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2015年12月01日

京都大学、財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

京都大学
 ∟●財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年11月26日

国立大学法人京都大学 経営協議会学外委員(50 音順)
岩永 勝(国立研究開発法人国際農林水産業研究センター理事長)
嘉田 由紀子(びわこ成蹊スポーツ大学 学長)
加藤 秀樹(構想日本代表)
門川 大作(京都市長)
黒田 清喜(株式会社京都新聞社代表取締役社長 主筆)
小島 啓二(株式会社日立製作所 執行役常務)
小長谷 有紀(大学共同利用機関法人人間文化研究機構 理事)
榊 裕之(豊田工業大学 学長)
佐藤 勝彦(大学共同利用機関法人自然科学研究機構長)
竹中 登一(公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会長)
増田 寿幸(京都信用金庫理事長)
山田 啓二(京都府知事)
鷲田 清一(京都市立芸術大学 学長)

 私たちは、国立大学法人法(平成15年7月16日法律第112号)第20条第2項に基づく経営協議会の学外委員として、国立大学法人京都大学の経営に関する重要事項を審議し、経済、産業、行政、地域等多様な立場で社会からの視点として意見を述べ、大学運営に反映させる役割を果たしてきました。

 その立場から見ても、平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において財務省が示した今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案については、大きな疑念や危惧を持つものであります。

 今回の提案で財務省は、今後15年間に運営費交付金に依存する割合と自己収入割合を同じ割合とすることを目標とし、運営費交付金を毎年1%減少させ、自己収入を毎年1.6%増加させることが必要としていますが、国立大学の現状や自律的な取組に対してあまりにも配慮を欠いたものであり、国立大学の存立を危うくすると言わざるを得ません。

 たしかに我が国の財政状況は極めて厳しく、国立大学が高い質を確保しながら自律的・持続的な経営を続けていくためには、国費による支援に安住することなく、自ら多様な自己収入を確保していく努力は必要なことと考えますが、教育・研究が本務である国立大学では自己収入を増やすにもおのずから限界があります。

 すでに国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金は平成16年度の法人化以降大幅に削減されており、国立大学全体ではこの12年間で1,470億円(約12%)、京都大学においても99億円(約15.4%)削減されております。

 そもそも我が国における高等教育への公財政教育支出の対GDP比は0.7%ですが、これはOECD加盟国平均の半分にすぎず加盟国の中で最下位レベルです。

 京都大学はこれまで人文社会科学から自然科学まで幅広い分野で世界をリードする教育・研究を推進し、ノーベル賞をはじめとする世界に冠たる賞の受賞者を多数輩出してきました。

 しかし、このまま運営費交付金を機械的に削減していけば、京都大学が行ってきた将来を担う若手人材の育成や多様な分野にまたがる世界トップレベルの基礎研究の推進及びそれらを通じた社会貢献に重大な支障をきたすだけでなく、国立大学の将来、ひいては我が国を支える科学技術と高等教育の未来に大きな禍根を残すことになります。

 また、家庭や学生の経済状況が厳しくなっている中で、授業料の引上げと併せて運営費交付金の減額を行うことは、経済条件や地域にかかわらず意欲と能力のある若者を受け入れて優れた人材を社会に送り出すという国立大学の役割を十分に果たすことができなくなり、教育格差の拡大につながることを危惧します。

 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献していくためには、「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実が不可欠であることを重ねて強調し、各方面のご理解をお願いするものです。


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