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2016年02月16日

福岡教育大が教職員組合、声明「国立大学法人福岡教育大学は,福岡県労働委員会の救済命令を真摯に受けとめ, 排除と私物化, 差別と弾圧の経営を改め,大学運営の正道に復帰せよ」

全大教
 ∟●福教大教職組:声明「国立大学法人福岡教育大学は,福岡県労働委員会の救済命令を真摯に受けとめ, 排除と私物化, 差別と弾圧の経営を改め,大学運営の正道に復帰せよ」

声 明

国立大学法人福岡教育大学は,福岡県労働委員会の救済命令を真摯に受けとめ, 排除と私物化, 差別と弾圧の経営を改め,大学運営の正道に復帰せよ

2016年2月12日
福岡教育大学教職員組合
執行委員長 鈴木 浩文

( 1 )命令書の概要と本組合の評価
 2月10日,本組合は,福岡教育大学不当労働行為救済申立事件(福岡労委平成 26 年(不)第10 号)に係る福岡県労働委員会の命令書写しを受領した。命令書では申立事項 4 項目,
① 平成 25 年の学長選考結果を疑問視して組合が行ったビラ配布活動に参加した組合員を,寺尾愼一学長が大学院教育学研究科長に任命しなかったこと。
② 法人による臨時給与減額に対し,組合の全面的支援を受けて提起された未払賃金請求訴訟の原告団に加わった組合員を,寺尾愼一学長が教育研究評議会評議員に指名しなかったこと。
③ ②の組合員が主任を務める講座の教員人事ヒアリングを,寺尾愼一学長が敢えて自ら行わなかったこと。
④ 寺尾愼一学長が,全教職員向け説明会において,組合による①のビラ配布を信用失墜行為であるなどと批判し,教育学部長らに対してビラ配布への対応や見解を文書で提出するよ う命じた旨の発言をしたこと,及びその発言内容を大学公式ウェブサイトに掲載したこと。

 以上①~④を不当労働行為として認定した。これらは,本組合の申立を大筋で認容するもので,妥当な命令である。他方,同命令書が,団体交渉において法人が十分な資料提示による説明を怠ったことを,不誠実団交と認定しなかった点については,団体交渉の正常化を困難にするものであり,大変遺憾である。

( 2 ) 不当労働行為と認定された法人の行為の本質
 上記①~④は,福岡教育大学教職員の労働条件に深く関わる事柄であるからこそ,正当な組合活動に対する不利益取扱・支配介入として,不当労働行為が認定されたものである。福岡県労働委員会が労働条件の検討に当たって,被申立人の大学としての特性を十分に考慮したことは極めて重要である。①では,教職員の意向投票結果を覆して学長選考会議が当時の現職の寺尾学長を選考したことにつき,学長の人選は労働条件に影響を及ぼす事項であり,それへの疑義表明は組合の正当な活動に含まれうるとした。また,教授会が大学院研究科長を選考することとなっていた旨を認定し,学長の権限を過大視することなく,研究科長の選考やり直し及び研究科長を学長による選考とする規程変更を峻拒した教授会の総意を正当に評価した。②については,教育研究評議会は教育研究に関する重要事項を審議する審議機関であり,そこでは教育研究上の観点から多様な意見を持つ者の参画が前提されるとして,原告の排除を不当とした。③でも同様に,学長ヒアリングの場からの原告の排除を不当とした。④では,①に関係して,学長が大学の全教職員に対して組合員への処分を示唆することにより,組合活動を妨害しようとしたことを,正しく不当労働行為と認定した。

 寺尾学長による①~④の行為に一貫するのは,自らと意見を異にする者を大学運営の場から排 除し,ひいては差別・弾圧を加えようとする,独裁的・強権的姿勢である。そうした姿勢は,今日の民主主義社会において認容されるべきではなく,まして自由な知的探究の場としての大学に おいては,断じて許されるものではない。今回の不当労働行為認定は,組合活動・労働条件の観点から,寺尾学長による,排除と差別・弾圧を基調とする経営姿勢に対し,高度な権威を有する公的機関がはじめて明確な NO を突きつけたものであって,画期的なものであるとともに,数年来の種々の人権侵害・排除と抑圧に苛まれてきた大学構成員として,一筋の光明を見た思いである。

(3)法人の管理職・責任ある立場の方は,今回の命令を正視し,大学を正常化すべきである
 本組合及び多数の大学構成員の観点から判断して,今回の①~④に関する命令は至極妥当なものである。しかし,寺尾学長が在任した6年間,とりわけ平成 25年の再選後の2年間において, 被申立人の管理職(理事,副学長等)や責任ある立場の方々(監事,経営協議会委員,法人運営を指導監督する立場にある文部科学省及び国立大学法人評価委員会)は,こうした観点を全く重視しなかった。救済申立以後も救済命令の出た今日まで,法人の経営姿勢は改善に向かうどころか,悪化の一途をたどってきたと言わざるを得ない。具体的には,
ア)学長選考において,意向投票自体が廃止され,教職員の意向は学長選考において全く考慮されなくなった。
イ)大学院研究科長は学長による選考制に改められ,学長の意に沿わない組合員はそもそも選考される可能性がなくなった(この規程改正自体は教授会では否決されたにもかかわらず)。
ウ)その後研究科長のみならず学部長の選考権限も奪われた結果,教授会は学長が指名した 学部長・研究科長が主宰することとなり,審議事項を極めて制限された上に何らの議決すら行わ
れなくなり,本来は最も重要な審議事項であるはずのカリキュラムの改定すら審議されていない。 エ) 評議員は,平成28年度からは各講座の代表ではなく,学長が任命した学部長が,学長の意に沿う教員を推薦する形式に改められることとされ,多様な意見は全く吸い上げられなくなる。
オ)講座は平成30年度をもって廃止される予定で,教員人事のボトムアップ機能は消失した。
カ) 教員の懲戒について,教授会はもとより評議会での審議すら廃し,学長指名の委員が調査・審査を行うこととし,事実上学長の意思で処分できる体制となった。その後最近数ヶ月の間に3名の教員が停職処分を受けたが,役員らは自らの管理責任を問題にすらしていない。

 こうした制度の改変に伴い,ごく一部の管理職らが大学の運営を壟断し,教員に配分される教育研究費を 4 分の 1 にまで激減させながら,大学の英語名改悪・ロゴマーク制定に多額の資金を浪費する,公募によらない恣意的な教員採用人事を連発する,といった,大学の私物化が完了しつつある。寺尾学長再任後に決定された生涯教育課程の廃止,初等教育教員養成課程における選修制の廃止,大学院改組は,いずれも福岡教育大学の将来にとって決定的に重大な施策でありながら,すべて教授会で大差で否決されたにもかかわらず,強行されている。また,今回不当労働行為と認定された重大な人権侵害を学長自ら敢行しているにもかかわらず,それに抗議して法人の主催する人権教育研修会への出席を拒否する職員に対し,処分を発動する意向まで示している。
 今回不当労働行為が認定された各事項について,学長によるこの2年間の諸施策を顧みると,それは不当労働行為の認定から逃れるべく,大学のまっとうな制度や蓄積された知恵を跡形も無く抹殺するものであった。いわば,家があれば火事が起こる危険があるからと言って,火事が起こる前に家を取り壊してしまおうとするようなものである。「大学」であるから問題が起こると考えて,「大学」の本質を破壊したのである。しかしそのような行為が,今回の命令の趣旨に根底的に反するものであることは明らかである。

 学長,学長が任命した理事,副学長(学部長・研究科長含む),副理事,また学長が推薦した監事,依頼した経営協議会の学外委員,及び経営協議会学外委員を含む学長選考会議委員,そして文部科学省及び国立大学法人評価委員会には,今回の命令書を熟読して頂きたい。自らが推進し,ないし消極的にであれ是認してきた寺尾学長の大学運営が,大学の正常な運営を妨げ,それが今日なおブレーキを破壊された車のように暴走を続けていることは,真摯に反省されるべきである。その上で,自らの責任を明らかにしたうえで,正常化に直ちに着手して頂きたい。我々の言う正常化とは,大学が構成員の多様な知見・意見と人格・人権を尊重し,権限を有する特定の個人の恣意に左右されることなく,自由な教育・研究の場として存続・発展することである。本組合の組合員たる教職員は,大学の正常化と,正常化後の大学の運営にあたり,努力を惜しまない。

 末尾ながら,これまで本組合の闘争に多大なご支援をいただいた全大教(全国大学高専教職員組合),全大教九州,及び各加盟単組,その他学内外の関係者・市民に対し,心よりの感謝を表明する。上記の通り,現在のところ被申立人の経営姿勢が改善される兆しはまったく見えておらず,本組合は今後とも大学および労使関係の正常化を目指して闘争を続ける決意である。益々のご支援をお願いする次第である。


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