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2015年12月02日

横浜国立大学、国立大学の財政基盤の強化を求める声明

横浜国立大学
 ∟●国立大学の財政基盤の強化を求める声明

国立大学の財政基盤の強化を求める声明

平成27年11月25日

国立大学法人横浜国立大学 経営協議会外部委員(50 音順)
相澤 益男(科学技術振興機構顧問)
伊藤 文保(前神奈川大学理事長)
亀崎 英敏(三菱商事(株)常勤顧問)
佐藤 禎一(国際医療福祉大学学事顧問)
羽入佐和子(理化学研究所理事)
蛭田 史郎(旭化成(株)常任相談役)
松本洋一郎(理化学研究所理事)

1.予算の充実
 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献する改革を着実に実行していくため「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実を図ること

2.税制改正
 財政基盤の確立に資するため、国立大学法人に対する寄附の税額控除制度を導入し、私立大学と同様に個人寄附にかかる所得控除と税額控除の選択ができるようにすること

 私たちは、国立大学法人法に基づく経営協議会の学外委員として、国立大学法人横浜国立大学の将来計画をはじめとする大学経営の審議に参画し、大学コミュニティとは違う経営の視点でその役割を果たしてきた。

 その立場から、これまでの国立大学に対する運営費交付金などの予算の削減などを見るにつけ、平成28年度から始まる第3期中期目標期間における国立大学の存立に危惧を抱かざるを得ず、声明を発出することとしたものである。横浜国立大学は、国際都市横浜、神奈川地域発のグローバルな貢献を成し得る国立大学として、伝統的な強みと特色を保持し、その責務を一層果たすべく、教育研究機能の充実・強化に努めてきた。

 さらに、第3期中期目標期間においては、理工学分野、教員養成分野及び人文社会科学分野の強みや特色を活かし、21世紀のグローバル新時代に求められる、イノベーティブかつ広い専門性を持った実践的人材を育成する教育プログラムを実施するため、都市科学部(仮称)の新設を始めとする本学一体による教育組織の改編を構想しているところである。

 これまで運営費交付金が年々削減される中、横浜国立大学においては、業務の効率化や外部資金の獲得に取り組み、また、教育研究費を圧縮したうえに正規の教員を減らして特任の教員を雇用する等により、教育研究の質を維持してきた。

 このような大学の経営努力も限界に近づいた今、これ以上の運営費交付金の削減がなされれば、教育研究にかける基盤的経費は第3期中期目標期間中に大幅に減少し、教育研究に携わる教員の更なる削減等の断行を避けられず、社会の要請に応じた改革の取組は失速せざるを得ない。むしろ大学現場はますます疲弊し、教育研究の質の低下を招くことはおろか地域への貢献も十分果たせなくなることは必至である。

 平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会では、今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案として、運営費交付金を今後15年間毎年1%機械的に削減すべきなどの考え方が財務省より示されたが、これは国立大学の責務として社会的必要性に応えていくための数々の役割や自己変革の実現を不可能とするものであり、大学経営に関与してきた立場として、日本社会の成長と発展に寄与する国立大学の行く末に大きな不安を覚える。

 国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献する改革を着実に実行していくためには学生に負担を強いるのではなく「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実が不可欠であることを重ねて強調したい。

 また、個人からの寄附金収入の増加は財政基盤の確立に資することになるが、その促進には国立大学法人に対する寄附の税額控除制度を導入し、私立大学と同様に個人寄附にかかる所得控除と税額控除の選択ができるよう強く要望する。


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