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2016年03月03日

国立大交付金に競争制度-分かりやすい形で改革を進めよ

日刊工業新聞(2016年3月2日)

 政府の2016年度予算案では国立大学の運営費交付金を15年度と同額にした。同時に新年度からは各大学の改革に応じて支給額を増減する新制度が始まる。文部科学省は制度を分かりやすい形で運用しつつ、さらなる改革を推し進めてもらいたい。

 近年の財政難の中で国立大の運営費交付金は毎年1%ずつ減額されてきた。ただ文科省の常盤豊高等教育局長は今後「こうした形をとらない」と明言する。

 減額を求める財務省を説得できた大きな要因は、競争的な改革の導入だ。各大学は昨夏、新たな改革の枠組みである「世界」「特色」「地域」の3類型のうち、どれに沿った改革に取り組むかを選択した。国は交付金1兆1000億円のうち308億円を、この改革の程度に応じて配分する。交付金という基盤的経費に競争を取り入れたことは国立大の歴史の中でも大きなエポックだ。

 交付金の大部分は大学の規模や教職員の退職金で決まる。16年度はこのうち平均1%、約100億円を留保し、競争による配分の308億円の一部に充当する。交付金を留保する比率を定めた「機能強化促進係数」は類型ごとに異なり、「世界」が一律1・6%なのに対して「地域」は0・8―1・2%だ。つまり「世界」を選んだ大学の方が大きな額を留保され、より競争的な環境となる。

 この制度設計は、大学ごとの実情に配慮しつつ変化を促すものだと感じられる。ただ仕組みとして複雑な上に、必ずしも万能ではない。例えば大学の総収入に占める交付金比率は教育大学が7割程度なのに対し、病院収入のある医科大学では2割程度。交付金の1%を留保することで改革を促したとしても、大学によって意識の差は大きいだろう。

 文科省は17年度から、留保する100億円のうち半分を、思い切った改革プランを策定した大学を後押しする新設の補助金に振り向ける計画という。大学関係者の納得を得ながら改革を加速するには、きめ細かく分かりやすい制度運用と同時に、こうした継続的な取り組みが必要だ。


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