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2015年11月25日

北陸地区国立大学連合、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

国大協
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年11月20日
北陸地区国立大学連合
富山大学学長 遠 藤 俊 郎
金沢大学学長 山 崎 光 悦
北陸先端科学技術
大学院大学学長 浅 野 哲 夫
福井大学学長 眞 弓 光 文

 我々北陸地区の国立四大学は,地域の中核的高等教育機関として,教育の機会均等等を担う公共的性格の下,優れた教育を提供し,医師や教員など地域になくてはならない有為な人材を育成している。また,北陸地域は,産業・建設等の一般機械,アルミサッシ等の金属製品,電子部品,繊維等の最先端技術開発を必要とする様々な基幹産業のみならず,農業,水産,製薬等の地場産業に及ぶ幅広い産業分野で日本の発展を支えており,我々四大学は,地元産業界との共同研究等により,優秀な人材の育成や再教育を行うとともに,研究成果の還元により様々な機能を支え,地域の発展・活性化に貢献している。一方で,近年の日本の急速な少子高齢化と財政難から,我々四大学を含む国立大学は更なる機能強化を強く求められており,知の拠点として世界的な研究成果やイノベーションの創出等に向けた大学改革を主体的に進めてきている。

 そのような状況で,先般の財政制度等審議会財政制度分科会において,財務省から,国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金を平成 28 年度から毎年1%減額し,その減額分に見合う自己収入を毎年 1.6%増やすことが提案された。すでに国立大学は平成 16 年の法人化以降,12 年間で運営費交付金が 1,470 億円(約 12%)減額されている。さらに,医療人材の養成,高度医療の提供,地域医療の拠点としての機能を担う附属病院に関しても,消費税増税等の影響により非常に厳しい経営環境にさらされており,特に附属病院を持つ富山,金沢及び福井の三大学は危機的な財務状況に陥っている。我々四大学は,これまでも業務の効率化や経費節減などの諸施策を講じてきたが限界に達してきており,さらに継続的に運営費交付金を削減されれば,大学の運営基盤とともに教育研究機能は急激に脆弱化し,壊滅的な機能不全に陥る恐れがある。このことは,地域の教育,研究,医療の拠点としての機能を衰退させ,ひいては地域の発展・活性化を停滞させることが懸念され,地域における中核人材の育成拠点であり,強み・特色のある分野で世界的な研究を行っている我々四大学にとっては大きな問題ナある。

 また,運営費交付金の削減分を自己収入の増加により補うという提案は,授業料の大幅な引き上げに繋がりかねず,現下の国民の経済状況からみても教育格差が更に拡大されることが懸念され,各地域における教育,文化,産業の基盤を支え,学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するという国立大学の使命が十分に果たせなくなることを強く危惧している。

  我々四大学は,この様な急激に悪化した財政状況の下にも関わらず,学長のガバナンス改革を実行し社会を変革するエンジンとしての大学へと改革を着実に進めている一方で,「北陸地区国立大学連合」を設置して,教育,学術研究,医療,社会貢献等の各分野における連携を推進し,大学の機能強化に取り組んでいるところである。そのような時に,今回のこのような提案が表明されたことは,あまりにも配慮を欠いたものであり,大学の自主的な改革や機能強化の実現を危うくするものと懸念するところである。

 昨今の国の財政状況を鑑みれば,国立大学が厳しい環境におかれていることは十分に認識している。しかしながら,地域における中核人材の育成を担う我々四大学が,教育研究の質を担保しながら高等教育の機会を提供し,イノベーションの創出を目指していくことは,日本の持続的発展を支えるために必須であると考える。そのため,運営費交付金の充実は必要不可欠なものであり,その継続的な削減方針への反対について,関係者のご理解とご支援をお願い申し上げるものである。


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