弁護士会に人権救済の申し立てを行ったことを指します。この提訴と申し立ては、結局、翌2012年8月に取り下げられましたが、その後、川原理事長は事実を捻じ曲げ、虚偽のストーリーを描いて、2014年9月に私たちを懲戒委員会に付議したものです。

 また、その間、川原理事長は、当該訴訟等の原告代理人を引き受けた弁護士を、訴訟を煽動した、訴訟を学内抗争の助長に利用したなどの理由を挙げて、大阪弁護士会に懲戒請求を申し立てましたが、大阪弁護士会は、これらの懲戒理由は認められないとして、この請求を却下しました。しかし、これに納得しない川原理事長は、日本弁護士連合会に対して異議申し立てまで行ったのですが、日本弁護士連合会も大阪弁護士会の判断に誤りはないとして、川原理事長の異議申し立てを却下したのです。このように、川原理事長の描いたストーリーは、法律の専門家団体ではまったく認められなかったものであり、それにもかかわらず、私たちを懲戒すべく、学院の懲戒委員会に付議したのです。

 そもそも、本学院の現在の「教職員懲戒手続規程」は、2013年7月に従来の「懲戒委員会規程」を大幅に改悪したものであり、①懲戒の付議が理事長の専決とされたこと、また「部局による調査」を経ることなく、直接、理事長が付議することもできるようにしたこと、②懲戒委員会の構成人数が削減され、理事長の意思が反映されやすい者によって事実上構成されるようになったこと、③第三者の役割が期待される弁護士についても、「理事長によって指名された」委員長が指名するとされ、第三者としての客観性・公平性が必ずしも担保されないこと、④懲戒委員会の開催定足数や決議定足数が引き下げられ、決議しやすくなったこと、⑤不服申し立てを認めず、懲戒委員会の決議をもって、理事長が即時に懲戒を発令することが可能となったこと、⑥「改定後の規程は、当該改定以前に発生した懲戒事由についても適用する」として、手続規定であるとはいえ、立法の「不遡及の原則」を無視し、遡って容易に懲戒できるようにしたこと、など多くの重大な問題を含んだものであり、労働契約法第10条の要件を充たさない無効の規程です。

 実際、今回の懲戒において、唯一第三者であることが期待されて懲戒委員会に加わった弁護士も、かつて川原理事長の弁護士事務所に所属していた経歴があり、結局、懲戒委員会の客観性・公平性は何ら保障されていなかったのです。また、川原理事長が描いたストーリーは、2010年7月から2012年8月までの間の出来事であり、これをその後の2013年7月に「迅速な決定が必要になったから」という理由を挙げて改悪した懲戒委員会に付議し、およそ「迅速」とは言えない1年以上もの時間をかけて、今回の懲戒解雇を強行したわけです。

 私たちは、内容的には事実を捻じ曲げたものであり、手続的にも、正当性のかけらが一片もないこのような懲戒処分を受け入れることは断じてできません。不服申し立ての機会が認められていない以上、本学院で起こった事実を外部に提示することになり不本意ですが、司法の判断を求めて断固闘うつもりです。心ある皆さま方のご支援をよろしくお願い致します。

2015年10月27日
落合正行/田中耕二郎

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