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2016年05月21日

大学オンブズマン北教大、旭川教員の不当解雇について申入書を提出

大学オンブズマン北教大
 ∟●旭川教員の不当解雇について,申し入れを行いました

申し入れ書

2016年3月22日

大学オンブズマン・北教大
共同代表 姉 崎 洋 一
共同代表 佐 藤 博 文

1.貴大学は、2006(平成18)年から2008(平成20)年にかけ、旭川キャンパスの教員3名が学生にアカデミック・ハラスメント(以下「アカハラ」と言います)を行ない、大学側の調査に応じなかったとして、諭旨解雇としました。これに対し、3教員が解雇の無効を求めて裁判を起こし、2010(平成22)年11月の札幌地裁判決、2012(平成24)年の札幌高裁判決はいずれも解雇を無効としました。貴大学は最高裁に上告しましたが、2014(平成26)年2月20日、上告棄却の判決が下され、3教員の解雇無効が確定しました。
 ところが、2教員(1名は辞職)について、雇用上の地位の回復こそ認めたものの、今日に至るまで教育(授業の担当など)と管理運営(会議の出席など)への参加を認めておらず、完全に復職するには至っていません。これは異常というほかありません。
 
2.貴大学は、判決確定を受けて3教員との間で解決するにあたり、反省文の提出を求めました。それに対して提出された反省文が、3人とも自書したものでなく同一文章であるということを理由に、「反省しているとは思えない」として、貴大学が納得できるものが提出されるまで全面的な復職は認めないとされています。
 しかし、解雇無効の確定は、解雇が初めから無かったことを意味しますから、必然的に解雇時の状態に無条件で復帰させねばなりません。仮に、解雇後に既成事実が積み重ねられ、即時の復職に支障か生じているのであれば、それは貴大学の責任で除去・改善しなければならず、いやしくも被解雇者にその責任や負担を転嫁することは許されません。
 しかるに、貴大学の対応は、下記3、4に述べるように違法・不当であり、かえって問題解決を難しくしていると言わざるをえません。

3.近代市民社会の個人意思尊重の基本理念より、本人の自由な意思に基づくことなく、強制的に謝罪文の提出を求めることはできません。憲法第19条が保障する思想・良心の自由に反するからです。ましてや、貴大学が納得する謝罪文を提出するまで全面的な復職は認めないという、不利益処遇と引き換えにするやり方は許されるものでありません。
 また、就業規則に懲戒処分手続として「始末書」の提出を求めることを定めることがありますが、貴大学にかような規定はありません。従って、反省文提出は、雇用契約上根拠のないことを要求していることになります。
裁判例をみますと、「労働者の義務は労働提供業務に尽き、労働者は何ら使用者から身分的支配を受けるものでなく、個人の意思の自由は最大限に尊重されるべきであることを勘案すると、始末書の提出命令を拒否したことを理由に、これを業務上の指示命令違反として更に新たな懲戒処分をなすことは許されない」(豊橋木工事件:名古屋地判 昭和48年3月14日)とされています。「始末書」を「反省文」に、「懲戒処分」を「不利益」と置き換えれば、今回の事案にそのまま当てはまります。

4.解雇無効の判決が確定したならば、判決に従って直ちに復職させなければなりませんが、もし判決に従わず、「賃金は支払うが仕事はさせない」とした場合はどうなるでしょうか。
 言うまでもなく、判決の履行は、法人の業務執行行為にほかなりません。従って、法人役員がその業務執行責任を果たさないということは、法人に対する善管注意義務・忠実義務に違反していることになります。働かせるべき人を働かせないで賃金だけ支払うことは、その賃金相当額について法人に損害を与えていることになります。
これには有名な裁判例があります。渡島信用金庫会員代表訴訟判決(札幌高裁平成16年9月29日判決・平成14年2月12日上告棄却)は、違法解雇した職員に対して、仮処分・本訴訟等の敗訴により賃金は支払っていたものの職場復帰を認めなかった事案において、法人代表者2名に対して、被解雇者の賃金相当分(約3100万円)の損害を法人に与えたとして、賠償を命じたのです。「判決に従う」という法治国家として当然のことを、雇用関係におけるコンプライアンス遵守の問題として、役員の責任を認めたのです。
 貴大学における法人役員は、学長、理事、監事であり、同人らのコンプライアンス違反は、貴大学に対する善管注意義務・忠実義務違反として個人責任まで問われる重大な問題であります。

5.以上のとおり、私たちは、貴大学が、上記の指摘を真摯に検討され、判決の確定から2年を超えたという異状事態に対して、法に基づき速やかに解決することを強く申し入れます。
 また、本問題の解決を機に、貴大学が雇用関係全般にコンプライアンスを貫くことを強く求めるものです。

以上


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